2023年8月22日火曜日

漢字「必」の起源は刀の柄にあり? 元々は何を意味していた?太古の人々が何に誓ったのか?


漢字「必」は元々は何を意味していた?太古の人々が何に誓ったのか?

漢字・必は今では必ず・必然という意味に使う。しかし漢字が意味していたものは驚くなかれ・・

  我々の祖先は最初から抽象的に物事を考えたわけではない。その謎を解くカギは、象形文字にある。

 甲骨文字では武器の柄の部分を表す。木に添え木をして補強し、縄や紐で周りをぐるぐる巻きにしたもので、木の棒単体より強度が増し、戈や斧などの柄に用いられた。

 この様にして両側から締め付けられた木は動く余地ががなくなることから、ずれる余地がなく、そうならざるを得ないという意味が引き出されたという。

 武器を手にしたら、必ず・・ という意味が含まれているのだろうか? 深読みのし過ぎ??




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漢字「必」の今

漢字「必」の楷書で、常用漢字です。
 兵器の柲部の形戈や矛・鉞等の頭部を柄に装着する部分を主とする形である。

 「秘」は「必」を初字として作られ。「必」は専ら副詞として用いられる
必・楷書


漢字「必」の解体新書


必・甲骨文字
戈と矛・斧、鉞などの兵器の柄の部分のデッサンです
必・金文
両側に点が加えられ、糸縄の巻き取りと漆の塗装を示します
必・小篆
両辺の点が長く引っ張られ、隷書化の後楷書の「必」の字になりました。


「必」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ヒツ
  • 訓読み   かなら(ず)

意味
     
  • かならず、絶対に      ・・必然、必死
  •  
  • きっと行う、絶対やり遂げる ・・必読
  •  
  • 欠くことができない     ・・、必須事項

同じ部首を持つ漢字     必、柲、泌、秘
漢字「必」を持つ熟語    必要、秘密、必需、必然



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漢字「必」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 甲骨文字の「必」の字は戈と矛・斧、鉞などの兵器の柄の部分のデッサンです。金文は両側に点が加えられ、糸縄の巻き取りと漆の塗装を示します。この時期の武器の精巧な職人技を説明しています。小篆の「必」の字は、両辺の点が長く引っ張られ、隷書化の後楷書の「必」の字になりました。「必」の字の本義は兵器の「柄」です。

 史書によれば、「必」は工芸を表し、作りは十分に複雑な作りで、中は非常にいい、外は5から七辺の細長い竹の皮の包みで、後に麻の糸の糸巻きに用いられた。こうして作られたものは柔軟で強度が非常に高く、兵器の柄の持ち手に用いられた。

 

漢字「必」の字統の解釈

 象形文字。 兵器の柲部の形。戈や矛・鉞等の頭部を柄に装着する部分を主とする形である。
    必の初義には後に、柲という漢字が作られ、「必」はもっぱら副詞に用いられるようになった。



漢字「必」の漢字源の解釈

  象形文字 棒切れを伸ばすため両側から締め付けて当て木をして締め付けた様を描いたもの。 両側から締め付けると動く余地がなくなることからずれる余地がなく、そうならざるを得ない意を含む。柲(弓だめのあて木)の原字。弓だめとは:弓矯め/×檠 弓の弾力を強くするために、弓幹(ゆがら)を曲げてそらせること。また、曲がっている弓の材を、真っすぐに改めること。



漢字「必」の変遷の史観

文字学上の解釈

 漢字「必」の3款を示す。この字が戈や剣の柄の部分を意味していたとは、驚きである。金文の字が創作されてからもいう塚の変遷を経ながらも、文字としての利便性を整えながらも、美しさを供えて仕上げられている様は、ある種の感動すら覚える。



まとめ

  『沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。』は平家物語の冒頭の部分の下りです。今のプーチンを見ているとこの一句が思い浮かばれます。ロシア国民の心の中には、かつてのロシア帝国のノスタルジーが残っているのでしょうか。それにしても罪なノスタルジーです。今の日本にも、このようなノスタルジーが亡霊のように湧き出して、気味が悪い世の中になりつつあるようです。
  


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2023年8月20日日曜日

漢字・囚の成立ち:字の中にそのまま表現されている。囲いの中に閉じ込められた人


漢字・囚の成立ちと起源は甲骨文字にある。象形文字というより、状態を表す


導入

前書き

 いま世界を揺るがしている中東や民族宗教問題の起源は古く「バビロン捕囚」に遡るといっても過言ではないだろう。
 中東はヨーロッパとアジア、アフリカの交差する地点に位置し昔から多くの民族が入り乱れて覇を争ってきた。この事件が起こったのも、中国でいえば春秋戦国時代のころである。

 「バビロン捕囚」とは、ヴィキペディアによると概ね下記のように説明されている。

新バビロニアの王ネブカドネザル2世により、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを初めとしたバビロニア地方へ捕虜として連行され、移住させられた事件を指す。 バビロン幽囚、バビロンの幽囚ともいう。
ユダ王国: c.930 BC-586 BC
イスラエル王国: c.1020 BC-722 BC

アッシリア捕囚: c.740 BC-538 BC
バビロン捕囚: 586 BC-538 BC

目次




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漢字「囚」の今

漢字「囚」の楷書で、常用漢字です。
 囲いの中に人がいる様
□は囲いであったり、地中の穴であったりする。
囚・楷書


漢字「囚」の解体新書


  
囚・甲骨文字
囲いの中に人がいる様
□は囲いであったり、地中の穴であったりする。
囚・金文
甲骨の文字の構造を一貫して受け継いでいる
囚・小篆
甲骨の文字の構造を一貫して受け継いでいるが
文字として洗練はされている


 

「囚」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シュウ
  • 訓読み   とらわれ

意味
  • とらえて、収容所などに入れること(罪人などをとらえて牢などに入れる   例:囚人
  •  
  • 束縛する 
    縛りとらえる、囲いや檻に入れる
    制限を加えて行動の自由を奪うこと
  • 囚われる・・ 何かに拘泥し、抜け出せない状態
  • 捕獲した野獣、生け捕りにした敵(捕虜)

同じ部首を持つ漢字     囲・・原字は圍であり、同じ□でも囚のものとは成り立ちが異なる
漢字「囚」を持つ熟語    囚人、幽囚、虜囚、捕囚、囚禁

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漢字「囚」成立ちと由来

唐漢氏の解釈


 「囚」字は十分形象である。甲骨文「囚」じは構造からみて、これは人を地の中に押し込めたデッサンである。 金文と小篆の囚の字は甲骨文と一致しており、楷書はこの縁を引き継いでいる。

 




漢字「囚」の字統の解釈

 ▢(イ)と人に従う。人が□の中にある形で、拘囚の人をいう。説文に繫ぐなりとあり、虜囚の意。卜文の字形に、井中に人を記すものがあって、字形は囚に近いが、その文例から考えると、棺中に死者のある形で死の初文と思われる字である。死体のまま棺中に収めるものが囚の形で、即ちのちの死の初文である。

漢字「囚」の漢字源の解釈


会意文字:「□+人」で、枠の中に人を閉じ込めること。

まとめ

 象形文字であるが、特に説明の必要性は感じない。ありのままである。身体が実際に拘束されていることを表すが、精神的に拘泥され、抜け出せない状態を示すのにも使う。

  


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