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2024年4月3日水曜日

漢字「婚」から婚の成立ちと歴史を学ぶ。 今明らかになる結婚は女の昏(たそがれ)ではない!!


漢字「婚」から婚の成立ちと歴史を学ぶ。
「婚」は奥深い!

 婚という漢字の成立ちの紹介です。婚は女偏と夕暮を意味する「昏」の旁の二つの要素から出来ています。
 この記事を読むとなぜ女偏か、なぜ夕暮れ時かが分かります。さらに4千年も前から家を基礎としてきた結婚の長い歴史もわかります。そして「婚」という漢字の成立ちに心の底から納得できるでしょう。

  この記事は2012/03/01にUPした「女の漢字:婚 の由来と成立ち」を全面的に加筆修正したものである。 

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

 漢字 婚は女偏と昏の会意文字である。昏は夕暮れ・黄昏の意味である。するとこの漢字は「結婚は女の黄昏」という俗説が成り立つ。本当はどうなのか探ってみる。
 「婚」の字は甲骨文字にはないようであり、従って当時はまだ婚姻という概念、実態はなかったのかもしれない。
結婚は、太古においても、家族という概念、実態及びそれを支える社会の諸条件が整い、家族を醸成してきたことが伺える非常に深いものであることがわかる。
 漢字 婚は、家、氏族、国家の成立ちさらに農耕民族と狩猟民族の精神文化の違いまで思い至らざるを得ないものを我々に突きつける。

目次




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漢字「婚」の今

漢字「婚」の解体新書

漢字「婚」の楷書で、常用漢字。
 
婚・楷書


 一番左の款は婚の原字といわれる「昏」の甲骨文字です。こうして並列してみると、「昏」と「婚」の間の関連性はうかがえず、白川博士も言うように別の文字ではないかとすら考えてしまう。  
昏・甲骨文字
婚・金文
婚・小篆


 

「婚」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   コン
  • 訓読み   よめいりぐ

意味
  • 女性が結婚をして、相手の氏族に入ること

同じ部首を持つ漢字     婚、昏
漢字「婚」を持つ熟語    結婚、婚姻、婚姻、婚儀


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漢字「婚」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 婚の字の成立ちは、会意文字であり形声字である。
 金文「婚」の字は仮借によりつくられたであろうが、非常に複雑で、連なっている絵巻のようで、結果的には男女の和合の場面を表すと唐漢氏は考える。
 小篆になると、金文と異なり、字の左は女という字で右は昏の字である。二つを組み合わせると、男女の嫁取りを表すという、社会的な要素が文字の中に反映されるようになっている。
 婚の字の由来は、婚の字の昏は古代にはたそがれ時に嫁婿取りが行われていたことから来たものだ。
 婚の本義は男女双方の正式に結びついた夫妻の意味である。結婚式の礼儀を表す「婚礼のようなものである。
 古代婚姻は家柄を重視したがそのことは結婚する男女の双方の家柄が釣り合っている必要があった。また同姓と結婚しない風習は「国語・晋語四」で曰く「同姓は結婚せず育てても殖やさず」この事は同姓は結婚しても、生育しても栄えないことをいう。
 今日に至っても南方の少数民族の中には未だに之を保っているのもある。 この風習は現代に至っても、中国、朝鮮、オセアニアの一部では守り継がれている。 


漢字「婚」の字統の解釈

形声 声符は昏。
 金文の字形は象形で、爵をもって酒を酌む形。
爵を挙げて行なう礼であったのであろう。また婚礼 は初昏をもってはじまるもので、その次第は婚は昏夕(ゆうべ)の義によるものでなく、昏には共餐の義があるようである。(ここに明らかに、氏姓制度の発達を見ることができる。・・著注)
 婚礼においては、それは三飯三酳の礼として行なわれるものであろう。三酳はわが国の三々九度にあたるものである。

漢字「婚」の変遷の史観

文字学上の解釈

 「婚」は甲骨文字の時代にはなかったのであろう。しかも「婚」の字の成立ちから、氏姓制度の発達を反映したものと推察される。
 つまり、太古の人々が村落で共同生活を営み、しかも生産力がある程度高まり、家族という単位が出来てきたころから、結婚の概念の形成され、婚礼の儀式も形成されてきたのであろう。

 婚の金文3款。実にグラフィックで複雑である。文字というより、これは絵そのものではないだろうか。このような複雑な模様を鋳物にふくためには、鋳物技術もかなり高度なレベルに到達していなければならない。

婚の小篆3款。金文の複雑な字形が、文字としての形態を備えてきている。したがって随分書きやすく、かつ覚えやすくなり、文字としての機能を具備している。





まとめ

 婚の本義は結婚式の礼儀を表す「婚礼」である。それは「氏」という概念の下での「家」が確立された上で、実際の婚姻では、古代から家柄が重視され、しかも結婚する男女の双方の家柄が釣り合っている必要があった。また同姓と結婚しない風習は「国語・晋語四」で曰く「同姓は結婚せず育てても殖やさず」この事は同姓は結婚しても、生育しても栄えないことをいう。要は近親婚を戒めたのではないだろうか。太古の昔から結婚には、等々数々の戒め、しきたりがあり、単なる若者二人が結びついたというのではなく、家族という概念、実態及びそれを支える社会の諸条件が整い、家族を醸成してきたことが文字を通しても、伺い知ることができる非常に深いものであることがわかる。これらのことは、東洋の民族が基本的に農耕民族であり、一方ヨーロッパの民族が狩猟を生業とする狩猟民族であったことと考え合わせると、単に文字の違いではなく、生活様式も全くことなる精神文化の違いにまで考察せざるを得ないものまで感じる。

