2021年3月28日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「戸」と「門」から考える古代の家と村のセキリティー


漢字「戸と門」の成り立ちの意味するもの:漢字「戸と門」から考える古代の家と村の成り立ち
「戸」と「門」の甲骨文字を左に示しました。恐らく集落の入り口に、最初に立派な門ができ、それから時代がある程度下って、集落の中の倉庫の出入り口に片開きの扉ができ、各家族が住む家にが出入り口のような扉ができたのは、更に時代が下ってからのことではなかったかと思われます。
戸・甲骨文字門・甲骨文字  


  太古の時代には人々はおそらく同じ氏族が共同で生活していたでしょう。この時には、生産力が非常に低く、各家族には富の蓄積は殆どなかったと思われます。富の蓄積は、氏族全体で管理する食糧倉庫の類のものだったと思われます。

 従って、各家族が住む家はおそらく竪穴式の住居だったでしょうし、家には財産もなく、入り口には蓆をぶら下げる程度のもので充分だったと考えられます。

 しかし、その一方で、集落には食糧倉庫などが共同で管理されていたでしょうから、集落には恐らくきちんとした門があり、門にはしっかりした両扉が付けられていたことでしょう。集落の入り口に付けられた門と扉は甲骨文字にあるそのものではなかったかと思います。門の両脇の支柱に扉が付けられ、その支柱はきちんと固定するために横木でしっかりと結びつけられていたのではないでしょうか。


  
関・金文
 リングと無垢材の形をしたドアのような漢字であり、ラッチを挿入してドアを閉じる有様
「閉」・金文 
門の中に「出入り禁止を示す立て札「才」を示している
開・金文
門の中のかんぬきを手で開けることを示している


    


「戸」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コ  
  • 訓読み と  へ

意味
  • と。とびら。出入り口。とぐち。「門戸」
  • 家。部屋。「戸主」 「戸建て」
  • 酒を飲む量を表す語。「下戸」

部首などにつかられている漢字
  • 所 扇 扉 扁 房 戻

熟語   戸籍、戸主、戸口、戸棚、戸板、下戸




引用:「汉字密码」(P734、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「戸」は象形文字である。甲骨文と金文の「戸」はちょうど片開の門の形状である。その本義は門扉を指す。即ち片開きの門のことである。小篆の戸の字は門扉の象形の持ち味を失っている。楷書はこの流れで「戸」と書く。戸の字の変化は、書く上での便利さと美観のため、それによって符号化に向かう発展の典型例です。

 「戸」は説文では、戸、保護と解釈する。片開きの戸である。このことは「戸」ないし、単扇のことです。

 

漢字「戸」の字統の解釈
 一扇のとをいう。両扉を門という。「説文」に「護」。半門を戸という」とある。


まとめ
 漢字はその時々の社会の認識、生活様式を反映したものになっている。漢字が生まれたころと今では大きく変化しているから、漢字の成り立ちだけで、今の社会を論じることは難しい。しかし、人間の基本的な認識を漢字を通して探ることは意義が深いと思う。



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2021年3月24日水曜日

漢字・厚の成り立ちの意味するもの:「厚」の原義は「深」って本当?


漢字の成り立ちと由来:誰が「厚」という漢字から「深」という意味を考えることができただろうか?
 このところ厚労省職員による23名の深夜宴会問題で、国民の怒りが沸騰している。
 もともと厚労省の前身は、厚生省という名前だったのだが、この名前は、「書経」の「正徳利用、厚生惟和(徳を正しくして用を利し、生を厚くしてこれ和す)」から厚生省と名付けられたということだ。
 しかし、昨今の役人の振る舞いからいうと、この名前は「厚かましく生きる」という解釈がピッタリではないのかと思われてくる。

 漢字「厚」の楷書で、常用漢字です。意味は、今では「厚さ」を表すものとされていますが、元々は、「深い」という意味で、元の字は「深」だったということです。
成り立ちまで遡らなければ、真実に迫れない!
まさに青天の霹靂で、なんで?という気持ちを禁じ得ません。いったい昔の人は、どうしてこのような考えに至ったのでしょう。今から探ってみましょう。
厚・楷書   




甲骨文字の「厚」金文小篆




 このように、甲骨文字から金文そして小篆までの文字の変化を跡付けしてみると人間の認識の発展が良く分かる。
 甲骨文字の「厂」(ガンダレという)の下部には高い建物の影がひっくり返っている様が見て取れる。
 金文はその塔のような像が明確になり、小篆では、太陽の日差しの下で実像の子供という意味で、子という字に変化している。





「厚」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   あつ(い)

意味
  • ぶあつい
  • ゆたかにする。
  • 心づかいがてあつい

使い方
  • 「ぶあつい」  分厚い本、厚かましい(面の皮がぶ厚いからきたという)
  • 「心づかい」・・手厚くもてなす
  • 「ずっしりしている」・・軽々しくない。ちょっとのことで動かない

熟語   厚紙 肉厚 厚着 厚手 厚遇 厚情 温厚 重厚 濃厚




引用:「汉字密码」(P744、唐汉著,学林出版社)

漢字「厚」の漢字源の解釈
会意文字。「厚」の原字は、高の字を逆さにした形。それに厂(がけ、つち)を加えたものが「厚」の字。土が分厚くたまった崖を表す。上にできたのを「高」といい、下に分厚くたまったものを「厚」という。



唐漢氏の解釈
 「厚」の字の甲骨文字は、「高」の字を逆さまにしたもので、上に見れば「高』の意味であるが、これを逆さまに書いているということは、「厚」の字は元々深いという意味を表していたのだと主張する。確かに市の主張するように、がけや渓谷に行って土地の厚さ(深さ)が分かるという説も頷ける。
 

まとめ
 「厂」の字の中に「高」を逆さまに書いて、これで「深」を表すとは、なんという発想の転換だろうか。このような逆転の発想ができる柔軟な思考方法を持っているとは驚きだ。実に素晴らしいと唸るより他はない。



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