2021年8月28日土曜日

漢字・唐の成り立ちと由来:唐傘、唐物など外国ものの代名詞に使われる「唐」の漢字の成り立ちは「脱穀」にあった


漢字・唐の成り立ちと由来:杵を振り上げ脱穀するにあるが、唐朝で国名に使われて以降中国の代名詞となった。
 唐は中国の唐王朝の時代を表す漢字で、隆盛を誇った時代は日本はもちろんのこと世界の文化の中心であった時代です。
  日本からも遣唐使が派遣され文化の吸収に努めた時代でもあります。この漢字は庚と口から成ります。庚には古代2つの意味があったようで、①は木根を振り上げ脱穀する ②大言する とあるが、この二つ目の意味ががどのようにして導き出されたのか皆目見当がつかない。


漢字「唐」の楷書で、常用漢字です。
 「庚」と口から成ります。庚は杵を上げて脱穀している形。
 成り立ちは「杵」上げて脱穀を表しているということから、この漢字は農耕が発展した時代に生まれたと考えられます。今から6000年から4000年前の出来事だったのではないでしょうか。
唐・楷書


  
唐・甲骨文字
杵を振り上げ脱穀している様
唐・金文
甲骨文を引き継いでいる
唐・小篆
漢字の記号として、形が整備された


    


「唐」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   トウ
  • 訓読み   から

意味
     
  • 大言をたたく
  •  
  • とりとめがないこと、話が空虚である 
    むなしい   空疎である
  •  
  • ひろい、大きいこと
  • にわかに 突然に

同じ部首を持つ漢字     唐、糖、
漢字「唐」を持つ熟語    唐朝、盛唐、唐傘、唐人、唐突




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 唐会意文字である。甲骨文字の唐の字は上部は「庚」で、上古時代の糠をとる網で下部は口である。両形の会意で、大言をいう、ほらを吹くの意味である。金文は甲骨を受け、構造的には相似で上部の構形は少し煩雑になっている。小篆は変化して上部の庚は両手に分裂し、隷書では左の手が省略され、一つの祓いになって楷書は「唐」となっている

 



漢字「唐」の漢字源の解釈
 庚+口から成る。庚はピンと張るの意。口を張って大言することとしている。


漢字「唐」の字統の解釈
 庚と口に従う。庚は康の従うところで、杵を上げて脱穀している形。口はサイ、祝禱を収める器であることから唐は農耕に関する儀礼を示す字であろう。杵を供えて祈る意を表す字かと思われる。


まとめ
 この漢字からは全く異なる意味が引き出されていますが、それぞれ成立過程にはそれなりの理由があるはずです。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年8月26日木曜日

漢字「欠」の成り立ちと由来の秘密:「欠」の原義が「欠伸(あくび)」とは、いささかしまらない話


漢字・欠の成り立ちと由来:古代では欠伸をすることを表していた
 「欠」の字は、古くは欠伸の意味に用いられた様です。ところが現代では、「欠乏」の意味に用いられています。白川博士は「字統」の中で、形声:旧字は「缺」に作り「夬」声。缶は瓦器、「夬」は切断することで、説文に「器破るる也」とある。夬声に従うものは概ね缺失の義がある。今欠を缺の常用字とするが、欠は欠伸、背伸びをして欠伸をすることの意で、缺とはことなるとしており、甚だややこしい。

 ここでは現代の解釈に従わざるを得ないが、甲骨文字の時代には、全く異なる使い方をしていた事だけに留める。全く欠伸の出る議論である。 


漢字「欠」の楷書で、常用漢字です。
 現代ではあるものがなかったり、欠乏したりする意味に用いますが、象形文字や金文、小篆などの字形を見る限り、「欠乏する」という意味はどうしても窺い知ることはできません。確かに無いものを表現するのはむつかしい。認識の問題が存在するのかも知れません。
欠・楷書


  
欠・甲骨文字
人が口を大きく開けた状態を描写してます
欠・金文
甲骨文字を基本的に引き継いでいますが、人がひざまずいた姿勢から立位に変化しています。
欠・小篆
口気を吹き、言葉を発して歌い、叫ぶときの形であるとするが、抽象化されているのだろうか


    


「欠」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ケツ
  • 訓読み   かける

意味 
  • かける(かく)」(旧字:缺)  あるべきものがない。
     全体の一部が足りない(欠乏)
  •  
  • かけ  (同意語:缺)・・不足、不備
    定員などの空き、欠員
  •  
  • あくびする・・例:欠伸

漢字「欠」を持つ熟語    欠乏、欠落、欠席、欠如、欠伸




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「欠」は象形文字です。甲骨文の「欠」は人が欠伸をする様子です。金文と小篆、楷書の「欠」の字は変化しグラフィックテキストからブロックおよびシンボル化への漢字の進化プロセスが再現され、段階的な変更プロセスはかなり明確です。

 「欠」は説文で「欠、あくびの時の声なり」としています。口を開け欠伸をする

 欠の本義はあくびが出るとき、腕と腰を伸ばします。「わー」という言葉の証拠。このことから「欠」の字は身体の一部をのびのびと上に伸ばし、まるで体や脚が欠けたかのようです。 

 


漢字「欠」の字統の解釈
 字統P254(ケン、ケツ あくび)
象形文字:前に向かって口を開く形。口気を吹き、言葉を発して歌い、叫ぶときの形である。 この字は欠伸の意に用いる。説文に「口を張りて、気を悟るなり」とは欠伸のことであるらしい」   

字統では先の解釈とは全く異なる解釈を呈示でいている
形声:旧字は「缺」に作り「夬」声。缶は瓦器、「夬」は切断することで、説文に「器破るる也」とある。夬声に従うものは概ね缺失の義がある。今欠を缺の常用字とするが、欠は欠伸、背伸びをして欠伸をすることの意で、缺とはことなる。 


まとめ
 「欠」は現代普通に使われている使い方と異なる使い方・意味に古代では使われていたようだ。即ち今では痕跡として残っている欠伸の使い方が主なものではなかっただろうか。唐漢氏は「欠の本義はあくびが出るとき、腕と腰を伸ばします。「わー」という言葉の証拠。このことから「欠」の字は身体の一部をのびのびと上に伸ばし、まるで体や脚が欠けたかのようです。」としていますが、後付けのような気がしてなりません。



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