2021年1月7日木曜日

漢字「物」の成り立ち:「牛」と「勿」からなり、殺されない牛の意から、万物一般のすべてのものに拡張された



漢字「物」は「牛」と「勿」からなり、両形の会意から、刃がボロボロになった刀では牛を殺せないことを意味します。
 甲骨文字にある「物」は、「牛」と「勿」からなる会意文字です。「勿」の本来の意味は、刃が刎ねてしまった後の使用できない刀のことです。 左右両形の会意から牛を殺せないことを意味します。


引用:「汉字密码」(P21、唐汉著,学林出版社)
「牡」と言う字は、元々オスの牛を指していた
唐漢氏の解釈
 甲骨文字にある「物」という言葉は、会意文字です:牛と勿からなる。 「勿」、本来の意味は、刃が刎ねてしまった後の使用できない刀のことです。 両形の会意。ここでは、雄牛を殺せないことを意味します。 小篆の「物」という言葉は甲骨文字を継承し、楷書は「物」と書きます。「物」という言葉の本来の意味は殺されない牛という意味です。拡張され動物の存在から物事のカテゴリーまで、それは一般的に客観的に存在する世界のすべてのものを指します。 「動物、植物、人」、さらには「材料、物体、物理学」など。物が集まった後は、すべてを「物」と呼ぶことができます。

今日の私たちの物体意識は、今でも古代の祖先の意識と同じ基準点にありますが、今日私たちが持っている「もの」は1000万倍も多く、「すべてのもの」と呼んでいます。



漢字源の解釈
会意兼形声。 「牛」+音符「勿」で、色合いの定かでない牛。一定の特色がない意から、いろいろなものを表す意となる。牛はモノの代表として選んだに過ぎない。

 それでもなぜモノの代表として「牛」でなければならなかったのかの疑問は残る。古代には「牛」は体の大きさ、有用性、姿、周りに絶えず目に触れるものとして、ポピュラーであったのかも知れない。豚では字の収まりが悪いし、羊では存在感がないというのもその理由になったのかも知れない。 



結び
 漢字「物」の成り立ち:「牛」と「勿」からなり、殺されない牛の意から、万物一般のすべてのものに拡張された。
 漢字は社会の変化を残す母斑であると常々言ってきましたが、この漢字「物」は社会発展の痕跡というより、抽象化の概念の表れとして考えられるのかも知れない。しかし、なぜ牛でなければならなかったのか、殺せない牛がなぜ万物の代表となったのか疑問はまだ残る。




「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年1月6日水曜日

漢字「牝」は牝牛の生殖器のかたちの象形文字だという。後に牛に限らず動物一般のメスを指すようになった



漢字「牝」は太古の昔にはメスの牛だけを意味していたが、漢字オスとまったく同じように、社会の発展に伴い牝という漢字は動物一般の性別を総称するようになった。
 漢字「牝」が動物の「メス」の総称を表すようになった背景は、狩猟生活の時代にはオス、メスの区別を明示的にあらわさねばならなかった時代から、農業・牧畜の時代に入り、必ずしも牛や、馬、羊など動物の雌雄を漢字で明示する必要がなくなった社会変化があった。

 社会の変化が漢字に変化を与えた一つの例をここに見ることができる。



引用:「汉字密码」(P17、唐汉著,学林出版社)
「牝」の本来の意味は母牛です
唐漢氏の解釈
 甲骨文の「牝」の文字は、左側に牛の絵文字、右側に女性の記号「▽」(匕)があります。 「匕」とは指事詞で、縦に曲がったものが牛の尻尾を表し、真ん中の短い横線が母牛の生殖器の位置を示しています。 「匕」とは指事詞で、縦に曲がったものが牛の尻尾を表し、真ん中の短い横線が母牛の生殖器の位置を示しています。文字の段階的な進化の過程で、「▽」は柄杓を表す「匕」となった。牛の生殖器の見た目が「柄杓」に少し似ていることから、「匕」の文字が定着した。

 「牝」というキャラクターの形、意味、音の源は、文字学の永遠の謎になっており、諸説紛々としています。「牝」の本来の意味は母牛です。後に、「牡」という言葉のように、それは抽象化され昇華され、雌動物の総称になりました。 「説文」はそれを「牝、動物の母」と解釈した。



字統の解釈
漢字「牝」は、漢字「牡」と同様、性器の部分の象形である。


結び
 漢字は社会の変化を残す母斑であると常々言ってきましたが、この漢字「牝」もそれを如実に示す一つの例といえましょう