2022年1月11日火曜日

漢字・兔の成り立ち:兎と免はよく似ているが由来は全く異なる。兎角、兔の甲骨文字はウサギの側面のデッサンを表す象形文字です


漢字・兎の成り立ち:象形文字であり、兎の横から見た姿そのもの、古代人の表現力には感心する
漢字・兎の成り立ち:兎と免はよく似ているが由来は全く異なる。甲骨文字はウサギの象形文字です。一方免は兜を脱ぐことを示しています。兎に角、甲骨文字の兔は大きな頭と長い耳、短い尾と上向きに湾曲した小動物です。

 「兎角」という言葉は、殷紂の時の逸話で、「大亀に毛を生じ、兎に角を生じる。これ甲兵まさに興らんとすの兆しなり」とあり、世にあるまじきことの起こるをいうことから発生した言葉です。「兎に角」という発想が面白いですね


漢字「兎」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「兎」で、ウサギを側面の素描した象形文字です。後ろにある点は、尻尾を表しています。
兎・楷書


  
兔・甲骨文字
兔・古文
甲骨文字を一貫して引き継いでいる
・小篆
甲骨文字、金文を承継するものだが、単純化と抽象化のため兎の原型は失われている。


    


「兔」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ト
  • 訓読み   うさぎ

意味
  • うさぎ

同じ部首を持つ漢字     兎、兔、冤
漢字「兔」を持つ熟語    脱兎、兎角、菟




引用:「汉字密码」(P91、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「兔死狗烹」(兔が死ねば猟犬でも煮て食えれる、猟犬の役目は終わったので、処分できるの意)の「兔」です。これは象形文字です」

 甲骨文字の兔は大きな頭と長い耳、短い尾と上向きに湾曲した小動物です。
 側面から見た図は簡単明快です。十分走り跳ぶうさぎのさまを表しています。古文から小篆までの「ウサギ」は、段階的な変換により、直感的に兔の原型を見ることはできなくなったが、変更の一連の流れは極めて明らかです。
 


漢字「兎」を含む成語、ことわざ
  • 兔死狐悲・・・同類相憐れむ
  • 兔死狗烹・・・兔が死ねば猟犬でも煮て食えれる (猟が終われば犬は役割を終え食べられる運命にある)
  • 狡兔三窟・・・すばしこい兔は多くの隠れ穴を持つ。あらかじめ逃げ道を用意しておき、巧に身の安全を図る。
     災害防止の心得みたいな言葉です
  • 待兔守株・・・「待ちぼうけ」の歌そのもの
  • 犬兔之争・・・意味のない争いの比喩
  • 兔角牛翼・・・兔には角はなく、牛には翼は生えない。条理に合わないことのたとえ
  • 东兔西乌・・・古代神話の中でいうには、月明かりの中に玉兔がおり、太陽の中に三本足の金鳥がいる。したがって鳥と兔で月日を代表させ、月が東にのぼり、日が西に沈む。時が不断に流れることを示す。
  • 兔子死了 ・・・兔が死ぬと狐や狸は悲しむ。同類や仲間の失敗や死を悲しむことの比喩
     『兔死狐悲』と同じ意味
  • 脱兔之势・・・非常に迅速に形勢が変化すること。迅速な行動の比喩
  • 全狮搏兔・・・ 小さな目標のため、大きな力で攻撃することの比喩
  • 见兔放鹰・・・ 野兎を見て即座に鷹を放つこと。行動に移るときは時期にあっているべきという比喩

  • この他、四文字熟語は多数あります。これも漢字文化の豊かさなのでしょうかね

漢字「字統 P636」の字統の解釈
 象形:兎の形 説文に「うさぎの踞して、その尾を後ろにする形に象る。」兎の字には後ろに一点あり、免にはその一点がないことについて、同字異字が論あるが免は兜を脱ぐ形で声義とも異なる。

