2020年2月27日木曜日

「宮刑」という屈辱を受けながら「史記」を完成させた司馬遷の恨みを感じる


「宮刑」という屈辱の刑を受けた司馬遷の恨みを感じる漢字「刑」

 石川五右衛門はかまゆでの刑、古代中国では斬首刑、始皇帝による生き埋めの刑、そして司馬遷が受けた屈辱の「宮刑」など残酷な刑が過去行われてきた。しかしこれらの刑罰は、残酷だけではなく誤った運用のために、数々の悲劇と損失がその刑罰に付随してあり得ることを忘れてはならない。

 ここではその「刑」という漢字を跡付けてみる。


引用:「汉字密码」(P651、唐汉著,学林出版社)
漢字の説明
 「刑」は会意文字です。金文の「刑」という字は左右が組み合わさった構造です。右側には刀の形がありますが、ナイフの形の下部には2つの「×」記号があります。これは荊の条で編んだ処刑用の鞭を表している。(しかし私には、この×は受刑者の血しぶきのような感じを受けます)
 左側の「井」記号は、人体の背中の血痕を示している。小篆の刑の字は金文に依拠していて、まさに荊の弦をよじった刑の鞭が刀に代わり、「井と刀から会意と形声文字となった。これから、楷書は刑の字に変わった。


漢字の意味の考察
 「刑」の本義とは、犯罪者と奴隷達に肉体的な罰を課すことを意味します。 「説文」では「罰」と解釈している。その抽象的な意味から拡張され「刑法」になる。たとえば、《左传•昭公六年》には、「刑法本」は法的条項と表現している。

 《周礼• 秋宫•司刑》は「5つの罰則」を述べている。ここで「5つ刑」とは5種類の刑法である墨、劓、宫、刖、大辟のことである。「酷刑、厳刑拷打」などの言葉の中に「刑」という言葉が使われている。 

  • 墨   刺青
  • 劓   鼻そぎ
  • 宫   去勢する
  • 刖   罪人の脚を切る
  • 大辟  死刑

字統の解釈
 「刑」の字の原字は「井」+「リットウ」から構成されているとする。「井」には二つの意味があり、一つは首枷と鋳型を表すとしている。首枷からは刑罰の意味が出てきて、鋳型からは「型」の漢字が派生されたという。慣用により字形と字義が分化した例だとしている。



結び
 そもそも司馬遷が「宮刑」を受けることとなったのは、前漢の時代匈奴討伐の任を受けた李陵が、敵地深く攻め入り多大の戦績を上げたにも拘らず、敵に囲まれ降伏のやむなきにいたったことを擁護したためである。これは捕虜によるデマによる誤った情報に基づくものであった。このようなことは現代でも起こる話である。現代では、さすがに「宮刑」はないが、要職から更迭されたり、失職されたりする事例は、アメリカのトランプ政権の周辺でから漏れ伝え聞く。デマによって被害をこうむった本人だけの問題ではなく、国家的な損失も計り知れない。

 情報が飛び交う昨今、デマに踊らされないようにすることが、一人ひとりに求められている。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2020年2月24日月曜日

「鵲」は「カササギ」と呼ぶ。


「鵲」は「カササギ」と呼ぶ。

カササギ雑感
 ヴィキペディアによれば、「現代では「鵲」は鳥類のカササギを指す文字として使用されているが、古代における「鵲」の意味と読みは特定されていない」とあるが、このページは漢字「鵲」が甲骨文字の時代から、現代までの漢字の変遷を津給するページであって、まさにこの漢字がヴィキペディアの記述通りであるか跡付けることになる。
古代の日本には、もともとカササギは生息しなかったと考えられる。聖徳太子の使者が持ち帰ったとか、秀吉の朝鮮出兵のときに持ち帰ったという説があるがいずれも確証はなく、朝鮮と日本の間を行きかう渡り鳥の中に混じって日本に来て、定住したというのが実態に近いのではなかろうかといわれている。


引用:「汉字密码」(P74、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「鹊que」は、鳥と昔から成り立つ。形声文字です。 甲骨文字では、鳥の頭の上に鳥の巣を頂いた姿です。鵲の字源は、木の上の天辺に千本(多く)の枝で巣を作る鳥。
 この説明は多分に跡付けである印象が深い。

 小篆の異体字は(左側の図は鳥の巣から進化した図形)、隷書で変換された後、現代の中国語では「鹊」という漢字になった。

 「昔」には長期的な意味があるので、人々はカササギの到来は遠くからの良いたよりを伝えることであると考えられ、喜びのしるしと考えた。 カササギは鳴き声の他、飛び跳ねたりジャンプしたりすることが多く、人々を陽気な気分にさせる。正直なところ、カササギの鳴き声は非常に耳障りですが、それは喜びの象徴であるため、人々はその高いオクターブ音を喜びごとの表れと見ている。

 このように中国朝鮮では、この鳥は幸せを告げる鳥として親しまれていますが、西洋では烏の仲間として、どちらかというと嫌われているようで、文化の違いといえましょう。



字統の解釈
 象形文字で、縫い靴の形でする。礼装用のもので、飾りのある履の形としている。注釈で「説文にはカササギであるという説明となっているが、その字形は鳥に見えない」とある。

 確かにそういわれると、甲骨文字はとても鳥には見えない。説文の時代には甲骨文字は発見されておらず、せいぜい小篆か、金文を参照にしたものであることから白川氏の解釈がもっともであるかもしれない。しかし、甲骨文字の字形が「履」であると、私にはとても思えない。



漢字源の解釈
 カササギ、野鳥の名。

 形声文字であるとする。チャチャと鳴く声を真似た擬声語とする



結び
 カササギは鳥類のなかでも高い知能の持ち主で、哺乳類以外では初めて、ミラーテストをクリアしたという。鏡に映った像が自分であることを認識したことが確認されている。

 新古今和歌集の中に大伴家持の詩として「鵲の 渡せる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞ更けにける」という和歌が取り入れられているが、これは天の川に架かる伝説の橋を歌ったもので実在のカササギを歌ったものでないといわれている。




「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。