2021年5月20日木曜日

漢字「威」の成り立ちから見えてきた太古の昔の嫁姑争いの泥沼。嫁姑の闘いは太古の昔から続けられてきて、いつ果てるともない


漢字「威」の成り立ちと由来にみる太古の昔の嫁姑争い
漢字「威」は、「女」+「戉」からなる文字です。ここで「戉」とは、昔の武具で、非常に大きな「斧」のことで、斧の化け物みたいなものです。このことは何を意味するのでしょう。
 太古の昔は、小さな部落単位で生活していました。この様な村落では、出自のはっきりしている、女性の力が大きく、、その集団では、年老いた経験豊かな女性が大きな発言権を持っていたのでしょう。
 そういった女性が、村の武力をも動かす力を持ち得たのではないでしょうか。その実態と反映して生まれたのが「威」という漢字だと思われます。
 このことから、威厳、威風などの言葉が生まれたのでしょう.


漢字「威」の楷書で、常用漢字です。「女」+「戉」からなる文字です。これは、嫁から姑を見ていう言葉のようです。ある意味では、すごい漢字で、太古の嫁にとってみれば、姑はこのように見えたのかも知れません。しかし、よりにもよって、戉や鉾など物騒なものが出て来るとは思いもよりませんでした。
威・楷書


  
威・金文 「威」・小篆
「姑」・楷書


    


「威」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   イ
  • 訓読み   該当なし

意味
  • 近寄りがたい ・・・例 威厳
  • 相手や、辺りを圧する気配 ・・・ 例 威圧、脅威
  • 勢い、力   例・・・権威
  • 人を従わせる力  ・・・ 例 威力


漢字「威」を持つ熟語    威儀、威厳、威風




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「威」 《説文》では、「威」は姑なりとしている。女と戉からなる。金文の「威」の字は「女」の上に鉞型の斧の兵器を加えている。まるで女が鉞を担いでいるかのようだ。

 実際女子はもともと兵器とは関係はなく、ここの女は母親を指す。女と鉞の会意で、母親が嫁にしたしつけ教育である。

 





漢字「威」の字統の解釈
 会意文字:戉と女に従う。「説文」に「鉞と女の会意とし、婦が姑を呼ぶ語即ち威姑の義であるとする。

 しかし、白川氏は「威」は「戈」の下に「妥」を加える形であると解釈する。即ち「威」とはもと聖なる兵器で以て、女子を落ち着かせる儀礼をいう。
 鉾や鉞で邪霊を退ける意味から威厳の義がうまれる。


まとめ
 漢字は現実社会の反映である。嫁から見て姑は、鉞や矛を背負っているように見えたのであろうか。太古の昔、まだ人々が小さな部落で狩猟や採取で生計を立てていたころ、女性の地位は果てしなく高かったのだろう。それがやがて農耕で生計を立てるうち貧富の差が出来て、私有財産が蓄積された。人間の欲望はこの時から広がりはじめ、今では果てしなく膨らんで、欲望の泥沼にはまり込んでしまった。人間は欲望の沼に溺れ込むのかもしれない。



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2021年5月17日月曜日

漢字「達」の成り立ちから何が見る:古代人は「達」から何を表現しようとしたのか


漢字「達」の成り立ちから何が見えるか:広く伸びやかに通りを歩く人を表現することで、物事が広く伝わり、且つ意思の疎通がないことが見える
漢字「達」の成り立ちから見えるもの:古代人の認識の発達は鋭いものがある。なぜこうも闊達に、表現できるのか。誇りに思える。

漢字「達」の楷書で、常用漢字です。会意文字
 人が大通りを闊歩している様
通り+人+足跡から構成されている。

 甲骨から小篆に至る文字の変遷は、概念の抽象化が行われ、、文字として誰でもが同じ認識に到達するような工夫が繰り込まれている。
 特に甲骨から金文に至る過程で「羊」の概念が組み込まれた意味は一考に値する
達・楷書
 


  
「達」・甲骨文字
人が大通りを闊歩している様
通り+人+足跡から構成されている。
「達」・金文
甲骨を引き継いではいあるが、象形の部分が整備され、文字の発達の過程の概念の抽象化が進んでいる
「達」・小篆
金文から更に抽象化が進み、美形となっている


    


「達」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   タツ

意味
  • とおる。道が通じる、とおりぬける。
  • たどり着く  行きつく とどく とどける。
  • 才能がすぐれることをいう  高いレベル達した、すぐれた人
  • 通知、通達  周知に知らせる。 たっし、知らせ
  • 複数の存在を示す  友達

漢字「達」を持つ熟語    到達したという意味    到達、達人、達成、栄達、先達、達筆
              通過、行程を示す      達文、調達、伝達、配達、発達、達見




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「达」は達の簡体字です。甲骨文の達の字はまるで一人の人が大通りに沿って歩いているようです。下部には「止」(足跡)の形で、歩いていく意を表しています。金文の「達」の字は、繁文文字が生まれるときの変化で、右上の大の部分は二つに分かれ、下部の前行の記号は一つに合体しています。
小篆は伝わることによると、楷書ではこの為に「達」と書き、今では簡体化され「达」となっています。

「达」の字の本義は、大通りを闊歩して歩くことを指し、通達を表示し、広く通じる、滞りなく通じることを意味しています。





漢字「達」の字統P577の解釈
 形声 声符は羍。「羍」は羊が子を産む形で、その生む様の脱然として安らかであることを言う。それで凝滞することのない意となり、道路の行き通ることをいう。「説文」にあるのは要するに字の本訓ではない


まとめ
 漢字の世界は本当に奥が深い。単に漢字学の中だけではなく、歴史を感じ、古代人の息遣いを感じるのは素晴らしい



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