2024年5月1日水曜日

漢字 進の成立ちから人間の本質が見えてくる・・進むべきか立ち止まるべきか

漢字 進の成立ちから人間の本質も自然の摂理さえも見えてくる

 漢字「進」は創成されてから四千年も経つのかもしれない。古代人が漢字「進」の中に見た光景と現代人の我々が「進」に見る光景とはどのように違っているのだろう。
 漢字「進」は辵と隹(鳥)からなる。古代人は何を思ってこの字を創ったのか。人類のロマンに迫りたい。

導入

ここで言いたいこと

  漢字「進」の成立ちから人間はどのように進んできたかに迫りたい。
 漢字の世界で、進という字は「「辵(しんにょう)」+隹という部首から構成されている。「隹」はしっぽの短い鳥を表示している。なぜ隹(鳥)でなければならなかったのか。
 鳥を筆頭としてあらゆる生物は基本的に前にしか進めない生き物である。そしてその字の通り地球上の生物はひたすら前に進んできた。
 その進歩はあまり大きく、今や生物、特に人間はその進歩ばかりか、存在さえも否定しかねない存在になっている。
では、退くのか? それはあり得ない。やはり先進だ。後ろ向きに前進するしかない。それが人間の『性』なのだ。

前書き

目次




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漢字「進」の今

漢字「進」の解体新書

ProgressChar.Panel
漢字「進」の楷書で、常用漢字。
 この世に生きる動物はほとんど全て前に進むようにできているが、後ろに退くようにできていない。少し視点を変えてみると植物でも光のあるほうに”前進”するようになっている。但し根だけは光から遠ざかるようになっている。
 漢字の世界で、進という字は「「辵(しんにょう)」+隹という部首から構成されいる。「辵」は、歩くことや進むことを表している。そして「隹」はしっぽの短い鳥を表示している。なぜ進に隹が使われたのか。それは鳥は前にしか進まないからである。鳥が後ろに進むのを見た人はコメントに残していただきたい。鳥が後ろに進むことは日常では見ることはまずない。古代人も周りの観察から鳥は前に進むものだということからこの字を創作したのではないだろうか。 
進・楷書退・楷書


  
進・甲骨文字
進・金文
進・小篆


 

「進」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シン
  • 訓読み   すす(む・める)

意味
  • 進む
  • 前へ出る
  • 出世する
  •  
  • 贈り物

同じ部首を持つ漢字     唯、観、勧、
漢字「進」を持つ熟語    進、前進、後進、進行、邁進


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漢字「進」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「进( 進 ) 」、これは会意文字。
甲骨文の「進」という字は、上に「隹」、下に足跡を意味する「止」がある。 両形の会意は二つの形は、スズメなどの小鳥が地上を進むことを表している。 鳥について少し知識がある人なら誰でも、スズメのような小さな鳥は前進することはできず、ましてや後退することもできないことを知っている。 この文字の形と意味から、古代人が地上の鳥の動きをどれほど注意深く観察していたかを知るのは難しくはない。

漢字「進」の字統の解釈

 声符は隹、隹に隼の音がある。隹を声符とするが、隹を声符としてえらぶ背景に、出行の際に おける鳥占いの俗がはたらいていると思われる。


漢字「進」の漢字源の解釈

 「辵(しんにょう)」+隹で鳥が飛ぶように前に進むことを表している。


漢字「進」の変遷の史観

文字学上の解釈

 

今まで見てきたように、漢字「進」は甲骨文字から存在し、「辵」+隹から構成されていた。つまり古代人は鳥の動きを見て前に進むことを理解した。

進と真逆の行動である「退」という漢字には甲骨文字や金文は存在していない。これは何を意味してるのだろうか。古代人(現代人でもそうだが)は後ろに退くという行動はめったに目にかからなかったからではないだろうか。人でも動物でも敵に出くわしたとき最初にとる行動は後ずさりすることであり、ある程度見極めてから体を翻して逃げ出すことが次に出る行動である。

 さらに人にしろ動物にしろ体の構造は後ろに進むようにできていない。このような理由から、後ろに退くことを表現するという概念もしばらく生まれなかったのではないだろうか。
 そして随分後になって初めて人間が軍隊や他と一緒に行動するようになって初めて、「退却」、「退く」という概念が生まれたと考える。この「退く」という行動にしろ、決して後ずさりすることではなく、後ろ向けに前進するという行動である。
 字統では神にささげた祭器を下げる意味・成立ちという。

 尚、漢字「退」するページを参照いただきたい。


まとめ

 「進」は成立ちから考えても、日常生活に密着した出来事から出てきたものであろうのに対し、「退」は後世になって、抽象的であまり生活に密着したものではない事柄から生れている。この思考方法は、漢字を見るについても大事な観点ではないだろうか。

  


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