漢字「若」の起源と由来:女が愛する者のために髪を解く様か、神の啓示に無我の境地に入ったのか?
「若」という漢字の解釈は、一人の膝まづいた女性が髪の毛を直しているようだ。その様は女性が恍惚として、自らの髪に手をかけているのでのではないかという認識ではどの学者も一致しているようだ。しかし、なぜ女性がそのような状態にあるかということについては、諸説の解釈に大きな開きがある。- 一つは愛する者のために、受け入れることを承諾した後、髪の結えをぬき解き、頭髪をばらすことである。
- もう一つは、巫女がエクスタシーの状態にあり、手を掲げ、跪いて神託を受けている形である
- さらにもう一つは、しなやかな髪の毛をとく体の柔らかい女性の姿を描いたものという状況の描写をしたもの
そして、この文字の史的変遷を見ると、甲骨文字と金文には多くの異体字が存在する。甲骨文字はどの形も一見髪を振り乱している女性しか表現されていないように見えるが、金文になって初めて、「口」が付け加えられている。これは何を意味しているのか。白川博士の言う通り、神の託宣を入れる「サイ」が加えられ、この女性が巫女で神の託宣を受けるときのエクスタシーを示しているのであろうか。とすればこの漢字の持つ若いという意味はどこから出てくるのか疑問は深まるばかりである。いずれにせよ、漢字にまでしなければならない社会的背景と欲求は何なのか?
このページは以前にアップした以下のコンテンツを加筆・補強したものである。参照されたい。
《漢字「若」の起源と由来:女が髪の毛を解くときを表す》
導入
前書き
目次
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漢字「若」の今
漢字「若」の解体新書
漢字「若」の楷書で、常用漢字です。 | |
若・楷書 |
若・甲骨文字 |
若・金文 |
若・小篆 |
「若」の漢字データ
- 音読み ジャク
- 訓読み わか
意味
- 「わかい」
「草木などが生えてからあまりたっていない(若芽)」
できてからの時間が短い - 多くはないが、少しばかり(若干)
- もしくは(あるいは、または)
- 比喩を示す(~ごとし)
同じ部首を持つ漢字 若、諾、鍩
漢字「若」を持つ熟語 若、若干、若輩、若芽
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漢字「若」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
世俗的解釈
甲骨文字の「若」は象形文字だ。まるで一人の膝まづいた女性が髪の毛を直しているようだ。金文の「若」は甲骨文を引き継いでいる。小篆の「若」の字は、草かんむりと右から出来ている会意文字である。楷書は之によって「若」と書く。
古語の中で「女は己を喜ばせるものの為に受け入れ、士は己を知る者の為に死ぬ」という格言がある。これは女は自分を好いてくれる人の為に装うということだ。しかし女性はどんなときにも、自分を好いてくれる人の為に装うのだろうか。 明らかに男と会うことを承諾した時、このように工夫を凝らして装うものだ。角度を変えていうと、女性はどんな時に頭の上に一杯挿した飾りを抜くのだろうか。明らかにただ愛をかわすために寝る時だけだ。
だから、「若」という字の起源は、承諾した後の髪の結えをぬき解き、頭髪をばらすことである。その本意は「承諾、応諾」ということである。発音は「うんうんはいはい」から来ている。
この解釈は、前回このブログで披露した見解をそのまま再度アップしたものだ。ただ、おそらくこの見解は、一つの意見であることを別として、現在は多くの同意を得るのは困難になってきているだろう。
人々の意見は、当時と大きな変化をしていると考える。難しいのはこの議論が今から数千年前の事象についての議論だから、現代人の感覚がそのまま当てはまる訳はないことである。
漢字「若」の字統の解釈
巫女がエクスタシーの状態にあり、手を掲げ、跪いて神託を受けている形である。
その本義は、神がその祈りに対して承認を与えること、すなわち諾の初文。
ト辞に「王、色を作るに、帝は若 (諾)とせんか」「帝は若とせざるか」、また「帝は 若を降さんか、不若を降さんか」のようにトする例 が多く、「不若」とは帝意が承認を与えない意である。それで「若を降さんか、ㅉ(祐)を愛(授)け んか」のようにいい、若は天の祐助を得ることであり、不若とは凶災をいう。
漢字「若」の漢字源P1314の解釈
象形:しなやかな髪の毛をとく体の柔らかい女性の姿を描いたもの。
のち、くさかんむりのように変形し、また□印を加えて若の字となった。
しなやか、柔らかく従う、遠回しに柔らかく指さす、などの意を表す。
また、この漢字は婉曲表現として「~のごとし」という用法に多く使われており、「如」に通ずる漢字であるとも言われている。
まとめ
甲骨文字と金文には多くの異体字が存在する。甲骨文字はどの形も一見髪を振り乱している女性しか表現されていないように見える。しかし、この字を生んだ社会的背景はなにか。単に情緒的な出来事を伝えるために文字が生まれたとも思えない。金文の解釈に至ると白川博士の説に真実味があるように思うが・・・。「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。
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