2019年10月16日水曜日

漢字「只」の旧字「隻」は「隹(鳥の意)+又(手の意)」の会意文字


漢字「隻(只)」の起源と由来


 現代中国は、隻の簡体字として「只」が使われている。しかし、これは「只」という本来の意味で使われたものではない。古文でも助詞として使われているが、「只」には、もともとの字の意味になるものが見つかっていない。



「字統」の解釈
 「「□」と八に従う。□はサイでで祝いの言葉を収める器、八は神気に象るものであろう」としている。
 説文では「「語已む時の詞なり」とあり、詩句の終助詞に用いられている。白川博士は、これは仮借であろうとしているが、原義と考えられる使い方がないが「神の楽しむさまを言う語であったろうと結論付けている。

「只」の繁体字「隻」

 「只」の繁体字。「隻」の原義は、鳥一羽の意味。「二つで一組になったものの片割れ」をいい、「双」と対を成す言葉。

 「隻」の甲骨文字は実によくできた文字で、見ていて面白くもあり、笑いを禁じえない。飛び立とうとする鳥一羽を手で捕まえている様がよくわかる。本当に、これで、「只一つ」という意味を表現したのであろうか。古代人の豊かな表現力に恐れ入る。

 漢字文化の中で、単位量詞になりうる鳥類の文字に「只(隻)」と「双」がある。図に示す通り、甲骨文字、金文、小篆共にみな手を用いて一羽の鳥を捕まえている意味である。「只」の本義は説文では「鸟一枚也。」と解釈している。(説文の時代は鳥を「一枚。二枚」と数えていたのか)即ち一只の意味である。

 後に拡張されて、単と双の相対する言葉になった。「孤身只影」の中の「只」(ここでは一つということか)の字である。




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2019年10月9日水曜日

漢字の成り立ちから見えて来るもの:熱とはあぶり焼けるように感じるのは熱という


漢字・熱 の成り立ちは現代に何と伝えるのか:トーチを持つとき感じるのは「熱」、気温の高いのを感じるのは「暑」
 古代中国でオリンピックはなかっただろうが、何かの儀式でトーチの受け渡しや神への捧げものとして、聖なる火が受け継がれただろうし、奉納もされただろう。それは古代文字・甲骨文字の中に埋め込まれていた。古代の人々はトーチに掲げる聖火から受ける熱を「熱い」と感じ、漢字「熱」の中に記録していた。

 甲骨文字では、熱の意味は一目瞭然
熱 の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 トーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。

 一方これに対し「暑」について、字統では、説文を引用し、『形声文字:声符は者(シャ)。説文に「熱きなり」とあって暑熱をいう。』としている。
熱・甲骨文字


 


引用:「汉字密码」(P451、唐汉著,学林出版社)

   「热」は「熱」の簡略化された言葉です。 甲骨文字の「熱」という言葉は、まるで人が燃盛るトーチを手に持っているよう見えます。小篆の「熱」の言葉は、火と執るの音からなり、会文字と形声文字になっています。楷書はこの関係から、「熱」と書かれており、簡略化されて「热」になっています。

 「熱」の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 《诗•大雅•桑柔》:"谁能执热,逝不以理?"にあるように、ここでの执热の意味はトーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。焙煎と発熱の意味があります。

 説文はこれを解釈し熱は温なりとしています。殷商人の甲骨文字に"杞侯热,弗其祸风有病の記載の、「杞侯热」は即ち発熱を言います。即ち体温が高いことを意味し、「祸风有病」とは、即ち傷風は疾病を重くすることをいいます。この記録は、人間の風邪の最も古い記録かもしれません。


漢字源の解釈
  形声文字。園芸の古字(人が座って植物を上育てる意味)から音を借りてきて作ったのが「熱」の字で、「火が燃えて熱いこと」をいう。唐漢氏とほぼ同様の解釈を取る。



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