【漢字考古学】感情は協働から?人間の進化と言葉の起源に隠された物語
ないものからあったであろうものを探り出すプロジェクト・これぞ漢字考古学の醍醐味!
感情が生まれる時期には漢字は生まれてなかった。生まれてなかった漢字から生まれてない時代がどうであったかを探る試み!単なる絵空事なのかはてまたとんでもない宝物か?私にもわかりません
導入
このページから分かること
- 人類が感情を獲得していった過程がわかる。
- 感情を伝達する手段として言葉•漢字を用いた。
- 感情を発信する手段を獲得したことで、人類は、脳のさらなる進化を得ることができた。
目次
前書き
人類の感情の起源を深く探ると、元来、孤独を好む類人猿であったヒトが、数百万年前に絶滅の危機に瀕し、互いに助け合う必要に直面した際に、感情という能力を獲得したという説があります 。
そして人間が感情を獲得するまでの間、長きに亘って、飢え(飢餓)、渇き、性欲といった生理的動因といった情動のみで生きていたのではないかと考えています。
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マクリーンの三位一体論の脳の模式図 |
そして、ひとたび人間が感情を獲得すると、爬虫類脳、哺乳類原脳、新哺乳類脳(大脳新皮質)と猛烈な勢いで脳を発展させたのではないかと想像します。最もこれは素人の空論に過ぎませんから、後は専門家の方にお任せします。
ということで、人間が長い間、感情というものを持たなかった。誤解を恐れずに言うと爬虫類脳には感情がなかったという仮説が成立します。
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人類の誕生の歴史
人類は約700万〜600万年前にアフリカに出現し、200万年なると急速に大脳皮質を発展させ、人類としての特質を高め発展するようになります。
二足歩行の始まりと年代
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5億年前(古生代・カンブリア紀)
この頃はまだ魚類が繁栄し、両生類の祖先が陸上に出始めた時期です。脊椎動物は四足歩行のスタイルで進化を進めており、二足歩行の痕跡はありません。 → この時点で「人間」どころか哺乳類もまだ存在しません。 - 約6500万年前(中生代末〜新生代初期)
恐竜絶滅後、哺乳類が多様化しますが、ヒト型生物はまだ登場していません。 - 約700万〜600万年前
アフリカで初期人類の祖先(サヘラントロプス・チャデンシスなど)が登場。頭蓋骨の付き方や骨盤の形から、ある程度の二足歩行をしていた可能性が示唆されています。 - 約400万年前 アウストラロピテクス(猿人)が確実に二足歩行を行っていた証拠(骨盤・大腿骨・足跡化石)が発見されています。 → 「本格的な二足歩行の始まり」とされる。
- 約200万年前〜 ホモ属(ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトス)が出現。
二足歩行は完全に定着し、道具使用や狩猟に結びつく。 - 約30万年前
現生人類(ホモ・サピエンス)が登場。
二足歩行は進化上の前提として完全に確立しています。
これを可能ならしめたのは人間が樹上生活から地上に降りて、二足歩行を始めたとこでしょう。二足歩行により、人間は前肢が完全に開放され、重たい脳を支えることが出来るようになったと同時に、手の細かな動きは脳をさらに発達させました。
脳の進化の過程
脳の進化の過程 爬虫類脳(約5億年前)
脳の進化的には約5億年前に「原始的な脳(爬虫類脳)」とされる魚類・両生類から分化した爬虫類の神経系すなわち視床下部・脳幹系が先行しますが、呼吸・循環・逃走反応など「生存本能」に特化。ここにはまだ「喜怒哀楽」といった情動は乏しいとされます。脳の進化の過程 古哺乳類脳(約2億年前)
次いで約2億年前に哺乳類が登場。扁桃体や海馬を中心とする辺縁系が発達し、「大脳辺縁系(古哺乳類脳)」が拡大します。恐怖・怒り・愛着・母性行動といった情動が出現します。ここで「感情の原型」が生まれたと考えられています。例:母子の愛着行動や群れの仲間意識。脳の進化の過程 新哺乳類脳(約200万〜30万年前に人類(ホモ属)が進化する段階で特に前頭前皮質が拡張)
この段階には人間の脳の活動は一挙に花開き、感情、完成、理性などあらゆる分野で大きな発展がみられます。最後に「新皮質(新哺乳類脳)」が進化的に重畳するとする古典的見解(マクリーンの三位一体脳モデル)も影響力がある。
