2012年8月2日木曜日

漢字「宋」の起源と由来:人々は「穴」から出て、「宋」にすむようになった


住まいの漢字:「宋」の起源と由来

 中華民族の先民たちは、人口が増え村落が発展すると、当然のこととして建築様式の発展が生まれる。

 紀元前4、5千年前の仰韶の時期には人々の家屋は前回見た浅穴式の家屋から抜けだし、さらに地上の上につき出し、四方に柱を建て、泥壁をもった、より快適で、より堅固な家屋が出現する。

 この仰韶時代は河南省仰韶遺跡や陝西省半坡遺跡の辺りに栄えた文化を言う。食物は畑作で、粟や黍が中心で、豚、犬、鶏を飼育し、陶器は彩陶土器で、素焼きの上に赤や黒で彩色したものを特徴とする。


引用 「汉字密码」(P716, 唐汉,学林出版社)

甲骨文、金文、小篆の「宋」

  甲骨文、金文、小篆及び楷書の "宋 song" の文字は、形体は似通って、同じ流れを汲んでいる。上は "内 " 、下に "木 " と、明らかに内と木からなる会意文字である。




"宋 ": 蒙古のパオを思い出す

  実際に、これは上古の先人民達が木を梁柱にして、架設した地上形の居室である。このような家屋は六千年前に仰韶の時期に既に現われている :家屋を高く地面に出し、柱によって屋根を支える、四周は杭で支え、泥で塗った壁だ。このような木柱によって屋根を支える方式は容易に人々に蒙古のパオを思い出させる。

松の木は先民達の第一選択肢 

  屋根を支えるの木柱には直木を当てる、切り口は荒く、虫が出てこなくて、伐採して使用するのが容易である。黄河の流域では、松の木は先民達の第一選択肢である。実際に、宋と松は同じ音であるから :林では "松 "といい、室については "宋 "という。これも商民族が松木を神木と見なした縁由の一つだ。



現代の漢語の中では、原義は失われ国名に常用されている 

  中夏民族の居室建築の発展に従って、"宋 " の文字の本義もう消えてなくなっている。現代の漢語の中で、 "宋 " は国名に常用され、王朝名、氏名にも使われている。又漢字の字体を指すようにもなっている、即ち宋体あるいは宋の字体を模した字体を指す。

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2012年8月1日水曜日

住まいの漢字 「宅」の起源と由来



「漢字は生活の反映だ」はこのサイトの基本的な概念だ。
それを最もよく現わしているものの一つに、住まいに関する漢字の起源と変化である。1万年前ごろは、氷河期も終わりになり、人間はまだ穴の中に住んでいた。この穴は自然発生的には崖の淵に出来た洞穴だったろう。このことは、日本でも、鍾乳洞に古代人が棲息し、生活を営んでいた土器や矢じりなどが発見されることでも明らかであろう。
 そこで生活する期間が過ぎると、人間は平地に出て群れをなし部落を構成するようになる。初めのうちは非常に原始的な住まいで地面に穴を掘り、穴の上には覆いをかぶせて、雨露をしのいだ時期が長く続いたであろう。
 そして7,8千年前ぐらいになると、その穴も次第に浅くなり、いわゆる住居として外見も整っていくようになる。ここで取り上げる漢字はいわば今日日本の遺跡でも見られる「竪穴式住居」と言われる住居を表現した「宅」という漢字である。


引用 「汉字密码」(P716, 唐汉,学林出版社)

穴から出て新しい建物「宅」への飛躍

 ”宅のzhai”は、元来1個の指事字である。甲骨文の”宅”の字は、まさに屋内に柱を立てることで、即ち”はらい”を1本を増やして、覆い屋根を建てた家を強調している。上古時期は、人々は穴を掘ったのち、最も重要なのは穴中央に柱を立てて、屋根を造ったことである。

「宅」は建築過程の直観的なデッサン

 ”宅”はちょうどこの浅い穴式の建築過程の直観的なデッサンである。金文の”宅”の字は、指示符号の一つのはらいが、いわば横になっていて、建てた橋の梁木の格好になっている、概ねこの時期の建築が既に地面建築に発展し、柱梁一体化になったためである。小篆の”宅”の字はいわば形声字に変化している。《説文》それゆえ”宅“を解釈して、人の居也。ウ冠と発声を表す屯(zhe)からなっている。”楷書”は小篆を受けて、従って”宅”と書く。

「宅」の字の発展過程

 ”宅”の字の発展過程は、華夏民族の建築の様式の発展による。”宅”字に対した分析は、我が国古代の木造建築の源ともいえる。これから、どのように産着の時代から一歩一歩、最終の大きな気勢を体現し、周密な建築構造体系を実現したかを見ることが出来る

 ”宅”は古代に元来”造営”の意味であった。それが後で”名詞化“し、”住所”の意味に取って代わった。現代の漢語中の”家屋敷、住宅、大邸宅”は、全部ここから拡張されたものだ。
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