 また、漢字が表音文字と異なる優れた一面を持っていることもわかる。
  


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2024年4月1日月曜日

漢字・昏の意味は夕暮れ時の暗いこと。由来は部族の婚礼などの饗飲が黄昏時に催されることが多かった事だ


漢字・昏の本義は夕暮れ時である

 「昏」の本来の意味は夕暮れである。しかし、時代が下るにつれ、氏族の婚礼等が黄昏時に催されることが多かったため、氏族の饗飲を表現するものとして、やがて氏族の間の結婚を表現する言葉にも使われるようになったものであろう。

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

目次



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漢字「昏」の今

漢字「昏」の解体新書

Twilight
漢字「昏」の楷書で、常用漢字です。
 
昏・楷書


  
昏・甲骨文字
昏・金文
昏・小篆


 

「昏」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   コン
  • 訓読み   くらい、くらむ

意味
  • くれ(暮)(太陽が沈んで辺りが暗くなる事)
  •   
  • くらい(暗)、目が見えないことから道理がわからない、昏迷
  •  
  • 目がくらくなってみえなくなる。昏睡

同じ部首を持つ漢字     昏、婚
漢字「昏」を持つ熟語    昏、黄昏、昏睡、昏倒


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漢字「昏」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「昏」の唐漢氏の解釈

  「昏」の本来の意味は夕暮れである。 『説文』は、「昏、日昏也、氐省,氐者,下也。」と説明しているが、甲骨文字の図解分析から、上部の図形の斜線は水面を示し、その下の「垂直の線」は上から下という意味で、水面から下をイメージして造られた言葉で、太陽が下に移動する概念を表している。「昏」は氏と日で構成されており、「氏」は个の繁体字で、太陽が地平線に沈むことを意味する。 この時点ではまだ光が消えておらず、空が完全に暗くなっているわけではないので、「昏」の基本的な意味は夕暮れを指している。

漢字「昏」の字統の解釈

 会意 氏と日とに従う。ト辞に「旦より昏に至る まで雨ふらざるか」、「昏に至るまで雨ふらざるか」 とトする例が多い。
 字は氏に従う形であるが、会意の意味がよく知られない。氏は肉を切る小刀の形。 これによって共同聖餐を行なうので、氏族の字となる。日の形はあるいは肉の形であるかも知れない。
  昏は文献では昏礼の意に用いることが多いが、金文の昏・婚の字形は、爵によって酒を酌む形であるから、ト文の昏の字形とは別系のものである。
 ト文と金文との間に、字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である。ただ何れも、饗飲のことに関する字形であることが注意される。


漢字「昏」の変遷の史観

文字学上の解釈

 字統では「ト文と金文との間に、字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である」とている。確かに全く別の字であると解釈せざるを得ない変化である。

Twilight_CastingCharacter

 金文の「昏」の字形は、爵によって酒を酌む形であり、ト文の昏の字形とは別系のものである。しかも、小篆の字形とも別系のものと考えられる。

 金文と小篆の間においても、全く関連性も伺えない変化が見て取れる。字形字義の断絶するものがあり、 その関連をうることが困難である。確かに全く別の字であると解釈せざるを得ない変化である。 小篆の字形は氏に従う形である。氏は肉を切る小刀の形とされるが、これによって共同聖餐を行なうので、氏族の字となる。日の形はあるいは肉の形であるかも知れない。
 ここに至って氏族制度の確立の影響を疑わなければならない。氏姓制度が普遍的なものとなったのは、もう少し遡った周朝期と考えられるが、秦の始皇帝が厳格に家父長制を制定したといわれていることから、氏姓制度が確立したのは秦朝と考えるのが自然である。つまり、漢字の昏が金文期には氏族の婚礼の際の爵によって酒を酌む形を表し、時代が下るとそのまま氏族を表すものとなったのであろう。

 

まとめ

 「昏」の本来の意味は夕暮れである。「昏」の甲骨文字の上部の図形の斜線は水面を示し、その下の「垂直の線」は上から下という意味で、太陽が下に移動する概念を表している。小篆の「昏」は氏と日で構成されており、「氏」は个の繁体字で、太陽が地平線に沈むことを意味する。「ト文と金文、小篆との間に、字形字義の断絶するものがあり、その関連をうることが困難である。ただ、いずれにせよ、饗飲のことに関する字形であることが注意され、氏族の婚礼等が夕刻時に多く催されたこととも相まって、氏族の饗飲を表現するものとして、氏族自体を表現するのに定着したものであろう。
  
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