漢字・昏の本義は夕暮れ時である
「昏」の本来の意味は夕暮れである。しかし、時代が下るにつれ、氏族の婚礼等が黄昏時に催されることが多かったため、氏族の饗飲を表現するものとして、やがて氏族の間の結婚を表現する言葉にも使われるようになったものであろう。
導入
前書き
目次
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漢字「昏」の今
漢字「昏」の解体新書
漢字「昏」の楷書で、常用漢字です。 | |
昏・楷書 |
昏・甲骨文字 |
昏・金文 |
昏・小篆 |
「昏」の漢字データ
- 音読み コン
- 訓読み くらい、くらむ
意味
- くれ(暮)(太陽が沈んで辺りが暗くなる事)
- くらい(暗)、目が見えないことから道理がわからない、昏迷
- 目がくらくなってみえなくなる。昏睡
同じ部首を持つ漢字 昏、婚
漢字「昏」を持つ熟語 昏、黄昏、昏睡、昏倒
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漢字「昏」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
漢字「昏」の唐漢氏の解釈
「昏」の本来の意味は夕暮れである。 『説文』は、「昏、日昏也、氐省,氐者,下也。」と説明しているが、甲骨文字の図解分析から、上部の図形の斜線は水面を示し、その下の「垂直の線」は上から下という意味で、水面から下をイメージして造られた言葉で、太陽が下に移動する概念を表している。「昏」は氏と日で構成されており、「氏」は个の繁体字で、太陽が地平線に沈むことを意味する。 この時点ではまだ光が消えておらず、空が完全に暗くなっているわけではないので、「昏」の基本的な意味は夕暮れを指している。
漢字「昏」の字統の解釈
会意 氏と日とに従う。ト辞に「旦より昏に至る まで雨ふらざるか」、「昏に至るまで雨ふらざるか」 とトする例が多い。
字は氏に従う形であるが、会意の意味がよく知られない。氏は肉を切る小刀の形。 これによって共同聖餐を行なうので、氏族の字となる。日の形はあるいは肉の形であるかも知れない。
昏は文献では昏礼の意に用いることが多いが、金文の昏・婚の字形は、爵によって酒を酌む形であるから、ト文の昏の字形とは別系のものである。
ト文と金文との間に、字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である。ただ何れも、饗飲のことに関する字形であることが注意される。
漢字「昏」の変遷の史観
文字学上の解釈
字統では「ト文と金文との間に、字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である」とている。確かに全く別の字であると解釈せざるを得ない変化である。
金文と小篆の間においても、全く関連性も伺えない変化が見て取れる。字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である。確かに全く別の字であると解釈せざるを得ない変化である。 小篆の字形は氏に従う形である。氏は肉を切る小刀の形とされるが、これによって共同聖餐を行なうので、氏族の字となる。日の形はあるいは肉の形であるかも知れない。
ここに至って氏族制度の確立の影響を疑わなければならない。氏姓制度が普遍的なものとなったのは、もう少し遡った周朝期と考えられるが、秦の始皇帝が厳格に家父長制を制定したといわれていることから、氏姓制度が確立したのは秦朝と考えるのが自然である。つまり、漢字の昏が金文期には氏族の婚礼の際の爵によって酒を酌む形を表し、時代が下るとそのまま氏族を表すものとなったのであろう。
まとめ
「昏」の本来の意味は夕暮れである。「昏」の甲骨文字の上部の図形の斜線は水面を示し、その下の「垂直の線」は上から下という意味で、太陽が下に移動する概念を表している。小篆の「昏」は氏と日で構成されており、「氏」は个の繁体字で、太陽が地平線に沈むことを意味する。「ト文と金文、小篆との間に、字形字義の断絶するものがあり、その関連をうることが困難である。ただ、いずれにせよ、饗飲のことに関する字形であることが注意され、氏族の婚礼等が夕刻時に多く催されたこととも相まって、氏族の饗飲を表現するものとして、氏族自体を表現するのに定着したものであろう。「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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