現代の見解では、扁桃体や基底核を含む「中核的情動回路」は全脊椎動物に共通し、ヒトでは前頭前野・頭頂連合野による複雑な認知的制御が加わると考えられている。
人間の生存活動と情動、感情の獲得
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人類の祖先(6,7百万年前?) |
それでも人類の祖先は、狩りをしたり、森林火災から逃げ出したり、採取生活を繰り返す中で、情動の感覚は発展させていきます。
感情・情動とは何か
飢え(飢餓)、渇き、性欲といった生理的動因は、精神医学や哲学では一般に「欲求」「動機付け(drive)」として扱われ、感情とは一線を画する「情動」として捉えられています。では情動とは一体何かについて一言触れておきたいと考えます。
感情というのは、定義的には、情動に主体の認知・意味づけ(自分がどう感じているかの自覚やラベリング)が加わったもの。言語化できる主観的経験を含むことが多い。 感覚を通してもたらされる快・不快の主観的経験である、その人だけが経験できる「気持ちいい」とか「気持ち悪い」という経験である。感情は言語で表現してもらえばわかるが、外部からはそれを観察することはできない。
情動というのは、定義的には、「生物学的・自動的な反応群(身体反応・表情・行動傾向)を指す」ことが多い。速く短期的で、無意識的な成分が強い。
怒り、恐れ、喜び、悲しみなどの強い感情で、行動や表情の変化,自律神经反応,内分倍び応などの身体反応も伴う。例えば怒りで顔が紅潮し目を見開くとか、恐怖で身体が震え顔が真っ青になるということが起こる、これらの身体反応は外部から客観的に観察できます。
つまり、情動の感覚とは、感情のの認識過程に現れるいわば人間の生理現象ともいえる生理現象で、人類が他と協力して生き延びるために獲得した強い防御反応といえると思います。
感情に先行する情動には如何なるものがあるか
冒頭に書きましたように「感情が生まれる時期には漢字は生まれてなかった。生まれてなかった漢字から生まれる以前の事象を探るのは一種の自己矛盾かも知れません。しかしこれが漢字考古学の肝になります。人々の生活や歴史から漢字や意識などの上部構造への影響・反映を探ることを一貫して追求することこそがこのBlogの目標です。したがって、後世に感情に先行した情動とみなされる漢字にどのようなものがあるか触れておきたいと思います。感情のカテゴリーには入らない動因
飢え(飢餓)、渇き、性欲といった生理的動因は、精神医学や哲学では一般に「欲求」「動機付け(drive)」として扱われ、感情とは区別される。動因は大きく 生理的欲求(基本的ドライブ) と 社会的欲求(高次ドライブ) に分けられます。
- 生理的欲求(一次的動因)
食欲
飲水欲(渇き)
睡眠欲
性欲
排泄欲
呼吸欲(酸素欠乏への反応) - 社会的・高次的欲求(二次的動因)
安全欲求(危険回避・安定への志向)
所属欲求(群れや仲間との一体感)
承認欲求(評価されたい、認められたい)
征服欲・克服欲・達成欲(自己拡張・競争)
知識欲(好奇心)
美的欲求(秩序・調和を求める) - これらは 感情(喜怒哀楽)ではなく、行動を長期的に方向づける力 です。
- 人間は感情という脳の働きに移行する前に、あるいはほとんど同時期に情動として身体に変化(飢え、渇き、瞳孔が開く、強張り心拍数の急上昇、呼吸困難など)が現れたのでしょう。
- 最初のうちは情動だけが外的刺激に反応する人間の行動の表れだったかも知れません。爬虫類や人類も含めその他のほとんどの動物は、この情動の織の中に閉じ込められて生き続けたのだろうと考えます。
しかし人間はその時すでに哺乳類脳を持ち、徐々に(少なくとも百万年ベースの年月を経て)感情を獲得していったのだろうと思います。 - かくして人類は感情を獲得し、さらにはその感情を外部と交換するツールとして言語を生み出したのだろうと考えます。
もちろん最初は音声だけのやり取りだったと思いますが、百聞は一見に如かずの諺にもあるように、絵や記号を使う方が音だけに頼るよりずっと正確に伝えることが出来るということに気付くまでにそうは時間はかからなかったと思います。
ここで初めてお互いの意思疎通を図るための手段が必要になってきます。わたしはこの手段は、音と絵や字のような記号であったろうと考えます。
文字の栄枯盛衰
