2019年4月5日金曜日

水前寺さんの「365歩のマーチ」の「歩」の長さは?

長さの単位としての「歩」
 今では「一歩」というと、純粋に歩幅を表現しているようだが、日本でも中国でも「一歩」というのは、「左右の歩を進めた長さ」のことをいう。

 昔から歌や格言に使われてきた「歩」が具体的に、何センチのことを言うのか、考えたことがおありだろうか?
 日本と中国では少し定義が異なり、約 1.818m(日本)、 約 1.667 m(中国)であったということだそうだ。


365歩とは具体的にはどのくらいの長さ?
甲骨文字「歩」
 今から50年前水前寺清子さんの「365歩のマーチ」という歌がヒットした。あれから50年も経つのかと思うと年月の流れるのは早いものだと思う。しかし、50年も経った割には世の中は365歩どころか、一歩も進んでいないように見える。最近では、戦前に帰れだとか、100年前に引き戻そうという動きさえ見える。
私たち日本人は、この辛い戦争を経験し、一体何を学んだのだろう。
 逆にロシアの革命家のレーニンの著書に「一歩前進二歩後退」というのがある。この本の通り言えば、大正デモクラシーから、100年。この100年の間に100歩も後退したことになる。

 この「「歩」というのは、概念的な歩みのことで、現実の物理的な「歩」を指すわけではないが、「千里の道も一歩から」という言葉もあるので、少し歌でいけばどのくらい進んでいなければならないのか、少し考えてみよう。




塵も積もれば
 歌詞に拠れば365歩は1年で歩くことになるので、365歩 X 50年 = 18250歩 進んでいなければならない計算だ。
 さて、この一歩は、日本では長さの単位としては、1.818mで、中国の清の時代まで使われた尺貫法で言う1.667mとは少し異なるが、ともかく365 X 1.818 X 50 = 33,178.5m という勘定になる。即ち、33Kmも進んでいるはずということになる。
 これを多いと見るか少ないと見るか、いろいろあろうが、日本の全ての国民がこれだけ進むということは、やはり凄い数字である。
 あくまで比喩の話ではあるが、ちりも積もれば山となる、千歩の道も一歩からを具体的に見れば、大変な数字である。   因みに、ヴィキペディアによると、この長さの単位としての「歩」は以下の通り。

歩(ぶ)
系    尺貫法
量    長さ
SI    約 1.818 m(日本)、 約 1.667 m(中国)
定義  6尺(日本) 、 5尺(中国) 
由来   左右の歩を進めた長さ




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2019年4月1日月曜日

漢字学から『新元号「令和」が本当に意味するもの』を考える

新元号「令和」の由来と起源
 新元号が今日(2019年4月1日)の閣議で決定発表された。
   出展は万葉集ということだそうで、これでの元号は基本的に漢籍から取られたものだそうだが、そういう意味からもこの新しい元号は、これまでとは一線を画するものかも知れない。
 しかし、この新元号の解釈を如何にしようとも、漢字の解釈から引き出される意味は、「命令に和すること」以外はないようである。


漢字「令」の成り立ち
 漢字「令」の甲骨文字の上部の三角形は、許慎は上古の時代青銅楽器の外形の輪郭と考えた。即ち、鈴、鏡、の一種。下部は左を向いて跪いている男の人である。両形の会意で命令を発することを表示する。古典の典籍では、「古きもの将に新令あるときは木鋒を奮い上げ大衆に警告をする。木鋒は木の舌であり、文事には木鋒、武事には金鋒を奮う。
   「金文は基本的には甲骨文の形態を受け継いでいる。小篆の下の部の人の形はいくらか変化し、楷書の形態は即ち根本的には鈴の字の人の形は見られない。其の実、令の字は別の角度からの解釈が合理的なのかも知れない。
 大腿のマタを広げ佇立する男性の眼前に一人の跪いた人がある様がまさに「令」の源である。
 この意味からまた拡張して「~させる」という意味が出る。

 因みに、藤堂明保編「漢字源」による解釈では以下のようである。


「△印(おおいの下に集めることを示す)+人のひざまづく姿」で、人々を集めて、神や君主の宣告を伝えるさまを表す。

漢字「和」の成り立ち
 次に「和」の解釈であるが、「説文解字」や「字統」「漢字源」などで、様々解釈をされている。何はともあれ、甲骨文字と小篆、楷書をそのまま提示しておきたい。ただ「和」という漢字は古代は異なる別々の由来を持っているという解釈が優勢なようだ。

左の図の上段の解釈
 中国語の解説書には、「禾」は「もともと甲骨文字では「」という文字であった。この意味するものは、楽器であったようだ。
 ところが、金文、小篆、隷書と変化するうちに「」の左の旁が「口」に変化し、更に旁と偏が左右位置が変わり、現在使用している「和」となった。
「説文解字」では「龢」は調べなりとしている。

上図の下段の解釈
 そして "说文解字•口部"咊"の意味は「相応する」という意味。偏「口」と発音は禾声。"指と口は対応して、本来の意味は、音楽のハーモニーを意味する。音と声が一致して、歌手または伴奏が調和していることを指す。発音はHeと読む。


関連記事 1.「漢字「令」の成立ちを「甲骨文字」に探る

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