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2019年12月12日木曜日

2019年の漢字は「令」となった。この推進力は??


今年の漢字は「令」
 今年の漢字は「令」に決まった。ある意味穏当ではあるが、今年ぐらい予想と一致した年はない。今年一年、あるいはここ数年「新元号」狂想曲のオンパレードだった。

 表に現れる様々な運動の裏には「令」という漢字の解釈をある一つの概念で統一しようという動きが目には見えない形で推進されていたようで、ある意味不気味な一年でもあった気がするのは私だけだったろうか。


京都八坂神社前を練り歩く奉祝提灯行列


 これが「めでたい、めでたい!」と祝賀パレードに、提灯行列。
 昔の映像で見た「提灯行列」が今の世の中で再び見られるとは思いもしなかった。


「令和」の『令』の甲骨文字ほか古代文字
大阪学院大学 名誉教授 中川 徹氏の解釈(2019年 4月27日付け『TRIZホームページ』より抜粋)

 「令和」の基本的な意味は、「「令」によって「和」を作る」ことだと分かりました。すなわち、「令」というやり方(「上からの命令・指示」)によって、「和」という状態(「人々が争わず協調している状態)にしよう、それを目標にしよう という意味ととれます。単純に「Beautiful Harmony」という美しい理想を掲げているのでなく、それを「上からの命令・指示」で作って行こうというメッセージを含意しています。


TRIZホームページ
様々な解釈
 この解釈以外にも、色々の解釈があります。4月3日付けで、外務省は、令和の意味を『「令」を「Beautiful(美しい)」の意、「和」を「Harmony (調和)」の意味と説明する』よう在外公館に指示を出しているようです。しかし、漢字学からの観点で言えば、これは跡付けの解釈であって、漢字の本来の意味は、中川氏も言うように、「令して和する」というのが穏当なようです。


結び
国民は柔軟な解釈を!
 先の提灯行列にせよ、一連の即位の儀式にせよ、政府は一貫して、これを国民的儀式として位置付け、国民にもそのような受け止めを促しているように見受けられます。

 しかし元号一つにせよ様々な解釈があって当然であり、それを一つの解釈として統一する必要はまったくないのであり、政府の「大本営的発表」は、好ましいものとは思われません。




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2019年4月1日月曜日

漢字学から『新元号「令和」が本当に意味するもの』を考える

新元号「令和」の由来と起源
 新元号が今日(2019年4月1日)の閣議で決定発表された。
   出展は万葉集ということだそうで、これでの元号は基本的に漢籍から取られたものだそうだが、そういう意味からもこの新しい元号は、これまでとは一線を画するものかも知れない。
 しかし、この新元号の解釈を如何にしようとも、漢字の解釈から引き出される意味は、「命令に和すること」以外はないようである。


漢字「令」の成り立ち
 漢字「令」の甲骨文字の上部の三角形は、許慎は上古の時代青銅楽器の外形の輪郭と考えた。即ち、鈴、鏡、の一種。下部は左を向いて跪いている男の人である。両形の会意で命令を発することを表示する。古典の典籍では、「古きもの将に新令あるときは木鋒を奮い上げ大衆に警告をする。木鋒は木の舌であり、文事には木鋒、武事には金鋒を奮う。
   「金文は基本的には甲骨文の形態を受け継いでいる。小篆の下の部の人の形はいくらか変化し、楷書の形態は即ち根本的には鈴の字の人の形は見られない。其の実、令の字は別の角度からの解釈が合理的なのかも知れない。
 大腿のマタを広げ佇立する男性の眼前に一人の跪いた人がある様がまさに「令」の源である。
 この意味からまた拡張して「~させる」という意味が出る。

 因みに、藤堂明保編「漢字源」による解釈では以下のようである。


「△印(おおいの下に集めることを示す)+人のひざまづく姿」で、人々を集めて、神や君主の宣告を伝えるさまを表す。

漢字「和」の成り立ち
 次に「和」の解釈であるが、「説文解字」や「字統」「漢字源」などで、様々解釈をされている。何はともあれ、甲骨文字と小篆、楷書をそのまま提示しておきたい。ただ「和」という漢字は古代は異なる別々の由来を持っているという解釈が優勢なようだ。

左の図の上段の解釈
 中国語の解説書には、「禾」は「もともと甲骨文字では「」という文字であった。この意味するものは、楽器であったようだ。
 ところが、金文、小篆、隷書と変化するうちに「」の左の旁が「口」に変化し、更に旁と偏が左右位置が変わり、現在使用している「和」となった。
「説文解字」では「龢」は調べなりとしている。

上図の下段の解釈
 そして "说文解字•口部"咊"の意味は「相応する」という意味。偏「口」と発音は禾声。"指と口は対応して、本来の意味は、音楽のハーモニーを意味する。音と声が一致して、歌手または伴奏が調和していることを指す。発音はHeと読む。


関連記事 1.「漢字「令」の成立ちを「甲骨文字」に探る

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2016年12月21日水曜日

漢字「令」の成立ちを「甲骨文字」に探る

漢字「令」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P649、唐汉著,学林出版社)