文化はそれを担う民族なりが力を失うと消えていくものです。文化の象徴でもある文字についていうとエジプトのヒエログラフ、メソポタニア文明の楔形文字、インダス文明のインダス文字などがその紛れもない証左でしょう。一つの仮説ですが、チグリスユーフラテス流域やエジプトのナイル川流域は非常に開かれた土地であった。それだけ人々の交流が盛んで、民族も入り乱れていた。逆にインダス河の流域はそれほど流動的な地域ではなかったものの、気候変動か地殻変動などの要因により、それを担ったドラヴィダ人の祖先が移動離散したことにより消滅したといわれている。一方で黄河流域で漢字が文化的な基盤となったのは、他と比較的隔絶?された場所で、人間の交流も他の地域と比べると格段に少なかったろうし、その分系統的な情報を長く共有し醸成することが出来たという地政学的な要因が大きかったと考えます。
漢字はそれを担った中華民族が黄土高原に定着し、後にユーラシア大陸全体を制覇するほどの勢いを見せたことで、今日大きな力を持ち一つの文化圏を作り上げたといえます。
漢字の誕生歴史
感情を伝える手段としての漢字 音は聞いた通りをまねることで、対処とするものがなんであるかを伝えることが出来たと思います。それ以外の手段は動作な絵のような記号であったろうと思います。要は目に見える形を使うことだったと思います。ここに初めて文字が登場することになります。そしてもう一つなぜ漢字でなければならなかったのか。という疑問が残ります。「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、何回聞いても理解できないが、ちょっと見ただけでたちどころに理解できてしまう。これが象形文字としてのの漢字の最大のメリットでしょう。ああ漢字されど漢字
漢字は基本的に象形文字です。太古の人々は物の形をそのまま記号にして通信手段としていたでしょう。たとえに使われるのは「山」「川」「犬」といった身近な動物や事物で会話を行っていたでしょう。しかし人々の経験や認識が豊富になるにつれ、漢字も複数組み合わせたり、音の要素を組み込んだりして、次第に漢字も高度になり複雑になったと思われます。しかし、ここで最大の問題が立ちはだかったと思います。それは「形のないものをどうやって形で現すか?」ということです。
人類は発想の転換を繰り返し、形のない音は音を出すもので表現すればいい、色はその色を持っている物の形であら合わせばいいということです。ここで初めて漢字は、色や音を表すのに使えるようになったとも思います。しかし、それでも匂いだけは随分手こずったのではないでしょうか。
最後に気持ちはどうだったでしょう。感情を伝えたり読み取ったりするにも、漢字の前史の長い時間がありました。
感情に先立る「動因」といわれる「欲求」そして、「情動」を長い間持て余した末ようやく人間は、「感情」を獲得し、それを表現する手段として「漢字」の「形のないものを表現する」機能を使うことに気が付いたのだろうと考えます。
| では形になっていないもの、例えば感情はどう表現していたでしょう。私はそれも目に見えるものの形で表現したのではないかと考えています。例えば「楽しい」という感情は、みんなが集まって松明を真ん中にして踊るさまを記号にしたようなものです。「喜び」は打ち鳴らす太鼓で「喜び」を表現していたのではないかと。 |
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「情」の漢字データ
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漢字「情」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
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漢字「情」の成り立ち:声符は青。《説文》に「人の陰気にして欲あるもの也」という。性を陽、情を陰とする考えは漢代性情論に一般的なものであった。後に性は「体」,情は本能的なものとしている。即ち本能的な欲望を[情]としている。
因みにここでいう「青」は古くから丹朱、丹青として鉱物質のもので変色せず腐敗を防ぐ力があると珍重された鉱物質を取り出すために深く井戸型に掘り下げていくものを丹井といった。その井戸の中にある石が丹青であることを示したことからこの字が使われた。「情」は情念といわれる如く、もっと本能的な人間の欲を表現したものである。やはり「情」は「愛」は似て非なるものなのかな?
