2021年4月11日日曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「延」 延々と続くまん延防止措置の期間は何時まで延びるのか


漢字の成り立ちと由来:漢字「延」 延延と続くまん延防止措置の期間は何時まで延びるのか
 緊急事態宣言の発令中、具体的な措置が何もなされないまま、解除され、案の定コロナは急拡大、政府は病気の蔓延は政治の問題ではないとどこ吹く風の雰囲気。次にはまん延防止措置の発令をする。これもまた自助が基本にあるだけに、「お願い」の声掛け、そしてやることは見回り隊など監視の強化。
 このままでは、政府は国民を監視することに満を持して待っていたとしか思われない。国民はあきらめと怒りしか残らない。
 このまん延防止措置期間は何時まで延びるのか。期限は一応切られてはいるが、実質的にまん延を防止できる時期は、何時まで延びるのか見通しは立たない。オリンピックの再延長はできない。ワクチン以外にほかに有効な手立ては打てないのか。
漢字「延」の楷書で、常用漢字です。左側は、「廴」で、白川博士によると「廷・建」にあるように儀礼の場所をいう。甲骨文字では、ギョウニンベンのように読め、行進、行くことを意味したものと思われます。右側は「止」の字のようだったようで、歩くという意味を持っています。
 両者の会意で、長く歩くことの意味であったようです。
即・楷書




  
甲骨文字「廴」
墓所に通じる道を表したもの
「止」・甲骨文字 原義は「足」を表し
歩くことの意味に拡張された
「延」・小篆
以上2文字の会意で、長く歩く、長い距離を行進するの意


    


「延」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   エン
  • 訓読み   の(びる) の(ばす)

意味
  • のびる。のばす。引きのばす。ながくなる。おくれる。
  • ひろがる。
  • ひく。ひき入れる。まねく。
  • のべ: 延べ人数


使い方
  • 声符
  • 構成要素  筵、䘰、涎、鋋、誕

熟語   延期、延伸、延滞、延着、延長、延命、遅延、蔓延 




引用:「汉字密码」(P400、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「延」は会意文字です。左側は道路の意味で「ギョウニンベン」で、右辺は前進を意味する記号です。両者の会意で歩いて前進することです。
金文は甲骨を引き継ぎ、構造は同じです。小篆は変化の過程で分化し「処」と延の2字に分化しました。その中の延の中の「止まる」が増加し、正の字になりました。歩いていく行程が長いことを示しています



漢字「延」の漢字源の解釈
会意文字:「止(あし)+廴(ひく)+ノ印(のばす)」で、長く引き伸ばして進むこと。「筵」(長く延ばすむしろ)などと同系


まとめ
 甲骨文字まで遡ってみると、現在使われている字形からは想像も出来ないことが浮かび上がってきます。文字に秘められた、コンセプトが時代とともに移り変わり、発展していくことに興味は尽きません。

「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年4月8日木曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「娄」は凛と高く結った女の髪形が誇らしげに佇立することに由来する。旧字は「婁」


漢字の成り立ちと由来から見えて来るもの:漢字「娄」は誇り高く結った女の髪形に由来する。旧字は「娄」
 「楼」は楼蘭や高楼などのようにある種の品格を持った響きを聞く者に与えます。それは単に漢字の持つ響きだけではなしに、漢字から受けるイメージが、周りの景色に染まってしまうことなく凛とそびえたつ風景を思い起こさせることからくるのかも知れません。

 このことは漢字「娄」そのものが、凛と高く結った女の髪形が誇らしげに佇立することを表していることに由来する。
「婁」は、漢字「娄」の原字で、高く結い上げた女性の髪形を表している。説文では「空」を表すとする。
 漢字「楼」は「木」+「娄」で、旁の「娄」の原字は「婁」で、女性が高く結った髪の形を表している。このことから「楼」は背の高い建物や建造物を表すようになった。
婁・繁体字娄・簡体字楼・楷書




  
婁_甲骨文字婁・小篆娄・簡体字
甲骨文字>小篆>簡体文字へ
人間の認識と共にどう変化するか見えて面白い
 


    


「娄」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ロウ
  • 訓読み   常用漢字の適用はなし

意味
  • 高い建物
  • 城郭などで、高い場所   賓客などもてなした

使い方
  •  たかどの(高くつくった建物) (例:高楼)
  • 「やぐら(城門や城壁の上につくった一段高い建物)」、「物見やぐら」
  • 「料理屋」「茶屋」 旅人などにお茶やお菓子を出して休息させる店
  • 「遊女屋(女を抱えて、客を遊ばせる家)」

要素を構成する漢字   瘻、 樓、 摟、
  

「楼」を含む熟語   玉楼、鼓楼、紅楼、高楼、鐘楼、水楼、妓楼




引用:「汉字密码」(P501、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 説文は娄を空なりとしている、母と中女に従う。ことから婁空の意味だとしている。このことは、女性が一人の女の子を出生し、腹の上の妊娠紋すでに至るところにあり、しかし男の子を出産できなかった、いわゆる「空」の「情景」だ。

 


漢字「婁」の漢字源の解釈
 会意文字である。「母+中 +女」で、母も女も女性であって、女性を捉えて、数珠つなぎにして引っ張る様である。


漢字「婁」の字統の解釈
 女の髪を高く巻き上げて重ねた形。 高く重ねる、すかすなどの意がある。 「節分」に「空なり 母に従い、中女に従う。 婁空の意なり」とするが、どうして婁空の象となるかを説くことがない。婁空とは、髪を巻き重ねて、軽くすかしている意である。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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