2012年9月21日金曜日

赤という漢字の起源と由来:人を焼きつけている火の上においた形で、むごい祭祀の名称であった


 紅葉と書いて、コウヨウと読む。この「紅」とは赤いという意味であるが、この赤いという意味を持つ漢字は多い。
「紅 緋 赤 朱 茜 纁 绛(日本語では糸偏)」などがあり、それぞれ少しずつ色合いが異なっている。
 今日はその中でも、「赤」と言う字の起源と由来に焦点を当てる。


引用 「汉字密码」(P632, 唐汉,学林出版社)

赤という漢字の起源と由来:人を焼きつけている火の上においた形で、むごい祭祀の名称であった

 「赤」 これは会意文字である。甲骨文字の「赤」の字は、火の上にある大の字から出来ている。まるで人を焼きつけている火の上においたようである。はるか昔、生贄の人を火あぶりにして雨ごいをした習俗があった。「赤」の字は将にこの種の習俗の形を反映したものである。小篆の「赤」の字は隷書への変化の過程で、今の楷書の赤の字になった。上半分は人の形で、少しずつ変化して土の字になった。

 「赤」はもともと一種の祭祀の名称であった。示しているのは火で人を焚きつけて雨がほしいことを感じさせる。火の炎が起こってくると、まず人の服装を焼ける。この為赤は空と裸の意味がある。「赤地千里」(干ばつや虫害で土地が莫大な広さで枯渇する)、赤貧(貧乏のひどいこと)、「赤手空拳」(自分以外頼るものが何もないこと)、「赤足」(はだし)、「赤膊上阵」(鎧兜を脱いで突き進むこと)、「赤条条」(素っ裸であること)等。人を焚きつけて火で赤く焼けるの意味もある。この為拡張されて朱紅に比べ少し浅い紅色とという意味となった。後日、広く赤色を持つものを指すようになった。

 宋代の詩人陸遊は《记老农语》のなかで「霜清枫叶照溪赤」と詠った。詩の中の赤は即ち紅色の意味である。紅色は鮮血の色、また心臓の色、以て今日革命を象徴するのに用いられる。血を流して自由を勝ち取ることを表示し、赤衛隊、赤胆忠心(忠精心にあふれている)等。

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2012年9月19日水曜日

親という漢字の起源と由来



 親と子の関係はずいぶん薄くなった。昔は親は子供を育てるだけで、いわばその関係はゆるぎないものだあったが、今では「親は無くとも子は育つ」とか言われ、親の力はなくなって来た。それだけ世の中が複雑になっていたのであろう。

 しかしここで展開される説は少し逆説的すぎるようにも思うが・・。  
引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

 金文の「親」の字は会意形声文字である。左側は「辛」という字で捕虜の刑具である。右側は眼を表している。図形全体では会意の方式で首の上に架せられた刑具を表し、眼で極めて近い距離にあることを示している。小篆では、変化していく過程で、「辛」の下に木の字を加えることで「木」出来た刑具であることを強調している。楷書ではこの関係から「親」となり、簡単字化で半分が無くなっている。

 親の本義は近くに張り付いていて、中途半端な距離ではなく、極めて近い距離にあることを示している。孟子の「男女授受不亲 , 礼也。」(男女の間では直接、物をやり取りしないのが礼儀だ)男女の間では媒酌を経ずして婚姻を結ぶことで、相互に近く接触することはすべきでない。現代漢語の中では本人が手を動かして、中間に他人を入れることがないのは「親、親自、親手、親信」などという。

 近から親は、また関係を指す。感情の近いこと親密なることをいう。名詞が出来て、血縁があること、或いは感情の親密な人は「双親、舅、表親、親戚」等。特に婚礼の時、元来疎遠な人と一緒に契りを結ぶことを「結親、親事」等という。「親家」の中の親は発音はqinといい、良家の娘息子が夫婦関係の後親戚となることを言う。

 「辛」は刑具である。首の上にかけ、捕虜であることを示し、奴隷の命運の始まりを意味する。また異国の地にあっては「举目无亲」(全く身寄りがいない)ことは凄惨な生活の始まりである。古人は眼と刑具で距離感を表し、哲学的な響きでもって、あなたの自由になるものか、あなたの近いものかを限定した。
 
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