2022年1月27日木曜日

漢字「高」の誕生異聞:高台に建つ高楼か、はたまた佇立する男性のシンボルか


漢字・高は如何に生まれたか? その成り立ちと由来を考える
 漢字「高」は一般的には高台に建つ建物だという説が大勢を占める。確かに象形文字と考えると、確かに高台に建つ高楼と考えるのが常識的だと思われる。しかし、その一方で、セックスシンボルだという考えも古今東西根強く存在する。

 佇立するものを見て、それを男性のシンボルだろうと直感的に思い浮かぶのはごく自然の成り行きだとは思うが、しかしだからといって文字化をする段階にまでそのように考えるのかは別の話だと思う。
 一般的に文字化する段階でセックス・シンボルが話題に上り、文字化しなければならない局面というのは、高台に建つ高楼に比べはるかに少ないと思う、その理由は文字化という一般的な作業の過程では、公共性、汎用性が強く要求されるからで、セックスシンボルがそれほど強い社会的な認識に上っていたとは考えにくのではなかろうか。


漢字「高」の楷書で、常用漢字です。

 唐漢氏はこの高という字について大胆な説を提唱されている。
 それによれば、「高」は会意文字である。甲骨文の「高」の字と「享、吉、舎」の字は相似形である。同じ生活習慣から出ていて、皆男性の生殖器の直感的描写である。甲骨文中には四款の「高」の字がある。基本構造系は、字形の中には舍の字があり、男性の性器が勃起した様子である。下の「内」の字は勃起した時の二つの脚を示している。
 しかし氏の説によると、高い、低いという基本的な概念が出来上がる前に、男性の勃起という認識が先行していたことになり、にわかに信じがたいものである。

 私は唐漢氏の説で、大切なのは、彼がこの漢字のの創生で、中華民族の属性に触れていることである。それは、
「華夏先民はもともと生殖を功績あるものと見た人本主義的な民族でした。これは、食、色を本能本姓と捉え常々誇らしく考える民族でした。」という下りである。

高・楷書


  
高・甲骨文字
高・金文
台地の上に立てた楼閣という象形
高・小篆
字としてより洗練されている。


    


「高」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   たか

意味
     
  • 高い   値段、音程、
  •  
  • 尊ぶ、敬う、偉そうにする(お高くとまっている)
  •  
  • 気品がある 

同じ部首を持つ漢字     
  •  稿 嵩

  • 漢字「高」を持つ熟語    高楼、高等、高慢、高貴、高速、高揚


    引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
    唐漢氏の解釈
     「高」は会意文字である。甲骨文の「高」の字と「享、吉、舎」の字は相似形である。同じ生活習慣から出ていて、皆男性の生殖器の直感的描写である。甲骨文中には四款の「高」の字がある。基本構造系は、字形の中には舍の字があり、男性の性器が勃起した様子である。下の「内」の字は勃起した時の二つの脚を示している。「口」は女性の生殖器である。

     これが本当に古代の祖先が考えたことなのか、疑問が残る。当時の人の考えにしてはできすぎのような気がする。もっと直観敵で直接的ではないだろうか。しかし、本当のところは誰にも分らない。

      ここで唐漢氏は非常に重大な歴史観を示された。
    華夏先民はもともと生殖を功績あるものと見た人本主義的な民族でした。これは、食、色を本能本姓と捉え常々誇らしく考える民族でした。


     氏によれば、華夏先民はもともと生殖を功績あるものと見た人本主義的な民族であったが、儒学が起こった時、人々が性について語ることがはばからるようになった時、会意の本義が失われました。
     つまり、漢族の祖先である華夏民族は生殖を本源的なものと見た人本主義的な民族だった。それが後になって儒学が起こり、性をありのままに捉えないで、性について話をするのが憚られるようになって以降というもの、以前の人本主義的な民族の特性からの乖離が起こり、現在の民族性を喪失するようになったというものです。だからこそ、甲骨文字は中華の古代の先民の属性を残しているはずというのが氏の基本的な考えの様です。



    漢字「引」の漢字源の解釈
     象形:台地に立てた高い建物を画いたもの。


    漢字「高」の字統の解釈
     京の省文と口に従う。亰は凱旋門。戦場の遺棄死体を収めてこれを塗り込んだアーチ状の門。口はサイ、祝禱を収める器の形。そこで祝禱を行うことをいう。
     上部は望楼、楼観の形で享や亭の形と同じくその門闕のところにおいて、祝禱を加え津。門は内外を分かつところであるから、そこで悪邪を祓う候禳の儀礼が行われた。


    まとめ
     会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人等に関しての説明は民俗学的にはさもありなんという感じがしないでもないが、しかし、本当に古代の先民が彼の言うような認識に至っていたであろうか。字統や、漢字源の解釈が素直で、よりうなずけるものを持っているとおもわれてしかたがないのだが・・。



    「漢字考古学の道 漢字の由来と成り立ちから人間社会の歴史を遡る」のホームページに戻ります。

    2022年1月23日日曜日

    古代の「育」の成立ちと由来:子供の出生

    漢字・育の成りたち:母親が子供を産み落とす様子そのまま。漢字・育を逆さまにして見れば良くわかる。
     現代は「育」という字は、育てるという意味がまず頭にくるが、古代の字からの実推察するとまずは生むことが先決であったようだ。確かに古代は人間の寿命というのは恐ろしく短った。したがって、まずは生むことは何よりも優先されたのであろう。、


     漢字の面白さを再認識させられるような「目から鱗」の漢字にぶつかった。


     古代の「育」と「毓」の由来と起源:
    分娩の様子がそのまま字になった。古代人の発想はなんともすごい!
     難しく考えないで、字を単純にひっくり返してみると歴然としている。これぞ「180度の発想の転換」だ




    描写のリアルな点はなんともすごい
    現在では氏名、地名にしか使われない 

     さて、その漢字は今ではほとんど使われないが、古代中国では「育」の異体字として使われていた「毓」という字である。これは中国よみではYu(4)と読むが日本語の音読みでは「イク」である。この甲骨文字たるや自分にとってはある種の衝撃を受けたといってもいいような文字である。
     というのは感覚的に言えば、あまりに露骨、そのまんま。本当に古代人はこのような受け止め方をしていたのだろうか?





    漢字・育の字の変遷:
    甲骨文字_育育の上辺の甲骨文字「子」育の上辺の文字「子」の反転漢字「育」変遷後
    現代ではこの文字が原義を代表している




    漢字・「毓」の字:
     「毓」は「育」の字の異体字となっている。甲骨文字、金文の「毓」(訓:いく、音:ユウ)の字は皆一人の婦人が今まさに出産している状況を描写している。  女の人の下には下を向いた子供の形があり、今まさに嬰児が母体から分娩して来ている様子である。逆さの子供の下の方の小さな点は、分娩時の羊水の流出を表している。
    小篆は金文を受け継ぎ字形構造はほぼ同じであるが、図形の持ち味は消失して、「毎」と「寛」の会意字になっている。ここで何で「寛」なのかは理解できない。は母の髪飾りを指していたことから拡張され年配の女性、盛んなることを表す。

     「毓」の本義は生育である。また出産をも表している。又毓と育は両形とも異型同義語である。此方の字「育」は、子供視点に立っているとも云えないだろうか。

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