2011年11月4日金曜日

漢字「魚」の起源と由来:象形文字、魚そのもの

秋は何と言っても秋刀魚の季節。秋刀魚の塩焼きは素朴ながらも絶品だ。日本の落語でも、「サンマは目黒」という御題でおなじみである。

 さてサンマは中国語で秋刀鱼と書く。因みに我々におなじみの魚は下のようになる。日本語のように一字でその名前を表すものは少ないようで、大体が鯛、竹荚、金枪のような修飾語が付き、全体で魚の名前を表すようである。その点獣の名前には牛、猪など一字でその動物を表すものが多いようで、その点からいっても中国では魚文化は日本ほど発達していない証拠かも知れない。

秋刀魚    秋刀鱼
鯛        鱼
鯵       竹荚鱼
鮪       金枪鱼

さて魚の漢字はどのようにしてできたのか。その由来を探ってみよう。


「魚」の変遷
甲骨文字の魚はちょうど絵の中の大きな魚である。頭と尾と背部にひれを持っている。小篆の尾鰭のわきの二つの点は水滴を表す。よく魚の形を表している。楷書は完全に4つの点になっている。簡体字ではこの4点は横棒一になっている。 

金文中の魚を表す味のある文字    "魚”の字は部首で漢字の中では「魚」と組み合わせて、全て魚と関係を持っている物を表す。



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2011年11月2日水曜日

秋の実りの漢字「栗」の起源と由来:栗のイガまで表現された象形文字

甲骨文字の形は一株の木の上に育った棘のある果実そのものである

 秋は実りの季節。梨、栗、柿等が木々にたわわに実っている景色を見るのは、見ているだけでも楽しくなる。子供のころは道端の木に実った柿を失敬して、よく怒られたが、そんな思い出は日本人の男ならたいていは持っているのではないかと思われるが、今はそんなことは親が許してくれないのか、行儀がいいのかトンと聞かない。
 

「栗」は象形文字。古代人の
表現力の豊かさには恐れ入る
 さて、今日は栗にまつわる話をしよう。「栗の木」は俗称、板栗の木。甲骨文字の形は一株の木の上に育った棘のある果実そのものである。栗の木の果実は球状を呈し、上面は長いとげが密生している。まさに甲骨文字の形は栗の絵を見ているようだ。

 果実が成熟すると、棘のある外側の殻の中はまさに栗色の光沢のある果実でとなって、、これが我々が平常食べる板栗である。周の時代では、いわゆる栗の木は神木とされ、食用ばかりでなく澱粉を豊かに含む板栗として親しまれている。

 まさに字の中でも、3個の果実が簡略化され、一つになっている。楷書では今は栗と書く。

 中国の北方の城郭都市の大通りや裏道では、鉄鍋をかけた栗売りの声と栗の香ばしい香りが一体となって舞い人々の食欲をそそる。正に秋の風物詩である。

 栗の外殻ととがった棘があることから、常に人に恐れさせ戦慄のように言葉では恐れを表わすように使われている。


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