漢字「午」の成り立ち|干支の午は馬じゃなく「へその緒」だった?
==== サブタイトル====
なぜ古代人はへその緒を文字にするほど重要視したのか?その答えは『死亡率』にありました。古代人が子供の無事をひたすら思う、切実な願いが見えてくる。導入
2026年は「丙午(ひのえ・うま)」です。これは十干の「丙(火の陽)」と十二支の「午(うま)」が組み合わさったもので、躍動感や行動力、前向きなエネルギーに満ちた一年になるとされ、新しい挑戦を始めるのに良い年とされています。
この十二支は人間の出生の過程を表したものであるという説も古くからある。従ってこの場合漢字は「午」であって、「馬」ではない。
ちなみに漢字源によれば、「午」と「馬」にはなんの関係もないが、旧く人々に干支を知らしめるため、動物を割りあてたのが、その起源とされる。
- 漢字「午」の成り立ち
- 日本の平均年齢
- 古代は異常に低かったこと
- 江戸時代までは人生40年が普通
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まえがき
漢字「午」の成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
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| 漢字・陽の4款 |
「午」の構造的な形はへその緒である。その物象は嬰児に起こる一定の時間の課程を経て、脱落してきたへその緒である。嬰児の身上から脱落したへその緒は大体7日から15日であるようだ。) このとき嬰児が最初の夭折 (若くして亡くなること)を無事過ごすと、慶事に値することになる。
つまり、古代においては、この時期こそが人間が生れ落ちて、確かな生命の営みを辿るまで、人間に課せられた最初の試練だったといえよう。
漢字「午」の漢字源の解釈
時刻では 現在の正午およびその前後の二時間、方角では南、動物では馬に当てる。馬に当てたのは農民がおぼえやすいように十二支に動物を配した秦漢の農暦の影響で、本来は、馬とは何の関係もない。
古代人の年代別の死亡率
古代の年代別死亡率は、現代とは大きく異なり、乳幼児期の死亡率が非常に高く、成人まで生き延びた場合でも、その後の平均余命は現代よりかなり短かったことが特徴です。
主な特徴は以下の通りです。
1. 非常に高い乳幼児死亡率
古代において、生まれた子どもの半数近く、あるいはそれ以上が成人になる前に亡くなっていました。例えば、18世紀のウィーンでは5歳までに約半数が死亡しており、古代日本でも同様の傾向が見られます。
これは、栄養不足、非衛生的な環境、医療の欠如、疫病などが主な原因でした。

左の表にみる通り、古代における乳幼児の成長率は極めて低く、縄文時代には7割以上が若年のうちに死亡していた。
特にへその緒のとれる夭折期までの死亡は多くこの時期を過ぎて生き延びることは、まさに祝いものであった。このような事情があり、多くの地域で幼児を非常に大切に扱っていた。
日本でも「へその緒」を大事に保存する風習が未だにみられるのも、このような事情があってのことと思われる。
2. 成人後の余命
乳幼児期という最も危険な時期を生き延びた場合、ある程度の年齢まで生きることは可能でした。しかし、それでも現代のように高齢になるまで生きる人は多くありませんでした。
明治以降の急激な平均寿命の推移
明治時代(1868〜1912年頃): 40歳前後。
昭和前半: 50歳台に。
1950年頃: 男女とも50歳超え。
1950年代: 60歳台(男性63.60歳、女性67.75歳など)。
1980年代: 70歳台に到達(男性73.35歳、女性78.76年など)。
2022年: 男性81.05歳、女性87.09歳。
へその緒の文化
へその緒の文化
へその緒に関する文化は、国や地域によって大きく異なります。特に日本では、母子の絆の象徴として大切に保管される独特の文化が根付いています。
日本の文化
日本では、江戸時代初期からへその緒を保存する風習が広まったとされています。
- 保管の理由: 「記念に残しておきたい」という思いや、「母と子がずっと一緒につながっていられる証」として大切にされます。神秘的な力が信じられ、お守り代わりに保管されることもありました。
- 保管方法: 乾燥させた後、湿気を避けるために「へその緒入れ」と呼ばれる専用の桐箱に保管するのが一般的です。多くの産院では、おとめマークなどをあしらった臍箱を用意し、退院時に渡してくれます。
- 処分のタイミング: 保管期間や処分の明確な決まりはありませんが、母親や本人が亡くなった際に、棺に入れて火葬するという言い伝えがあります。これは、冥土で閻魔様に子どもを産んだ証拠を示すため、あるいは来世でも親子の縁が続くようにという願いが込められています。
世界の文化
へその緒を大切に保管する風習は、実は日本と一部のアジア地域だけに見られるもので、他の多くの地域では出産後に処分されるのが一般的です。
へその緒を切る人: 海外では、夫や母親自身がへその緒を切る国が多いですが、日本では安全上の理由から、原則として医師や助産師などの医療者が行います。
その他の慣習:
韓国の一部地域では、へその緒を新生児の太もも付近まで伸ばして切り、乾燥させて保管する伝統的な風習がありました。
ジンバブエなど、へその緒を腰に巻き付けるといった独自の慣習を持つ国も存在します。
現代では、へその緒や胎盤(胞衣)は、法律に基づき適切に処理されますが、その一部を希望に応じて受け取り、自宅で保管するかは各家庭の判断に委ねられています。
へその緒の文化(世界)
一般的な処分: 日本や一部のアジア地域を除き、多くの国ではへその緒は医療廃棄物として処分されることが一般的です。
特定の慣習: ジンバブエなど、へその緒を腰に巻き付けるといった独自の慣習を持つ地域も存在します。
その他の興味深い出産・産後文化
産後の過ごし方:
中国では、産後1ヶ月間は「坐月子(ズオユエズ)」と呼ばれる期間があり、外出やシャワーを浴びることが禁止され、授乳以外はほとんど起き上がらずに過ごすという文化があります。
アメリカの産後の入院期間は、日本が自然分娩で5日から1週間程度なのに対し、通常48時間以内と非常に短いです。
出産祝い:
中華系のお祝いとしては、赤ちゃんの生後1か月に親戚や友人を招いて祝う「満月(マンユエ)」が一般的で、この際に「満月弁当」が配られます。
欧米では、日本のおむつケーキのような贈り物が人気です。
出産の場所:
ボリビアなどでは、妊婦に寄り添う「伝統的なお産」が求められる傾向があります。
フランスや北米、ヨーロッパ諸国では、無痛分娩の利用率が非常に高い(フランスで80%以上)という特徴もあります。
国や地域によって、新しい命の迎え方や産後の過ごし方に対する考え方は大きく異なることがわかります。
まとめ
- 旧石器時代前期(260万〜20万年前): 12万5千人程度
- 旧石器時代中期(20万〜4万年前): 100〜120万人程度
- 旧石器時代後期(4万〜1万3千年前): 220〜300万人程度(人類の生きた最古の時代)
- 縄文時代(4万〜1万3千年前):日本列島では数千人程度しかいなかったのではと推定されています
これらの時代は生まれても、生き残る方が稀という時代ではなかったといわれています。ネアンデルタール人が絶滅したのも、理由は色々考えられるが、彼らは小さな集団で生活していたために、食料を十分に確保できなかったことも理由の一つと考えられている。
人類も極めて初期は子供を産んでも産み落とすようなことであっただろうが、ある程度衣食足りるようになってからは、子供もきちんと育てることが自分たちが生き延びるために必要と認識したのであろう。
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