漢字「影と陰」はどう違うのか。
影と陰は訓読みをするといずれも「かげ」と読む。この違いは、以前にも、本ブログで取り上げたことがあるので、参照いただきたい。
漢字「陰」の成り立ちと由来の意味するもの:陰と陽の弁証法と世界観
ただこの時は「陰と陽」という相反する側面から取り上げた。
今回は「影と陰」といういわば同義語の側面から迫ってみよう。
導入
毎日ことばで、「影と陰」が取り上げられていたので、後付けをしたい。
毎日ことば 第938回 見えるかどうか
「影」と「陰」は目に見えるかどうかで 区別します。
影は「光を遮ってできる黒い 部分」なので目に見えます(影法師など)。
陰は「光が当たらないところ」なので目に見えません。
「経済発展のカゲで犠牲になる」などは見えない「陰」が適切です。
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前書き
目次
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漢字「影と陰」の今
漢字「影と陰」の解体新書
漢字「影と陰」の楷書で、常用漢字です。 漢字「影」は構成要素である字素の「景」と「彡」からなる。 景は説文解字では「光」なりと説明されている。 さらに、詳しく、說文に「光なり」とし、京声とする。光景とは日の光をいう。(周礼、大司徒〕に「日景を正して、 以て地の中を求む」と日景測量のことをいい、地上千里にして日景に一寸の差があるという。 もう一方の「彡」は字統によると、毛髪や彩色・光などを示すもので、象形というよりも、象意というべきものであろう。 〔説文〕九上に「毛飾の畫文なり」とあり、文飾をいう。すべて色彩や形態の美を示し、怒・形・彩・彦・彫・彰・影・修などは その意と説明している。 この二つの字素の会意で、日の光とそこに現る光線でうまく説明され、整合性が良くとれていると思う。 | ||
影・楷書 | 陰・楷書 |
影・小篆 |
影・楷書 |
彡・楷書 |
「影と陰」の漢字データ
- 音読み エイ
- 訓読み かげ
意味
- かげ: 光が物体にさまたげられた部分
- 本物でないもの:人影、影武者
同じ部首を持つ漢字 影、景、杉、形、彫、彩
漢字「影」を持つ熟語 影、撮影、影響、
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漢字「影と陰」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
影
漢字「影」の原字は「景」である。説文にも「影」の字は収められていない。
漢字「影と陰」の字統の解釈
会意 景と彡とに従う。景は影の初文。
のち光や音などを示す彡を加え、影の意に用いる。
〔説文〕 にみえず、〔玉篇〕に至って収めている。諸経籍の影字はもと景であったらしく、〔顏氏家訓、書証〕 に、影字を作るものは晋の葛洪の〔字苑〕にはじま るとする説がみえている。
また、白川博士は字統の中で、影の原字は「景」であるとする、形声 声符は京。說文に「光なり」とし、京声とする。光景とは日の光をいう。(周礼、大司徒〕に「日景を正して、 以て地の中を求む」と日景測量のことをいい、地上 千里にして日景に一寸の差があるという。
漢字「影と陰」の漢字源の解釈
会意兼形声文字 景は「日+音符 京」からなり 日光に照らされて明暗のついた像のこと。影は「彡(模様)+音符 景」で、光によって 明暗の境界がついたこと。特にその暗い部分。
漢字「影と陰」の変遷の史観
文字学上の解釈
古代人たちは、目に見えないものを恐れの対象と認識し、目に見える影は、改めて識別する必要がなかったのかも知れない。このことから考えると、古代人にとっては、目に見えるものがすべてであり、目に見えないものは、自分たちの認識を超えるもので、それが何者であるのか見当もつかなかったのではないだろうか。つまりそこには神の世界というか自分の認識を超えた畏怖すべき領域にしか映らなかったのではなかろうか。
漢字「影」は景と彡からなり、さらに景は「日+音符 京」からなり、 日光に照らされて明暗のついた像のを意味する。影は「彡(模様)+音符 景」で、光によって 明暗の境界がついたこと。特にその暗い部分。
こうして漢字生成の過程を跡付ければ、漢字が実に論理的に構成されていることがわかる。
まとめ
漢字「影と陰」の成立ちから人々の事物の認識の過程を跡付けてみた。もちろんこの仮定は、たわごとにしか過ぎない仮説であるかもしれないが、これが仮設でなくなる日も遠からずあると信じている。「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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