2013年4月23日火曜日

獄:漢字の起源と由来

 犬にまつわる漢字について、連続して調べているが、今回は「獄」という字である。獄という字は、「監獄、地獄」という風にあまり好いイメージには使われない。犬は最も古くから人間と馴染んできた動物であるが、その割には昔からあまりいい評価を与えられていない。犬は人間が飼いならして以降、人間に忠実で、人に逆らうことはなかったことから、却って見下げられてきたのかもしれない。どこかの首相がどこかの大統領に媚びた為、「ポチの尻尾」と呼ばれたことにも通じるのかもしれない。この方は、この一国の首相の個人の問題で終わらなく、その国民全体が今や世界からあまり評価を受けなくなってしまっていることに、深刻な問題をはらんでいる。

引用 「汉字密码」(P29,唐汉,学林出版社)

「獄」という字は、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている


  「獄」という字は金文では、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている。真ん中の字形は「言う」の字で、これは二匹の犬が争っている時の叫び声を表している。犬が相互にかみ合っていることから、拡張され争いを表している。人と訴訟する意味である。敗訴になった人は牢につないがれたことから拡張され、漢代以降、人々は監牢を「獄」と称するようになった。

 獄の字は二匹の犬が守って、牢獄の一つの概念を示している。単に監獄に犬を看守として用いるだけではなく、無論大きな家の人は、皆通常は百姓等も皆犬を使って、大きな家の警護した。


歴代の統治者は犬
 犬は人間に対しては多くの用途があり、いわゆる歴代の統治者は犬を十分重んじてきた。《周礼•秋官》の中で、宮廷では犬と人一緒ではなく、専門に飼い犬を掌管し、犬の用事をした。漢代には「犬監」という、皇帝の飼い犬を養育を請け負う専門の部署があり、唐代には犬を養う「狗房」があった。元代の"狗站"は犬の駅を提供する役使であった。


人間の犬に対する評価

 犬と人は密接な関係を持っていたけれども、しかし中国人は犬に対してはそんなに高い評価をしているわけではない。犬で以て人を例えて、賎しいとか軽蔑の意味を持つ。「走狗、狗屁(たわごと)、狗屎(くだらないやつ)、狗官(悪役人)、狗眼看人低(権力や金持ちに媚びるような人間は、決って貧しい人を軽蔑するものである。)等など。皆貶す意味をもった生活習慣用語である。
 
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2013年4月21日日曜日

狗:漢字の成り立ちと由来 いつから犬のことを「狗」と呼ぶようになったのか?

 中国では犬のことを「狗」と呼ぶ。日本でも天狗や走狗というように用いられるが、犬は専ら「犬」である。しかし現代中国でも、牧羊犬、警犬、玩赏犬、食肉犬というが、番狗、食肉狗とは言わない。また犬歯というが、狗歯とは言わない。いつからそのようになったのだろう。犬と狗との使い分けはどうなっているのだろう。少し探って見た。
引用 「汉字密码」(P27, 唐汉,学林出版社)

「狗」は犬の交配から先住民が呼び出したことによる

 「犬」の字はなぜQuan(チュアン)と発音するのか?これは犬の子の鳴き声の「きゃんきゃん」というところから来ている。これは犬の発音は子犬の擬声語から来ている。
 しかし、人々はなぜ「犬」を「狗」と呼ぶのだろうか。このことは人々が通常湾曲した形状のものを「鈎」と称したことによるものだ。湾曲したものをつなぎ合わせて一緒に「句(gou)搭」と呼んだ。雄犬と母犬が交配をする時、大変長い時間「離れがたく一緒」にいるが、まるで繋がったものと同じようである。先住民は交配している犬を見て、自然に「句住」と呼んだものだろう。こうして長い間、「句」の発音は犬の通称となった。発音に基づき、犬と句の音と犬の字が同時に使用されて、人々は「狗」の字を作った。


漢の時代には既に「犬」は「狗」と呼ばれていた

 西漢の初年、漢の高祖が天下を取るのを助けた戦功を立てた大将軍韓信は謀反の嫌疑をかけられ、毒を飲まされ自殺した。彼は一句世に伝える名言を残している。「狡兔死,走狗烹。」この意味はずるい兎を捕まえる時は犬は一定重用されるが、一旦ウサギが捕まり、犬が用いられなくなると料理されて食べられるものだ。これは韓信のの自嘲の気持ちである。我々は却って、この事から、犬を狗と呼ぶようになったのは相当古いことだと見て取れる。

 漢字の中で「犬」の字は部首である。偏と旁に用いる時、犬は却って「狐、狼」の様にかかれる。「犬」の造りは通常犬と同類の哺乳動物の類を表す旁となる。音を表す旁を用いて、犬の行為に関係を示す。

「犬」は早い時期から狩りの助けなど
人々の生活に係わってきた

《诗•小雅•巧言》のなかに「子供のウサギに心が躍る、犬に会ってこれを捕まえる」の記述がある。これから分かることは相当早い時期から、犬は既に人々の狩りの助けをし、人々のために犬馬の労に献身する。
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