2012年5月10日木曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「乳」の起源:実に微笑ましい 子供に乳を与える様そのまんま!

漢字の成り立ちの意味するもの:子供に乳を与える様そのまんま!古代人の発想の豊かさと見た儘を表現する素直さ

 この甲骨文字を見て思わず笑ってしまった。「こりゃ、まんまじゃ!」。象形文字ではないか。あえて言えば、情景文字とでも言えようか。たしかに厳密には象形文字とは言えないかも知れない。

 しかしよくできた漢字だなとつくづく感心する。「孕」もすばらしかったがこれも素晴らしい。

乳房を出して子供に母乳を与える。
誰も異存のない描写ではかなろうか
  「乳」これは会意文字である。甲骨文字の「乳」は一人の母親が胸の前に乳頭を出し、両腕で子供におっぱいを吸わせている情景の様である。この為「乳」の本義は乳を与えることである。即ちおっぱいで子供を養うことである。
  小篆の「乳」は字形が調整され、両腕が手に変化している。母親の形状は乳房を表す形になっている。但し乳を与えるという本義に変化はない。楷書の「乳」は小篆の隷書化から来ている。

 「乳」字は哺乳の意味から引き出され乳汁と乳房の両方の意味が出てきた。母乳、練乳は共に乳汁を指す。「胸をはだけて乳を出す」の「乳」は乳房の意味である。又この拡張は乳汁も乳房と同じようなものを指すのに用いられる。乳濁液、鍾乳石などである。また哺乳の対象から引き出され、生れたて、幼少のものを指すこともある。 乳鶏(ひよこ)などという。


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2012年5月7日月曜日

「才」はサイかはたまた衛生帯か:漢字の起源をさぐる


解釈の相違か世界観の相違か?

「才」のイメージ:木の標木に「サイ」を取り付けた
(「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」
小山鉄郎著 新潮文庫より転写)
  
 同じ漢字でも解釈でこうも違うのかと考えさせられるものの一つがこの「才」という字である。白川博士によると「才」は目印の木として立てた標木の上部に横木をつけた十字形の木の部分に、祝詞を入れる「サイ」と呼ばれる箱をつけた字というのである。(イメージは右の図の通り)
 因みにこの「サイ」というのは白川博士の漢字学の根幹をなすもので、多くの解釈では四角形「□」は口(くち)と考えられているが、先生の解釈では、これは口ではなく祝詞を入れる神聖な入れ物「サイ」というものだということである。確かに博士の言うように漢字とはそもそも王の占辞を記録するために作られたものであり、最初から神がかり的なもの、神聖なものであったと考えれば、うなづけるものである。

サイ

この説に基づけば、今から紹介しようとする唐漢氏の説など身震いが出るほどの卑猥な解釈と受け取られるのではなかろうか。



唐漢氏の説
甲骨文字の「才」
 「才」これは象形文字である。甲骨文字の「才」は女性の生殖器の符号である▽の上に一本の長い縦線を付け加え、女性が月経のときに使う衛生帯を表している。


  金文の「才」
 金文の「才」は甲骨文字に似ているが女性の生殖器の符号の「▽」の中が塗りつぶされている。これは金文が青銅器の鋳型を作ることから来る変化であった。小篆の「才」は既に現在の楷書に似ている。
 才の字形は女性の月経時の月経帯から来ている。この種のものは実用的で欠くことが出来ない。また拡大解釈で「有用物」も表わしている。有用物は「才」と表すが如く、役に立たないものは「不才」と称する。女性が「才」を使うと性の発育が成熟したことを言う。この為人の本質的能力にも拡大解釈して、才気、天才などと用いる。「才」は又「材」の字の初めの形である。木材或いは材料は皆ズボンの股の布のように縦長の形状をしている。且つ有用なものになる。よって木に旁の才を増やして木材の材を表す。 
結びにかえて
 いつも言うことであるが、このサイトの目的は学説の真偽を見極めることではない。このような考え方もありうるということを知ることである。
 今の世の中「あり得な~い」という言葉がはやっているが、この世の中60億の人間が住む世界に「あり得ない」という言葉は初めから存在しないのだ。「あり得ない」という言葉そのものに「発想の貧困」が垣間見えてくるのは私がおかしいのだろうか。




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