2012年5月7日月曜日

「才」はサイかはたまた衛生帯か:漢字の起源をさぐる


解釈の相違か世界観の相違か?

「才」のイメージ:木の標木に「サイ」を取り付けた
(「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」
小山鉄郎著 新潮文庫より転写)
  
 同じ漢字でも解釈でこうも違うのかと考えさせられるものの一つがこの「才」という字である。白川博士によると「才」は目印の木として立てた標木の上部に横木をつけた十字形の木の部分に、祝詞を入れる「サイ」と呼ばれる箱をつけた字というのである。(イメージは右の図の通り)
 因みにこの「サイ」というのは白川博士の漢字学の根幹をなすもので、多くの解釈では四角形「□」は口(くち)と考えられているが、先生の解釈では、これは口ではなく祝詞を入れる神聖な入れ物「サイ」というものだということである。確かに博士の言うように漢字とはそもそも王の占辞を記録するために作られたものであり、最初から神がかり的なもの、神聖なものであったと考えれば、うなづけるものである。

サイ

この説に基づけば、今から紹介しようとする唐漢氏の説など身震いが出るほどの卑猥な解釈と受け取られるのではなかろうか。



唐漢氏の説
甲骨文字の「才」
 「才」これは象形文字である。甲骨文字の「才」は女性の生殖器の符号である▽の上に一本の長い縦線を付け加え、女性が月経のときに使う衛生帯を表している。


  金文の「才」
 金文の「才」は甲骨文字に似ているが女性の生殖器の符号の「▽」の中が塗りつぶされている。これは金文が青銅器の鋳型を作ることから来る変化であった。小篆の「才」は既に現在の楷書に似ている。
 才の字形は女性の月経時の月経帯から来ている。この種のものは実用的で欠くことが出来ない。また拡大解釈で「有用物」も表わしている。有用物は「才」と表すが如く、役に立たないものは「不才」と称する。女性が「才」を使うと性の発育が成熟したことを言う。この為人の本質的能力にも拡大解釈して、才気、天才などと用いる。「才」は又「材」の字の初めの形である。木材或いは材料は皆ズボンの股の布のように縦長の形状をしている。且つ有用なものになる。よって木に旁の才を増やして木材の材を表す。 
結びにかえて
 いつも言うことであるが、このサイトの目的は学説の真偽を見極めることではない。このような考え方もありうるということを知ることである。
 今の世の中「あり得な~い」という言葉がはやっているが、この世の中60億の人間が住む世界に「あり得ない」という言葉は初めから存在しないのだ。「あり得ない」という言葉そのものに「発想の貧困」が垣間見えてくるのは私がおかしいのだろうか。




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2012年5月6日日曜日

日本の空を覆う「黒」:その漢字の起源と由来はいかに

漢字[黒]に罪はない
 検察審査会の持ち込んだ裁判で、小沢氏に対し無罪判決が出された。もともと検察側は起訴に否定的であり、裁判には勝てないという判断になっていたにもかかわらず、検察審査会では2度も起訴相当と判断され、裁判に持っていかざるを得なかった。しかしその裁判で無罪判決になった以上速やかに幕引きを図るべきである。それが出来ないのは小沢氏が現時点での消費税増税反対論を掲げていることに対する政治上の懸念と取られても仕方がないことであろう。


世にはびこる「黒」
 私は民主党が前の総選挙で大勝をした時には、小沢氏は自民党のいわば本流の部分であり、民主党は出来るだけ速やかに、小沢氏と決別すべきであると考えていたし、小沢流のやり方にはとても同調出来るものではないと考えていた。 しかしながら、その話と今回の小沢氏を巡る指弾の話とは全く異なるもので、魔女狩りの様に世論を操作し自分の思う方向に持ち込もうとする権力のやり方にはとても賛同できない。権力に阿り、それに手を貸したマスコミも強く非難されるべきと考える。このやり方は戦前の絶対的天皇制の暗黒政治を想起するもので、日本の将来に暗澹たる黒雲を導くものであろう。

 さて本題の「黒」は、昔からあまりいい印象を持たれていない。それはどこから来たのか。甲骨文字の中でどう捉えられているのか分からなかった。知っている方あれば、お教え願いたい。


「黒」の古代文字はやはり黒かった?
 黒これは一種の会意文字である。金文の「黒」の字の上部は黒煙のデッサンである。その中の黒点は煤を表示している。下部は炎の字であり、火で焼いた時黒煙が立ち上る状態を表示している。

 小篆の形は金文に似ていて、楷書の上部で、火が土に変化を言っている。下部の4点は火で、この種の変化は,構成が美しく書くのに便利である為のものである。
黒の本義は黒煙でそこから延長されて、黒色と「白の反対」を示す。

今でも黒色は黒、これでは救いようがない?
 現代漢語中では、黒色はいつも赤色に相対し、黒で反動、悪毒、地下等等一種の比喩の意味で出現している。黒心、黒手党、暗黒統治、黒市などなど。 

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