感情から漢字が出来るまで
- 基本情動(第1次感情):ポール・エクマンは「怒り・嫌悪・恐怖・幸福(喜び)・悲しみ・驚き」の6つを全人類に共通の基本感情とした。この感情から派生するより複雑な感情を第2感情と捉える説もある。(例:失望・恥・罪悪感など)
怒り: この分類の中でも、「怒」だけは別格で、他の感情と異なり、怒りは対象とするものをっ必要とする意味で、第2次感情にカウントする考え方もあり、このブログの筆者はどちらかというとこの説に同調している。なぜ筆者がこの問題にこれほど固執するかというと、第1次か第2次かにより漢字の成り立ちに違いがあるはずだと考えるからです。
嫌悪:
恐怖:おそれと示す漢字には、喜び:喜びは形がないので、太鼓を打つことで喜びを表現した
悲しみ:別の漢字で「哀しみ」があるが、筆者はこの「悲」と「哀」は別物と考えている。「哀」は喪失感で在り、漢字も専ら死者に対する感情を表現しているのに対し「悲」は心が背反する状態を表現している。
驚き:字統では馬が驚きやすいから、上部に呪的な戒める意を持つ敬を加えて驚きとしたと唱えている。 - 本能的情動:飢え・渇き、性欲など行動を駆り立てる生物学的な推進力で、感情とは区別される。 飢え:実際の食べるもののない状態をいうし、男女間で愛情を抜きにして相手を求めるのにも用いる
- 喜び
- 怒り
- 哀しみ
- 楽しみ(喜怒哀楽)はここに入る典型。
渇き:のどが渇いて水を激しく求める状態。飢えと同じく、男女間で愛情を抜きにして相手を求める状態にあるのも言う、
性欲:感情のカテゴリーには入らない。
気分:持続的で原因がはっきりしない情動状態(例:憂鬱、浮き立つ感じ)。感情より長く続く。
社会的/複雑感情(social or moral emotions):羞恥、罪悪感、誇り、同情、恨みなど。社会的認知(相手の意図を読む等)を必要とすることが多い。
感情の漢字
感情(emotion):ある出来事や対象に対する短期的な反応。表情や生理反応を伴うことが多い
まとめ
約2億年前に地球上に哺乳類が登場しましたが、約200万〜30万年前になってようやく新哺乳類脳を持った現生人類が登場します。
しかしこのころの私たちの祖先は、本能のままに生き、感情ばかりか考えることなど全くできない二足歩行のできる全く新しい可能性を持った動物でした。
その動物が、たびたび襲ってくる地殻変動や気候の激動の中でなんとか生き延びる中で、感情を獲得し、仲間と協働する中でその感情を発信し交換する手段として、言葉を身に着けるようになりました。
そして人間の数が増えるうちに、社会が構成され、言葉も単に話し言葉だけではなく文字を使えるようになりました。このことは人間自身にも大きな変革をもたらし、とてつもない能力を持った人類として地球を制覇することになりました。
このように人間は、とてつもない変化を遂げたわけですが、太陽系が誕生したのは今から45億年前、この太陽系が属する銀河宇宙は直径10万光年という大きさからみるとゴミの一つにも数えられない存在です。
このことから考えると人類が勝ち得た現在の立ち位置が将来ずっと続くことは全く考えられません。
私たちは人間に対し、自然に対し、宇宙に対しもっと謙虚でなければならないと思います。皆さんはこれから先、どう生きますか?
そんなことを言われてもと思う方が殆どでしょう。
そうです。あまり「アクセクしないこと、自分ばっかりと考えないこと!」
「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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