2016年12月26日月曜日

漢字「入」の成立ちを「甲骨文字」に探る:矢頭を形に表した


漢字「入」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P569、唐汉著,学林出版社)


 「入」は象形文字である。甲骨文字と金文の「入」の字は、矢の頭の刃の形をしている。小篆と楷書はこの一脈を受け継いでいる。「入」は頭が鋭いもので、竹の先のようなものの端の頭。但しさらに形は矢の先みたいに、とがった頭のため容易に物体に差し込まれるものである。このため「入」の字の本義は進入である。 説文の解釈は「入、内」である。「出」とは相反している。
 現代漢文中で踏襲されてきている「入场、入冬、入会、由浅入深」などの言葉で、「由浅入深」の意味は拡張されていて、「出すために、入るを量る」という意味だ。また「合乎」(合致する、かなう)の意味にも拡張されている。
 唐代の詩人の朱庆余の《近试上张水部》:「妆罢低声问夫婿 , 画眉深浅入时无。」の中の「入时」の考えは時に合致するの意味を含んでいるようで、その一つの様式で、「入情入理」(情理を尽くす)などがある。


 因みに「漢字源」(藤堂明保、学研)によれば、この「入」は「指示語、象形文字のいずれにも考えられる。中に突っ込んでいく様を表現したものとある。 」
 唐漢氏の説は、少し飛躍があるように思う。何故、矢の先なのか分からない。甲骨文字からは藤堂氏の案が素直で分かり易い。しかし、これが漢字学なのだろう。



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2016年12月24日土曜日

漢字「矢」の成立ちを「甲骨文字」に探る:鏃、矢竹、羽、括まで含めた象形字。


漢字「矢」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P568、唐汉著,学林出版社)

 我々日本人には「矢」という名称が一般的だし、なじみも深い。しかし、ここに引用した解説では、中国では「矢」という名称より「箭」という名称が一般的であるかのような説明がある。実際のところどうなのだろう。もう少し当たってみるが、今日のところはこの説明を一先ず受け入れて、究明は少しの間ペンディングとしておきたい。


出典「汉字密码」、学林出版社
 「矢」は即ち日常的にいうところの「箭」である。弾を射る弓を弾弓という。弓と此れをいる矢は併称して弓矢という。甲骨文字と金文の「矢」の字は上端は鋭利な箭頭で、中間は箭杆、下端は鳥の羽を結わえた箭尾である。矢の字は即ち「箭」の象形字である。小篆は下部の先の羽がいわば変化して、二股になった。楷書はこの関係からついに象形の意味を失っている。
 矢は「镞、杆、羽、括」の4つの部分の構成品から矢の前端で刃のある三角形の殺傷作用を持つ。商代には既に銅製の鏃が盛んになっていた。但し大量の骨、角、石も使われていた。矢のさおの部分は竹が主で、矢竹が製作に多用されていた。矢の尾の部分の矢の羽は飛行状態を安定させる作用を持っている。屋の羽は大鷲の首の部分がよく、鷹の羽はその次で、鴨や梟の羽は次の次だ。雁やガチョウの矢は風があると斜めに蛇行し、質がよくない。矢の底部のくくりの部分は弦を結んで用い、商代には矢の底部に多くはノッチを入れていた。
 矢の字は古代では誓うという意味に用いられた。この事は古代に約束をする時、矢折って互いに攻撃をしない意思を示したことと関係があるかもしれない。
 《左传》の中に「杀而埋之马矢」の中の「马矢」の一語は、「馬屎」のことだ。「馬矢」と「馬屎」とは矢と屎は同音であることによる。古人は文章中に「屎」の語があると品を落とすので「矢」を使ったようだ。この用字法は文字学上「避俗性的同音假借」と呼ばれる。
 「矢」の字は部首字で、漢字中「矢」が組成上あると、大概「箭」と関係がある。


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