2019年4月1日月曜日

漢字学から『新元号「令和」が本当に意味するもの』を考える

新元号「令和」の由来と起源
 新元号が今日(2019年4月1日)の閣議で決定発表された。
   出展は万葉集ということだそうで、これでの元号は基本的に漢籍から取られたものだそうだが、そういう意味からもこの新しい元号は、これまでとは一線を画するものかも知れない。
 しかし、この新元号の解釈を如何にしようとも、漢字の解釈から引き出される意味は、「命令に和すること」以外はないようである。


漢字「令」の成り立ち
 漢字「令」の甲骨文字の上部の三角形は、許慎は上古の時代青銅楽器の外形の輪郭と考えた。即ち、鈴、鏡、の一種。下部は左を向いて跪いている男の人である。両形の会意で命令を発することを表示する。古典の典籍では、「古きもの将に新令あるときは木鋒を奮い上げ大衆に警告をする。木鋒は木の舌であり、文事には木鋒、武事には金鋒を奮う。
   「金文は基本的には甲骨文の形態を受け継いでいる。小篆の下の部の人の形はいくらか変化し、楷書の形態は即ち根本的には鈴の字の人の形は見られない。其の実、令の字は別の角度からの解釈が合理的なのかも知れない。
 大腿のマタを広げ佇立する男性の眼前に一人の跪いた人がある様がまさに「令」の源である。
 この意味からまた拡張して「~させる」という意味が出る。

 因みに、藤堂明保編「漢字源」による解釈では以下のようである。


「△印(おおいの下に集めることを示す)+人のひざまづく姿」で、人々を集めて、神や君主の宣告を伝えるさまを表す。

漢字「和」の成り立ち
 次に「和」の解釈であるが、「説文解字」や「字統」「漢字源」などで、様々解釈をされている。何はともあれ、甲骨文字と小篆、楷書をそのまま提示しておきたい。ただ「和」という漢字は古代は異なる別々の由来を持っているという解釈が優勢なようだ。

左の図の上段の解釈
 中国語の解説書には、「禾」は「もともと甲骨文字では「」という文字であった。この意味するものは、楽器であったようだ。
 ところが、金文、小篆、隷書と変化するうちに「」の左の旁が「口」に変化し、更に旁と偏が左右位置が変わり、現在使用している「和」となった。
「説文解字」では「龢」は調べなりとしている。

上図の下段の解釈
 そして "说文解字•口部"咊"の意味は「相応する」という意味。偏「口」と発音は禾声。"指と口は対応して、本来の意味は、音楽のハーモニーを意味する。音と声が一致して、歌手または伴奏が調和していることを指す。発音はHeと読む。


関連記事 1.「漢字「令」の成立ちを「甲骨文字」に探る

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2019年3月12日火曜日

漢字「医」は矢傷を治す外科医療の意味であった。内科医療の概念は後世になってから


漢字「医」は矢傷を治す外科医療の意味であった
 「医」の漢字の成り立ちは外科から始まり内科へと発達した。これは漢字から明確に跡付けられる。後世になって、薬効を用いたと考えられ、「酒」の字が加えられ、内科治療が「医」の分野に加わったのだろう。

 この発展の仕方は、実際の医術の発達に追随したものと考えられる。つまり最初は、矢などの外科的な治療を治すことがまず第一優先だったろう。

引用:「汉字密码」(P450、唐汉著,学林出版社)
「医」の字の成り立ち」
 「医」は「醫」"の簡体字で、金文の" 医"で、外構えは"匚"で、篭を表している。内側の左側は矢の形であり、右側は"攴"です。 2つの形を合わせて、鍼治療で病気を治療することを意味している。金文の他の字は左の外側は「人」の形で、内側の「矢」、「攴」は分割して、右に移動し、針を刺して治療する意味を明確に示している。
 小篆の「医」という言葉は、その下部に「酉」を追加していますこれは酒を意味し、付け加えられた酉は酒の効能が病気の治療に使用できるためです。


古くから医療に酒が使われた
 小篆では下部に「酉」が追加されています。これは酒を意味しており、「酉」を付け加えて、酒の効能が病気の治療に使用したことを示している。《史记•扁鹊仓公列传》では、病が「胃腸にあるときは、酒と濁り酒の及ぶところなり。」この意味するところは、病が内臓にあるときは、酒が薬物としての効能を発揮すると言うことです。

 このため、楷書では「醫」と書き、画数が多いので、簡略化すると偏と旁を取り「医」と書かれています。


現代の中国語での「医」の使い方
 現代中国語では、「医」は名詞や動詞にも用い、あるときには医者のことを言ったりします。



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