2013年1月1日火曜日

命:漢字の起源と由来


   最近の宇宙工学の発展は、地球以外の天体に生命体が存在するかもしれない可能性を我々に示してくれる。最近発表された水星に極冠の地があり、水?が存在する可能性すら示唆している。このようなニュースに触れるにつれ、この生という響き、中でも「命」という漢字をわれわれは特別の響きを以て捉えているように感じる。「生ある限り」など、その言葉は何かしら聞く人にみずみずしい響きと感性を与える。しかしその漢字はもともと古代ではどのようにつかわれたのであろうか?探ってみたい。

引用 「汉字密码」(P650,唐汉,学林出版社)

「令」と「命」は同じ源

「令」と「命」は同じ源を持つ漢字である。甲骨文字の「命」の字は、上部は男の露出した生殖器であり、下部は一人の膝まづく人を表している。この命の字は令の字と完全に一緒のように見える。
 金文の左下隅には口が一つ加えられているが、これは単に人を膝まづかせて臣服させている示しているにとどまらず、口を用いて命令を発布していることを表している。小篆の形は金文から直接変化し、楷書では命と書く。命の字の本義は口で命令を発している。即ち上級が下級に指示を発すること。


上古の統治者は臣下に命令を生命と同じに見ることを要求した

 命令に従い君に利することを順というが、命令に従い君に利しないことを諂いという(へつらい)。この事は命令を聞いて国君に有利に働くことを忠順といい、命令を聞いて国君に不利に働くことを媚びへつらいという。
 上古の統治者は臣下に命令を生命と同じに見ることを要求した。いわゆる「命」の字は拡張して生命或いは持ち前の生命を意味するようになった。《论语•雍也》の中の記載で顔淵が「不幸にして短命で死んだ」とある。


「命」の字は上級が下級に命令の下達、「令」は一般的に「させる」という意味

 古人は社会の統治の乱れ国家の興衰が個人の幸せと禍失敗と成功が皆天意の采配によるところと認識していた。この為「天命、命運」等という言葉がある。
 「命」と「令」の言葉には皆「使役」の意味がある。但しわずかな違いがある。「命」の字は専ら上級が下級に命令の下達の意味に用い、「令」は一般的に「させる」という意味に用い、動詞に用いる。「令」は時に目的語を伴わないこともある。 
「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2012年12月24日月曜日

いかに「它」から「蛇」が生まれ出ずるか


前号で述べた通り、蛇を表す字は、「」という字であった。しかし、今では蛇を表す字は「」である。なぜ、「」が「」に変化したのか? またそれはいつのころか、唐漢氏はそれは甲骨文字が作られて以降、言葉の発展の過程で小篆のころに「」という漢字が確立されたと考えているようである。ではその変化はどのような過程を辿ったのであろうか。

引用 「汉字密码」(P102, 唐汉,学林出版社)

古代人が非常に恐れたのは蛇にかまれることであった。

 はるかなる昔、雨量が満ち溢れ、河の流れも湖沼も今日と比べるとはるかに満ち満ちていた。水草、灌木は生い茂り、鳥類の天国であったし又蛇類にとっても天国であった。このような環境に住み生活する上古の先民が農耕する上で、最も恐れたのは毒蛇にかまれることであった。一巻の終わりになるのはいずこも同じで、現代においてさえ、第3世界つまり発展途上国では三万人がにかまれて命を落としている。

「蛇はいないか」というのは、日常挨拶であった

  所謂古人は顔を合わせると往々に「蛇はいないか?」と尋ねた。この言葉で以てお互いの関係を表す挨拶としてきた。このことは後日中国人があいさつに「飯食ったか?」というが如しである。

いかに「它」から「蛇」が生まれ出ずるか

  上古の時期から、「」という字は、「其它」(その他のという意味)の「它」にもいつも借用されてきた。文字言語の中で使用頻度は非常に高く、区別のため人々は別に「蛇」という字を作った。あとから現れた「」の字は明らかに「它」に「虫」を付け加えたものである。

 こうして「」で蛇を表すことが実質的に難しくなったため、「」はいわゆる「それ」という意味を専ら表すようになり、本来の「へび」を表す字として「蛇」という字が作られたと考えている。

古代文化と蛇の密接な関係

 蛇と上古先民の命運の関係はひとりでに又古代文化と密接な関係を持っている。神話伝説中五色石で以て自然に打ち勝った「女か(じょか)」は、首は人間で体はであったと言われている。「帝王世紀」では、应牺氏は体は蛇で人の首をしていたと書かれている。

 はるか昔の先民の素朴な概念中まるでと親戚や血縁関係にあるとの咬傷から免れるかのようである。氏族のトーテムを作ったのは、まるでその他の氏族に対し一種の抑止作用を願ったかのようである。
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