ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年5月30日日曜日

漢字・降の成り立ちから分かること:古人は神など人間を超越した事象を表現した・・降臨。


漢字・降の成り立ちから何が分かる:単に上下を表しているのではなく、本来は天や神など人間を超越した事象を表現しようとしたのではと思われる
 現代では「降」は昇降のように昇と共に使われることが多いように見え受けられる。しかし漢字の成り立ちの観点でいえば降に対応する漢字でいえば、登において他はないと思っている。それは甲骨文字などの古文字にはっきりと示されている。

 しかし、文化は絶えず変化し発展する。いつまでも甲骨文字や古文字ではあるまい。しかし人間の認識を変える「何時か」があったはずだ。漢字考古学の使命は、その謎を解明することだと思う。


漢字「降」の楷書で、常用漢字です。右には「登」の金文を参考のために表示しておきました。現代の漢字では、一見何の関係もないような「降」と「登」。古文字の成り立ちを見ると「降」と「登」の文字の構造は非常によく似ているのが分かります。

 降の甲骨文字では、左側に神梯が書かれており、その神梯を降りる(逆向きの足跡が二つ書かれています。これは神梯を降りることを表したものにまぎれもないことと思います。
降・楷書


  
「降」・甲骨文字
左の神梯に二つの逆向きに足跡が付けられている
「降」・金文
甲骨文を引き継いで、少し洗練されたものとなっている。
「降」・小篆
甲骨も金文のいずれの要素も文字らしく形が整えられている


    


「降」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   お(りる)、お(ろす)、ふ(る)

意味
  • おりる、高いところから低いところへ移る ・・自動詞
  • おろす、高いところから低いところへ移す・・・他動詞
  • 主に自然現象で、ふる、上から落ちてくる・・雨や雪、もの がふる。
  • あと ・・・以降

漢字「降」を持つ熟語    降格、降雨、降下、降雪、降服


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「降」、これは会意文字です。甲骨文の「降」という言葉の左辺は、小さなはしごの素描です。古代のはしごは一本の木材に切り込みを入れ、人々はそれを使って上下に登りました。右側には足が逆さまに書かれています。それははしごに沿って降りることを意味します。金文の「降」という言葉は甲骨を受け継いでいます。社会の発展により、はしごの形が良くなり、シンプルなはしごの形が「阜」に進化し、言葉の意味が一歩に広がりました。 小篆から隷書への変化の後、楷書は「降」と書かれています。 「降」という文字は、下降と落下、つまり「上昇」とは逆に、人や物が高い位置から低い位置に移動することを意味します。

 


漢字「降」の字統の解釈
 会意文字:阜とコウに従う。阜は神の上り下りする神梯の形。コウは歩の倒文で、こうは下るときの足跡。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年5月29日土曜日

漢字 登の成り立ちから何を読み取るか。神に敬虔な祈りをささげる古代人の生活が見えてくる


漢字の成り立ちから何を読み取るか。「登」の反対語は「降」で、両者とも神聖な祭祀に用いられた特別な言葉ではなかったろうか
「のぼる」ことを表す漢字は、「登」、「上」、「昇」などありますが、どの漢字も上に上がるという意味を持ってるのは確かですが、この使い分けはどうすればいいのでしょう。答えは古代文字に遡ってみると意外に確かなことが分かるかも知れません。

漢字「登」の楷書で、常用漢字です。原義は、両足を使って、高いところに上がることです。

 金文にはいくつかの書き方がありますが、右に示したものは、「登」の一つの概念を極めて明瞭に表したものだと考えます。この款には、神が上下する梯子・神梯が左に書いてあり、右には高脚の器を両手に捧げた姿が表示されています。祭祀か何かで、お供えを恭しく掲げ進んでいる様子が書かれていると思われます。
登・楷書


  
「登」・甲骨文字
両手でお供えの入った器を掲げながら、静々と進む姿のデッサンである。
「登」・金文
単なる見たままのデッサンから文字として、より洗練されたデザインになっている
「登」・小篆
文字として完成度が高まり、誰もが同じ物象として受け止め、書く際も間違いなく同じに表現できるものになっている


    


「登」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   トウ、ト
  • 訓読み   のぼ(る)

意味
  • あがる、上にあがる ・・(例)登山
  • 部署につく、採用される・・・・登用
  • エントリーする ・・登録・登記 

同じ部首を持つ漢字     登、澄、橙 、 燈、鄧(中国の政治家の名前)
漢字「登」を持つ熟語    登山、登校、登場、登壇、登頂




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「登deng」、これは非常に興味深い会意文字です。 甲骨文字の「登」は、上が両足の形で前進を意味し、下は両手に高脚皿を持ち、汁物などを入れた古代の器の外形を絵で描いたものです。 青銅碑文は甲骨文を継承し、進化の過程で小篆は下の手の形を省略したため、通常の字は「登」と書かれています。

 スープの入った食品容器を両手で持ち、注意しながら足を高く上げて一歩一歩前に進みます。 そのため、甲骨文字では「登」が生贄を捧げる際に尊厳を表すためによく使われます。





漢字「登」の字統の解釈
 癶(はつ)と豆とに従う。癶は両脚のそろうて前に向かう形で、「発」の初文。豆は踏み台の形で、その踏み台に足をそろえて登ることをいう。説文には「車に上る也」とあるが、白川氏は車ではなく、豆の踏み台だと主張する。但し、氏は「豆」の説明で、足の高い食器の形としている。甲骨文字では「豆」の上部に「足」があることから、踏み台としtのかも知れない。


まとめ
 会意文字である。甲骨文字にせよ、金文にせよ、小篆にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした姿が描写されている。年代が進むにつれ、文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンに進化しており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。