 兎角とは殷紂の時の逸話で、「大亀に毛を生じ、兎に角を生じる。これ甲兵まさに興らんとすの兆しなり」とあり、世にあるまじきことの起こるをいう。


まとめ
 甲骨文字にせよ、金文にせよ、生き生きとした人々の浮かび上がってくるようです。実に素晴らしいデッサンで、芸術的ともいえるようなデッサンが素晴らしい。文字の形に簡略化し、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2022年1月6日木曜日

漢字「盧」:主に名前に使われ「盧溝橋」がもっとも有名


漢字・盧が世界に広く知らしめるようになったには、盧溝橋という橋の名前からで、直接的・間接的に日本が係わっている
 盧溝橋は金代の明昌3年(1192年)に完成し、その後度々修復が施されている。全長266.5m、11幅のアーチからなり、各アーチは長さ11m、扁平率0.69の楕円形。橋の欄干には、それぞれが異なる表情や姿をした計501基の獅子の彫像が置かれている。(ウィキペディア)
 
マルコポーロの「東方見聞録」
 第3話 大ハーン(フビライハンのこと)はマルコポーロを西部の地方への使者として派遣した。ハンバリク(元の時代の大都、現在の北京)をたって16 km 行くと大きな川に着く。 ブリサンギン【盧溝】(現在の永定河)といい、大河に注いでいるので、商品を携えた商人が海から上ってくる、極めて美しい石橋がかかっている。長さ270M、十頭の馬が並んで通れるくらいだから、幅は7m 以上はあるだろう。 24のアーチと橋脚があるが、美しい大理石で堅固に作られている。両側に大理石製の手すりと柱があり、その根元に大理石製のライオンがある。柱の頂上にもライオンがおかれ、いずれも立派な彫刻だ。手すりは灰色の大理石である。(「東方見聞録」、現代教養文庫)

盧溝橋事件
 そして直接的にこの盧溝橋の橋が世界に大きく知られるようになったのは、1937年7月7日に引き起こされた盧溝橋事件である。この事件を皮切りに日本は中国との全面戦争の泥沼に嵌まり込んでいくことになった。

漢字「盧」の楷書で、常用漢字です。
 「卢」は盧の簡体字です。甲骨文は上下の構造が結びついた会意文字です。下部は炉身と炉足の火の炉のデッサンです。上部は虎の字の簡略形で、炉口が大きく張った様を表示している。事実炉の字は上古時代の精錬や製陶の高炉のことです。金文と甲骨文字の炉の字は似ていて、筆流れは滑らかに、形はさらに美観を呈している。小篆の炉の字の下部には「皿」が加えられ、中間炉の形は田に変って、盛んに蒸気が上がっており、生活からくる変化が加えられている。小篆のこの変化は盧の道具の変化であり、包括的な火盆からくるものだ。
盧・楷書


  
盧・甲骨文字
上古時代の精錬や製陶の高炉のこと
盧・金文
甲骨文字を引き継いでいる。筆流れは滑らかに、形はさらに美観を呈している
盧・小篆
「皿」が加えられ、中間炉の形は田に変って、盛んに蒸気が上がっており、生活からくる変化が加えられている。


    


「盧」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ロ
  • 訓読み   クロ

意味
     
  • 飯器
  •  
  • 高炉
  •  
  •  

同じ部首を持つ漢字     爐、鱸(スズキ)、蘆(アシ)
漢字「盧」を持つ熟語    




引用:「汉字密码」(P773、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「卢」は炉の初文です。焼き窯、銅の精錬用の高炉からきている。
 後期には、一般的に、暖房、調理、製錬に使用されるさまざまな形態のストーブを含む、火器を指します。《后汉书•五行志》に『魏郡男子张博 , 送铁卢诸太官。』とあるがその中の鉄の炉とは即ち製鉄炉を指す。
 後の時代には盧に旁の火を加え爐として、簡単化の過程で" 卢 "ではなく、户 "とした。現在では姓名に用いられるが、古代は大概冶金用の窯である



漢字「盧」の漢字源の解釈
 形声:皿+音符で、丸い壷の形をした飯器のこと。キョロなどという。中が黒いことから黒いという意味もある


漢字「盧」の字統の解釈
 説文では「飯器なり」とある。柳をもってこれを作るとされているが、その器は炒爐だとされている。




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