 左の甲骨文字のヒエログラフの中の三角形は昔から男性のシンボルとして使われてきた記号であり、軍隊の記章などでもおなじみのものである。映画「ダビンチ・コード」でも、詳しく説明がされていた。





「字統」の解釈
 「字統」では白川博士は「礼冠をつけて、跪いて神意」を聞く神職のものの形。上部は三角形に似た深い冠の形である」と説明している。
 しかし、古今東西を問わず、山形の形が「男子を象徴するシンボルである」ことは古くから言われて、いわば定説のようになっており、白川氏の「冠である」という解釈も、上古の時代の男性信仰が、権威の象徴として、神職の冠となったとも考えられ、いわば後付の冠も否めない。


唐漢氏の解釈
 大腿のマタで佇立する権威を表す男性の下で、一人の跪いた人があるときこの種の景色がまさに令の字の生活の源である、また三角は男性の性器の普遍的意味を表すこととも符合する。
 命令からの意味からまた拡張して「~させる」の意味が出る。

「漢字源」の解釈
 因みに、藤堂明保編{漢字源」による解釈では以下のようである。


「△印(おおいの下に集めることを示す)+人のひざまづく姿」で、人々を集めて、神や君主の宣告を伝えるさまを表す。
たしかにこの解釈のほうが、唐漢氏に比べて上品ではあるが・・。

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2016年12月20日火曜日

漢字「命」の成立ちを「甲骨文字」に探る:命と令は同源同字。命の本義は口を用いて命令を発すること


漢字「命」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P650、唐汉著,学林出版社)


 令と命は同源同字である。甲骨文字の上部は男の露出した生殖器だ。下部は膝づいた人だ。この命の字は令の字と相同と見ることが出来る。金文の左下には一個の「口」を加えて、膝づいて臣服していることを表しているばかりか、さらに口を用いて命令を発布していることを表している。小篆の形は金文の直接変化を受けて、楷書では命と書く。


 命の本義は口を用いて命令を発することで、即ち上級から下級への指示の発布である。
 上古の統治者は下属のものに命令を命と同じに見ることを要求した。だから命の字は拡張して、生命または性名となった。『论语•雍也』の中の記載に顔淵は「不幸短命死矣」(不幸にして短命で死んでしまった)とある。
 古人は社会的治安の乱れ、興衰と個人の禍福・失敗や成功は天意の按配と考えた。このことからまた天命、命運という言葉がある。『论语•颜渊』の中の「死生有命,富贵在天」(生死は運命、尊さは天にあり)と。

 「命」「令」の言葉は皆「させる」という意味を持っている。但し少しの差異はある。「命」は専ら上級から下級に下達する命令に用いるのに対し、「令」一般的な意味の上での「使役」(させる)という意味である。動詞を作り「令」は目的語を伴わない時がある。『论语•子路』の如く、「其身正,不令而行;其身不正,虽令不从」(その身正しければ、令せずして行わせ、その身正しくなければ、よしんば令をしても従わせられない)


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2013年1月1日火曜日

命:漢字の起源と由来


   最近の宇宙工学の発展は、地球以外の天体に生命体が存在するかもしれない可能性を我々に示してくれる。最近発表された水星に極冠の地があり、水?が存在する可能性すら示唆している。このようなニュースに触れるにつれ、この生という響き、中でも「命」という漢字をわれわれは特別の響きを以て捉えているように感じる。「生ある限り」など、その言葉は何かしら聞く人にみずみずしい響きと感性を与える。しかしその漢字はもともと古代ではどのようにつかわれたのであろうか?探ってみたい。

引用 「汉字密码」(P650,唐汉,学林出版社)

「令」と「命」は同じ源

「令」と「命」は同じ源を持つ漢字である。甲骨文字の「命」の字は、上部は男の露出した生殖器であり、下部は一人の膝まづく人を表している。この命の字は令の字と完全に一緒のように見える。
 金文の左下隅には口が一つ加えられているが、これは単に人を膝まづかせて臣服させている示しているにとどまらず、口を用いて命令を発布していることを表している。小篆の形は金文から直接変化し、楷書では命と書く。命の字の本義は口で命令を発している。即ち上級が下級に指示を発すること。


上古の統治者は臣下に命令を生命と同じに見ることを要求した

 命令に従い君に利することを順というが、命令に従い君に利しないことを諂いという(へつらい)。この事は命令を聞いて国君に有利に働くことを忠順といい、命令を聞いて国君に不利に働くことを媚びへつらいという。
 上古の統治者は臣下に命令を生命と同じに見ることを要求した。いわゆる「命」の字は拡張して生命或いは持ち前の生命を意味するようになった。《论语•雍也》の中の記載で顔淵が「不幸にして短命で死んだ」とある。


「命」の字は上級が下級に命令の下達、「令」は一般的に「させる」という意味

 古人は社会の統治の乱れ国家の興衰が個人の幸せと禍失敗と成功が皆天意の采配によるところと認識していた。この為「天命、命運」等という言葉がある。
 「命」と「令」の言葉には皆「使役」の意味がある。但しわずかな違いがある。「命」の字は専ら上級が下級に命令の下達の意味に用い、「令」は一般的に「させる」という意味に用い、動詞に用いる。「令」は時に目的語を伴わないこともある。 
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