2022年3月9日水曜日

報の成立ちと由来:手かせと𠬝(即ち手で頭から抑えつける)から成る


漢字・報の成り立ちは「幸と𠬝」とからなり、手枷で拘束し、頭から抑えつけるの意である


漢字「報」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「幸」で、手かせを表している。右側は「𠬝」で語義は、人を上から押さえて服従させるの意。
報・楷書


  
報・甲骨文字
左側には手枷をかけられた跪いた罪人
、右側に人の頭に手があって、あたかも罪に服させるかの様子を示している。
報・金文
手の形は尸の下に動き「尸」と一体となっています。小篆はこの点からは「+𠬝」という意味に進化してきた。
報・小篆
金文を引き継ぎ、より文字化・単純化が進んでいます。


    


「報」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ホウ
  • 訓読み   むく(いる)ぐ

意味
     
  • むくいる・・受けた行為と同等の行為を与える 例) 恩に報いる(恩に答える)、一矢報いる(復讐)
  •  
  • 知らせる、知らせ
  •  
  • 合わせる、重ねる 

同じ部首を持つ漢字     服、幸、𠬝、菔、
漢字「報」を持つ熟語    報告、報道、報恩、報復、諜報




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
甲骨文字の「報」という言葉は会意文字です。左側には手枷をかけられた跪いた罪人、右側に人の頭に手があって、あたかも罪に服させるかの様子を示している。「説文」は「報」を罪人であると解釈している。「当」は判決であるとしてます。 金文中の報の字は甲骨文を引き継いで、左右の構造に進化し、左辺は「幸」に変化しています。右側はひざを曲げて跪いた人の形を現しています。人間の形は「尸」という言葉に変換され、手の形は尸の下に動き「尸」と一体となっています。小篆はこの点からは「+𠬝」という意味に進化してきた。  

 



漢字「報」の漢字源の解釈
 会意文字で「手枷の形+跪いた人+手」で罪人を手で捕まえて、座らせ手枷をはめて、罪に相当する仕返しを与える意を表わす+


漢字「報」の字統の解釈
 幸と𠬝とに従う。幸は手の枷、𠬝は人を上から押さえて服従させるの意。手枷を加えて圧服するのは、刑罰に服させることであり、報復的な処罰であるから「報いる」意となる。説文に「罪に当たる人なり。 𠬝に従う。 服は罪に服するなり」という。報とは報復刑的にその当を加えることであるが、金文には字を応報、報賞の意に用いる。


まとめ
 幸と𠬝の会意文字であるようだが、幸は手枷を表し、𠬝は人を上から押さえて服従させるの意。いずれも、人を拘束し刑罰に服させる意となり、あいまいさをなくした極めて厳密な意味を持っている。刑罰に服させるという概念は比較的古くからあったようである。




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2022年3月4日金曜日

漢字「見」成立ちと由来に見る人間のさまざまな見方と多様性


漢字「見」成立ちと由来に見る人間のさまざまな見方
「みる」という行為に関する漢字:見、望、看、視、監、省、臨、観
「みる」という行為を表す漢字は実に多い。その多さは見るという行為一つとっても、実に多くの見方があった。その事実は人間の社会は太古の昔から、すでに実に複雑な社会でなかったかと想像される。実は我々が考えていた以上の多様性を持った社会の姿が浮かび上がってくる。


漢字「見」の楷書で、常用漢字です。
 望見を望といい、跪いて見るを見という。
 あなたは見る、看る、視る、観る
 そして、監、望、省、臨、観の違いは判りますか。
即・楷書


見・甲骨文字
跪いて見ること。見るという行為は相手に向かって霊的な交渉を持つことを意味する
望・甲骨
立ち上がって遠くを見ている
看・小篆
上部に「手」+下部「目」
視・甲骨
示(祭卓)+見:神の降臨
  
監・甲骨文字
水盆+跪いた人で構成される
省・甲骨
眼の上に三画を付け加えて、目に差し込む光を左右から観察している形
臨・金文
一つの大きな眼が地上の3つの小さなものを俯瞰している様子
観・甲骨
鳥の形であることから、鳥占いの方法による儀礼に関する文字


    


「みる」の漢字
 

見るという意味を持つ漢字のあれこれ
  • 見・・・見るの本義は見届けること   
  • 望・・・人が足をそばだてて遠く望む形
  • 看・・・手を額にかざして遠くを見ることを意味します。手を目の上にかざして望見ることを言う
  • 視・・・本義は調べるように見る、細かく見るの意味である。
        見えているという状態をいうのではない
  • 監・・・水盤に映った自分の姿を細かく見ている。監は拡張され、別の人を観察する、あるいは別の物を観察することに拡張された。
  • 省・・・細かく見て、じろじろ観察する
  • 臨・・・象を取り前に進め、地上の細かい物体を細かく観察することです。、降臨の意を基本的に重ねて持つことになりました。
  • 観・・・説文に「諦視するなり」とあって、審らかに観る意とするが、農耕儀礼に関する字と思われる。
  • 「視、看、見」の三字はすべて、"瞧"の動作である。但し、「視、看」の二字は結果に及ばないで、「見」は結果を示している。即ち、看たけれど、見えなかったという言い方ができる。「見」は見えた、認識したという結果まで言及する



引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「みる」という行為の基本的な漢字は、「見」である。見は視ると異なり。見るの本義は見届けること、発見することである。

 




漢字「見」の漢字源の解釈
 会意文字である。「目+人」 目立つものを人が目ににとめること。 また目立って見えるものという意から現れるの意を持つ


漢字「見」の字統の解釈
 象形文字:目を主とした人の形。 望見を望といい、跪いて見るを見という。 謁見の見は儀礼の時の姿である。見るという行為は相手に向かって霊的な交渉を持つことを意味する。


まとめ
 「みる」という単純な行為一つとっても、実に多くの見方があった。その事実は人間の社会は太古の昔から、実は我々が考えていた以上の多様性を持った社会の姿が浮かび上がってくる。




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