2011年11月26日土曜日

漢字「母」の起源と由来:上古社会、母系制の中で特別の存在

母の字形は女の字とほぼ同様。
2つの点は乳房を表す。
「母」の字形は「女」に近い。甲骨文字と金文中の母の字は字形上は女に比べ2つの点が多い。これは母が乳児に母乳を与えるとき、乳房が乳の為膨れ、乳房が突出するという生身の母親の特徴である。図に示す如く、表示された乳房の2点はまさに女性の胸にうまく位置し、左右それぞれ一つある。但し楷書の母の字の2点は変化の過程で上下各一つに変わっている。だから既にその中で象形の意味を見分けられるとは言い難い。

甲骨文字の「女」

   「母」の字の本義は母親である。家母、乳母、後母、老母など、即ち自分に親密な関係の年上の女性を表示している。俗語の中の「母以子贵」ということは、母親は子供が成就することで、ある種の権勢や尊敬を得るという意味である。この中で母の字は母親を指している。上古の時代母系大家族で、「母」は生身の母親を指すばかりではなく、母親の姉妹、妹姑みな「母」と称していた。この呼び方は、今日の雲南納西族の呼び方も証になる。


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2011年11月25日金曜日

漢字「京」の起源と由来:漢民族の生殖崇拝にあり。原義は射精を表現したもの

漢字「京」の起源と由来は、華夏民族は生殖崇拝文化にあり。

 京は「高」や「膏」と同じ源を持つ。古代社会から華夏民族は生殖崇拝文化が支配的であった。性の感受の描写の文化である。

「京」の原義は男の射精
後に高崇、大きな建物、都を表す
甲骨文字の「京」という字は、上部は男性の生殖器の符号(上向きの矢印状)であり、下部は「内」となり、男性の両脚と中間の縦の線は男性の精液が下腹の腹腔から噴出する様を表示している。この男性の射精の描写は非常に感性的で、直観的である。甲骨文字の「京」という字では可視的に簡略化されている。

 しかし早くからこの意味では使われなくなったという。後世ではもっぱら「高崇」という意味に用いられ、さらにそこから引き出された意味として、「大きな建物」を表すものとして用いられて、今では国の都の意味に用いられている。

 さて、以上は唐漢氏の解釈であるが、我が国の白川静香博士はこの字は、戦いに敗れた敵兵の屍や首を埋めて、自分の街を外敵や病魔から守る一種のまじないの意味を込めた「凱旋門」だという。後に高崇、大きな建物、都を表す。

 わが唐漢氏が習俗や社会発展に漢字の発展を見るのに対し、白川氏は漢字そのものが王侯のほぼ独占的なものであったという見地から漢字は占いや呪詛などの支配の道具として見ている。この両者の違いが漢字の成立の解釈の大きな違いを生む結果となっている。

 勿論私には両者の正否を判断する立場にもないし、その力量もない。

 ここでは両者の解釈を並列するだけであるが、一概にどちらが正しいといえないような気がする。


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