2021年5月29日土曜日

漢字 登の成り立ちから何を読み取るか。神に敬虔な祈りをささげる古代人の生活が見えてくる


漢字の成り立ちから何を読み取るか。「登」の反対語は「降」で、両者とも神聖な祭祀に用いられた特別な言葉ではなかったろうか
「のぼる」ことを表す漢字は、「登」、「上」、「昇」などありますが、どの漢字も上に上がるという意味を持ってるのは確かですが、この使い分けはどうすればいいのでしょう。答えは古代文字に遡ってみると意外に確かなことが分かるかも知れません。

漢字「登」の楷書で、常用漢字です。原義は、両足を使って、高いところに上がることです。

 金文にはいくつかの書き方がありますが、右に示したものは、「登」の一つの概念を極めて明瞭に表したものだと考えます。この款には、神が上下する梯子・神梯が左に書いてあり、右には高脚の器を両手に捧げた姿が表示されています。祭祀か何かで、お供えを恭しく掲げ進んでいる様子が書かれていると思われます。
登・楷書


  
「登」・甲骨文字
両手でお供えの入った器を掲げながら、静々と進む姿のデッサンである。
「登」・金文
単なる見たままのデッサンから文字として、より洗練されたデザインになっている
「登」・小篆
文字として完成度が高まり、誰もが同じ物象として受け止め、書く際も間違いなく同じに表現できるものになっている


    


「登」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   トウ、ト
  • 訓読み   のぼ(る)

意味
  • あがる、上にあがる ・・(例)登山
  • 部署につく、採用される・・・・登用
  • エントリーする ・・登録・登記 

同じ部首を持つ漢字     登、澄、橙 、 燈、鄧(中国の政治家の名前)
漢字「登」を持つ熟語    登山、登校、登場、登壇、登頂




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「登deng」、これは非常に興味深い会意文字です。 甲骨文字の「登」は、上が両足の形で前進を意味し、下は両手に高脚皿を持ち、汁物などを入れた古代の器の外形を絵で描いたものです。 青銅碑文は甲骨文を継承し、進化の過程で小篆は下の手の形を省略したため、通常の字は「登」と書かれています。

 スープの入った食品容器を両手で持ち、注意しながら足を高く上げて一歩一歩前に進みます。 そのため、甲骨文字では「登」が生贄を捧げる際に尊厳を表すためによく使われます。





漢字「登」の字統の解釈
 癶(はつ)と豆とに従う。癶は両脚のそろうて前に向かう形で、「発」の初文。豆は踏み台の形で、その踏み台に足をそろえて登ることをいう。説文には「車に上る也」とあるが、白川氏は車ではなく、豆の踏み台だと主張する。但し、氏は「豆」の説明で、足の高い食器の形としている。甲骨文字では「豆」の上部に「足」があることから、踏み台としtのかも知れない。


まとめ
 会意文字である。甲骨文字にせよ、金文にせよ、小篆にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした姿が描写されている。年代が進むにつれ、文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンに進化しており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年5月27日木曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「暑」は漢字「熱」との比較でその違いが際立ってくる



漢字 暑の成り立ちの意味するもの:古くから気候で、寒暑をいうのに暑を使ったようである。
 漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「暑」は漢字「熱」との比較でその違いが際立ってくる

 文字は一つの文字を取り出して、それだけを論じても、真実にたどり着くのは難しい。
 その漢字の類語、使われ方、音、歴史的背景などあらゆる面から調べて初めてその文字の本質が見えてくる。これは、漢字の新しいジャンルになるのかも知れない。漢字考古学とで名づけられるだろうか。

 これから日本は、梅雨も明けると本格的な夏に突入する。暑い暑いと連発することになるが、同じ「暑い」でも、「熱い」というアツさがあるが、この区別はご存じだろうか。

 古代人はこれらを実に巧みに使い分けていた。漢字の成り立ちを調べると、その使い分けが見事になされていることに今更ながら感服する。

 ここで違いはあくまで、古代での話であって、現代ではこのような話ではないことは当然である。


漢字「暑」の楷書で、常用漢字です。訓読みでは「あつい」と読みますが、おなじ読みをする漢字には、「熱い」があります。

 この意味の違いは、古代文字を見ると一目瞭然であり、文字から、三千数百年前の人々の考え方にまで迫れるというのは、漢字以外の世界中のどの文字にもないだろう。漢字はすごいの一言に尽きる。

 参考ページ:
熱はトーチを持つとき熱く感じるさまをいう 


 
古代人の考え:暑と熱さは一つのことを言っている。暑さと熱の違いはほかでもなく湿っているか乾燥しているかだ。従って南は暑い、北は 「熱い」となる。其れから言うと日本の夏は「熱い」ということになり、砂漠のあつさは「熱い」ということになる。

「暑」・金文
「日」と「者」の組み合わせの表意文字だ。 「者」という言葉の本来の意味は、もともとは漆が付着したために、湿を帯び中に封じ込めるの意味を含む。
「暑」・楷書
金文を引き継いだ。
  甲骨文字の「熱」という言葉は、まるで人が燃盛るトーチを手に持っているよう見えます。

 「熱」の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。

 この文字は、今盛んにおこなわれている、オリンピックの聖火リレーそのもので、、この字を見ていると、古代中国でもオリンピックが行われていたのではないかと錯覚を覚えるほどです。
「熱」・甲骨
まるで人が燃盛るトーチを手に持っているよう見えます。
「熱」・小篆
小篆の「熱」の言葉は、火と執るの音からなり、会文字と形声文字になっています。
 小篆の「熱」の言葉は、火と執るの音からなり、会文字と形声文字になっています。楷書はこの関係から、「熱」と書かれており、簡略化されて「热」になっています。


    


「暑」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ショ
  • 訓読み   あつ(い)

意味
  • (天候の)暑い  ・・・(例)蒸し暑い、
  • (物の温度が高い)熱い  ・・・例:鉄が熱い、熱く燃える

漢字「暑」を持つ熟語    炎暑、酷暑
漢字「熱」を持つ熟語    加熱、過熱、蓄熱、解熱、高熱、熱中症、熱量




引用:「汉字密码」(P415、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「暑」日と者の声音からなる。 古代人の考え:暑と熱さは一つのこと、「暑の義、主曰く湿、熱の意味、主曰く燥」、暑さと熱の違いはほかでもなく湿っているか乾燥しているかの違いだ。南は暑い、北は 乾いた熱さ。

 「暑」という言葉は、「日」と「者」の組み合わせです。 ここでの「者」はここでは声符でありまた表意文字だ。 「者」という言葉の本来の意味は、もともとは漆が付着したために、湿を帯び中に封じ込めるの意味を含む。 したがって、暑の本来の意味は中にも含める、「じめっとした暑さがへばりつく」の意味も含まれています。

 私たちの感覚でいうと、日本のじめじめとした暑さは「暑い」で表現され、砂漠の熱さは、「熱い」ということでしょうか。


「暑」の字統の解釈
 形声文字:声符は者(シャ)。説文に「熱きなり」とあって暑熱をいう。


まとめ
 個人的には、「熱」の古代字が実に面白い。特に甲骨文字に至ってはまるで漫画である。古代人の巧みな表現力に敬意を表したい



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。