2020年4月19日日曜日

漢字「既」:眼前のご馳走を見て、食べ飽きて見るのも嫌という表情



 漢字は作り出された過程が漢字の中に盛り込まれてそれを跡付けることは本当に面白い。例えばこの「既」という漢字である。食べ物を前にして、それにそっぽを向く人物から成り立っているが、実に面白く、ユーモアに満ち満ちている。このような面白さは、アルファベットなどの表音文字では決して見ることが出来ないものである。これこそが、漢字が数千年もの間、多数の民族の間で使われてきた理由の一つといえるのではないか。


引用:「汉字密码」(P662、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の考察
 甲骨文字の「既」の字は、右側の高脚の食器(つまり豆)、先の尖った部分はそれが食物でいっぱいであることを示し、左側は食べ物に背を向けてひざまずいて、口を開けて頭を回して、満腹であることを示している人です。 金文の「既」の部分は少し歪んでいて、右側は顔を後ろに向けたままの半立ちの人で、口を開いているので、食べた後に離れることを示しています。小篆の「既」という言葉は訛りが発生しており、左側の食べ物と右側の口を開けた人は見えませんが、テキストの形はより美しくなっています。楷書は小篆を引き継ぎ、「既」と書きます。


「食」の原字を意味する「豆」
字統の解釈
 食べ物を山盛りにした器に背を向けて口を開く形で、食すること既に足り嫌気を催しているさま。食し終える意味からすべてことの終わること。


漢字源の解釈
 会意兼形声文字:腹いっぱいになっておくびの出るさま。ご馳走を食べて腹いっぱいになること、限度まで言ってしまう意から[既にという意味を派生したとある。



結び
 「既」の左側は元々高脚の食器を表しており、これに蓋をすると、「食」という字になる。こうしてみると漢字というものは、実に人々の生活から出来たものであることがよく分かる。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2020年4月12日日曜日

コロナは漢字で「暈」と書く。コロナウイルスは現代社会には??


コロナは元々皆既日食の時に観測される美しい天体現象だ。この場合中国語では日晕という
https://ja.wikipedia.org/より
中国語でコロナをなんと言うか。辞書で調べてみた
  1. 電晕:これは電気の現象でとがった電極の先から発せられる環状スパーク
  2. 日晕:皆既日食などで太陽の周りに現れる光の環
この他意味合いは違うが、日晕というのがある。これは曇りのときなどに現れるいわゆる暈(かさ)である。

 今流行のコロナウイルスはこの天然現象のコロナとは全く異なるものであるが、コロナウイルスが、この天然現象のころのとよく似ていることからこの名前を冠せられたという。美しき天然現象のコロナにとってはいい迷惑なのかもしれない。


引用:「汉字密码」(P271、唐汉著,学林出版社)
コロナは日本語では「暈(かさ)」と表現される
唐漢氏の解釈
 「晕」の本来の意味は、「太陽の晕と月の晕」を意味します。
 これは、太陽と月の光が巻層を通過するときに氷の結晶が屈折または反射することによって形成される一種の光の画像です。空では、多くの場合、太陽と月の周りに色のついた光輪として現れ、いくつかは太陽と月を通過する白色光の帯として現れます。

字統の解釈
形声文字。声符は「軍」「軍」めぐるものの意味があるとする。「暈」は日月の周りに生ずる暈をいう。


漢字源の解釈
会意+形声文字。[軍]は車を並べて丸く取り巻いた営舎のこと。丸く取り囲むの意を含む。「晕」は「日+軍(音符)」で、日を丸く取り囲む光の輪のこと。



結び
世界中で猛威を振るうコロナウイルスは、この自然現象のコロナとは全く関係のないこと。しかし、コロナウイルスは人間が利を求めて、世界のありとあらゆるものを略奪した結果噴出してきたものと考えれば、この自然現象は人間に自然が人間を超えることが出来ないことを人間に知らしむ一つの警告かもしれない。


「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。