2021年5月5日水曜日

漢字・明の成り立ちから、明らかになったもの。 また一つ謎が明かされる!


漢字「明」の成り立ちから、何が明らかになって、明らかでないものは、いつ明らかになるのか
漢字「明」・楷書
漢代の明堂
「字統」より抜粋
 漢字「明」の楷書で、常用漢字です。左は月明かりを取り入れるための窓だという。また右の記号は「月」だという。静かな夜、窓から差し込む月明り。その光景を思い浮かべただけで、なんとロマンチックで情緒的なんだろうとため息がでる。

 漢字「明」の成り立ちから、何が明示され、明らかでないものは、いつ明らかになるのか?
 漢字探索の旅は続きます。人間の限りない「文明の探索のロマンといえましょう。

 漢字「明」は、「日」+「月」と直感的に考えられてきました。今までいろいろの漢字を見てきたが、このような情緒に溢れた漢字は見たことがない、この漢字は、他の生活臭のふんぷんとするものと一線を画するような気がしている。
 このような月明かりがある建物は、それこそ竪穴式所住居というわけではなく、掘っ立て小屋では話になるまい。この字が生まれる背景は、相当に生活が豊かになって(上流階級だけかも知れないが)、庶民の生活とは切り離された生活が出現したのであろう。したがって月を愛でるような風流なことが赦される生活がそこにあると考える。この生活の変化はどこから来たのだろう。興味は尽きない。



  
明・甲骨文字
窓から冴えわたる月が煌々と差し込むさまを示す
「明」・金文
甲骨文字をそのまま引き継いだ漢字
明・小篆
字の構造は甲骨・金文と何ら変わっていない。窓が明示され、字の意図を明確にした


    


「明」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ミン  メイ ミョウ
  • 訓読み   あか(るい) あき(らか) あ(かす) あ(ける)

意味
  • 光があり、眼に良く見える
  • 明確である、はっきりしている
  • 名詞 光 
  • 明確になっていない・隠された・秘密になっていた事柄を秘密ではなくなる状態にする
  • 翌、次の

使い方
  • 動詞    明確にする、はっきりさせる行為・動作
  • 形容詞・副詞   名詞や形容詞・動詞を修飾する 

熟語   明察、明快、明治、明示、明瞭




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「明」は甲骨文の「明」の字は左右が結びついた構造をしている。右辺は月である。まるで湾曲した形で、左辺は窓の象形のデッサンである。両形の会意で、月が窓から差し込んで明るいさまを描いている。


 

漢字「明」の字統の解釈
 会意文字:窓と月とに従う。窓から月光が入り込むの意。そこは神の祀るところであり、神明の意がある。
 《説文》に「照らすなり。月に従い、冏に従う」とし、また古文の一字を録し、明に作る。
 明は元々神明の意である。


まとめ
 「明」が窓+月の会意であるということは、まだ仮説の状態だ。しかし、現在では、傍証を積み重ね、考古学の知見から、仮説が限りなく真実に近い状態になっている。その中には漢字自体の発展を明らかにするだけではなく、人々の生活や習俗、宗教などがどう変わってきたかということも検証されなればならない。
 漢字の起源と由来を求めることは、人間そのものをより正確にとらえるという意味で非常に大切なことと感じている。




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2021年5月4日火曜日

漢字「取」の成り立ちは「耳」と「又(手)」である。「取」に人間の恐ろしい一面が垣間見える


漢字「取」の成り立ちの意味するもの:漢字「取」は「耳」と「又(手)」からなる。漢字「取」に人間の残虐な一面が垣間見える
漢字「取」の楷書で、常用漢字です。漢字「取」は、二つの部分で構成されています。「耳」+「又」(手を意味する)の二つの部分からなる。
昔狩猟時に射止めた獲物は、耳を切り取って、自分の獲物であることを明示したことに始まり、その後、戦争の時、やはりこれにより自分の手柄を主張したといわれています。
取・楷書




  
取・甲骨文字
「取」・金文
取・小篆


    


「取」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シュ
  • 訓読み   と(る)

意味
  • とる・・・自分のものにする、手に入れる、手にとる
  • めとる(嫁を迎える)・・・嫁をとる
  • とる・・・盗む、奪う

同義語
  • 執・・・政権を執る、権力をとる
  • 採・・・昆虫をとる、キノコを採る
  • 撮・・・写真を撮る
  • 捕・・・泥棒を捕る
  • 盗・・・金をとる、盗みとる
  • 獲・・・クジラをとる

熟語   取材、取得、受取、奪取、買取、採取、取扱、取柄、取組、取消、聴取、取締、取調、取次、取引、取分




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「取」は会意文字である。甲骨文、金文共に耳と又(取る)からなっている。まるで手で耳たぶを握りしめているようだ。構造的には十分簡潔です。

《説文》では「取る」は耳と手から捕取すること也としており、元々野獣を狩猟したとき、住居地に持ち帰ったとき、便宜的に野獣の耳をとっておき、又氏族の居住地に帰ったとき自分が確実に捕獲したものだと主張すること、また別の一面では、他人が死んだ獣を見たとき耳がないのをみて、この獣の持ち主がいることが分かれば、再度動かすことができない。
 この種の習俗は戦場で敵の耳をとって功を主張することに使われた。耳の数が多ければ多いほど、倒した敵が多いことの証明になる。《周礼·夏官》では、得た獣の左耳で以て功を計ることも行われました。


 

まとめ
 漢字は平和的なものだけではない。人間の歴史は素晴らしい進歩の歴史がある反面、残虐でおぞましい反面も持っている。漢字はその全てを包み込んで今にある。



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