2021年5月24日月曜日

漢字「童」の成り立ちの意味するもの:捕虜や受刑者の男で、入墨を入れられたり、眼をつぶされた人をいう


漢字「童」の成り立ちの意味するもの:捕虜や受刑者の男で、入墨を入れられたり、眼をつぶされた人をいう
 「童」は捕虜や受刑者の男で、入墨を入れられたり、眼をつぶされた人を表すのに対し、
 「妾」は捕虜や受刑者や、奴婢の女を表す。


漢字「童」の楷書で、常用漢字です。漢字「童」は、戦いで捕虜となった男の子が、奴婢として入墨を入れられたことを表すもので、「辛と目と東と土」からなる。「辛と目」は目上の入墨。このことから、童は受刑者のことをいう。受刑者は結髪を許されず、結髪しない児童をまた童という。漢字「妾」が女が略奪され、奴婢となったことを表す言葉であるのに対応している。
童・楷書


 
「童」・甲骨文字
辛によって目に何らkの刑罰を受けたことを直截的に表現したもの
「童」・金文
甲骨文字にくらべると、より多くの情報を盛り込もうとした後が見受けられる
「童」・小篆
即・甲骨文字
文字を書くことも考え、シンプルに且つ一目で分かる工夫が施されている


    


「童」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ドウ
  • 訓読み   わらべ

意味
  • 子供、児童、未成年者
  • はげる    ・・・頭髪がなくなる、山に草木がなくなる
  • 奴婢、しもべ(召使い) 
  • 罪によってしもべとなった者。男を童、女を妾(しょう)

同じ部首を持つ漢字     鐘、瞳、撞
漢字「童」を持つ熟語    童謡、童顔、学童、児童、河童、牧童




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「童」これは会意文字である。甲骨文字の童の字は体に刑具を科せられた人である。土を積み上げた上でつま先立ちをして遠くを見ている人である。刑を科せられて子供が故郷を渇望している版刻の図形である。

 金文の「童」の字形は、上部は「辛」で押さえつける刑具である。中間は眼で、奴隷の身分を表している。下部は「束」で土と合わせて重の字である。あるいは「種」のことである。ここでは童子のことを示す。だから「童」、乃至捕まって入墨を入れられた単眼の子供の奴隷のことである。

 





漢字「童」の字統の解釈
 漢字「妾」が女が略奪され、奴婢となったことを表す言葉であるのに対して、漢字「童」は、やはり戦いで捕虜となった男が、奴婢として入墨を入れられたことを表すもので、受刑者は結髪を許されず、結髪しない児童を「童」といったところから、児童の意味に転用された。「妾」に相当する漢字であると説明している。


まとめ
 童にせよ、妾にせよ、娶りにせよ戦争の犠牲になるのはいつも、子供であるし、女性である。3500年前から、あるいはおそらく石器時代から連綿と続いてきたのであろう。人間問うのはいつになったら賢くあるのだろうか。



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女の漢字シリーズ:漢字「娶」の成り立ちの意味するもの。上古には女性は戦利品として取り扱われた名残り

女の漢字シリーズ:漢字「娶」の成り立ちの意味するもの。上古には女性は戦利品として取り扱われた名残り

 この記事は2011年にアップしたものに、加筆・修正を加えたものです。

 漢字「娶」には、太古の昔、単なる戦利品としてしか扱われなかった、略奪された女たちの凄まじい怨嗟のうめき声が聞こえる。

 嫁と娶のいずれの漢字も現代では結婚することを示している。同じ意味ではあるが、一方は女性が他の家にとつぐことをいい、他方は男から見た結婚即ち妻を娶ることをいう。しかし、その成り立ちには、大きな違いがあり、男女の立場の違いが明確に出た漢字である。

   「娶」は嫁をとることです。それとは逆に嫁にいくことは「嫁」ぐという漢字で、表現されます。
 私は、この「嫁をとる」と「嫁に行く」という言葉遣いそのものに、そして「娶」という言葉の中に、既にきわめて男中心主義的な匂いを感じざるを得ません。
 そして漢字自体も、「娶」は「女を取ってくる」で、「嫁」はなんで「女+家」になるのでしょうか?嫁に行くのは、少なくとも家に入ることを示しています。「女を取ってくる」という用語から比べると、はるかに格が上であることは間違いがありません。


 漢字「娶」の楷書で、常用漢字です。この文字は女性にとっては、非常に屈辱的な文字です。
 世の中が、母系制社会から、家父長的な父権制社会に変貌を遂げる中で、作り出された文字で、部族ごとに戦争を繰り返し、氏族の発展のために他を略奪する抗争に明け暮れていた時代です。
 略奪された部族は、奴婢となったり、女性は子供を産むための役割しか与えられませんでした。この文字の原義は、「女を取る(略奪)」することなのです。
娶・楷書


 
昔の戦争では、戦功の一つとして、殺した敵兵の数があった。それの証拠として、敵兵の耳を削ぎ落すというものであった。これは秀吉の朝鮮出兵でも、行われている。漢字「娶」には、その行為が明確に刻み込まれている。  
「娶」・甲骨文字
「耳+又(手)」+「女」
から構成される会意文字です
「娶」・金文
成り立ちは甲骨文字を引き継いでいるが、絵画から文字に進化している
「娶」・楷書
「取」+「女」からなり、甲骨文字よりも概念的には明確になっている





 漢字としては「娶」の方がはるかに古く、殷商の時代には既に作られていたようである。

 唐漢氏の「漢字の暗号」によれば、「娶」という字は、大変古い字で、甲骨文字の時期は会意文字であった。甲骨文字の「娶」の字は女の人の右上方に手が耳をつかんでいる形である。 
 
娶は部族間の戦争で勝者が「戦利品」として
女性を略奪したことの名残り
 上古社会には部族間の戦争は頻繁にあった。双方戦いを終結する時、敵を殺した数字を数えるのに、敵の切り取った左耳の数に基づいた。よって、「取」は敵を殺し、耳を切り取ったの意味である。

 殷商時代の部族の戦士は戦争中の捕虜の女性から戦利品から我がちに奪い取り妻にした。

 小篆の「娶」の字は、「女」と「取」の発声から形声字となり、その意味もまた変化を遂げた。「説文」では娶を嫁を取ると解釈している。ここの「娶」は既に「妻を迎える、嫁を娶る」の意味である 明らかに「娶」の字に内包するものは時代につれ変化した。殷商時期は捕虜の女性を取ってくるという意味に用いられ、両周以降は嫁を取るという意味に逐次変化した。

 一方「嫁」の方は「漢字源」によれば、女性が相手の家に入るということで、女偏に家と書いてとつぐと書くようになった。こちらは氏姓制度が確立し父系制が行き渡って後の話である。

 

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