2013年2月7日木曜日

黄砂を表す漢字「霾」(つちふる):黄砂は雨や雪と同じように天から降ってくるものと古代人は考えた

漢字の成り立ちの意味するもの
漢字の成り立ちと由来:漢字「霾」は雨カンムリとお供えとから構成され、黄砂も雨と同じように天から降ってくるものと考えた。

」はすこぶる難しい漢字である。これを読める人はそうざらにいるものではない。これは日本語読みでは「つちふる」と読んで黄砂を表す。なぜ突然こんなことを言い出したかというと今日の毎日新聞の「余禄」というコラムでこの漢字のことが触れられていた。これは春の季語である。毎年春になると中国大陸で発生した黄砂が海を渡って日本の上空にやってくるのに加えて、日本で発生した汚染物質が入り混じって襲来し空を黄色に染める。従って西日本では特に春先になると晴れているのだが、霞がかかったような状態になる。しかもこの霞黄色い色をしている。いわゆる花曇りとは少し異なった趣を示す。
 私は中国にいたとき「黄河」のほとりを尋ねたことがある。黄河の砂浜に足をつけたことがあるが、この砂はすこぶる小さくて、砂というより殆ど泥だなと感じたことがある。またある時は、中国で街中を歩いていたとき、突然天気が変動し、大粒の雨が降ってきたことがある。この雨日本のように透明ではなく、泥の雨だったことを覚えている。雨が降った後、自分の服を見ると雨滴の跡に泥がひっついて大変汚らしい感じを持ったことがある。そこらあたりの車も同様で、窓も屋根も泥だらけだったのを覚えている。
 ところがこの黄砂が日本にやってくる過程で、色々の汚染物質を付着してくるので、非常に厄介なことになる。

 今年の黄砂は、「PM2・5」という車の排気ガスなどから出る微小粒子物質が付着したもので、健康にも非常に害のあるものだということである。日本に飛散してくる前に、中国でも深刻な被害を及ぼしているということなので、中国自身で解決してほしいものである。これは日本人のたっての願いだが、やはり自分の身は自分で守れ!といことで、マスクをかけて欲しい。マスクは高機能のものが出ているが、中でも光触媒を使ったもの等が開発されている。


 公害防止の鉄則は「できるだけ根元から断て」である。飛散や拡散してしまってからでは、遅いのである。
 さて今日はこの「」の起源を尋ねたい。
引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

漢字「霾(つちふる)」甲骨、小篆
漢字の成り立ち
 「」は、説文で言うには「風雨土」である。これは、中国の北方地方特有の一種の現象である。風雨の中に混じった大量の土埃であり、雨で下に落ちたり、砂嵐や汚れた雨になって下に落ちる。甲骨文字の「」の字は上部は雨の簡単形で、下部は獣といくつかの小点からなっている。これは土埃の雨で動物の体に出来た汚い汚点を示している。
 小篆の「霾」は、変化して形声字になっている。

 形声字。 雨と発声字。狸は「埋める」という意味の初めの字である。もともとはお祭りの時動物を穴の中に埋めたことを示している。ここで土の点は 「落ちた」という意味である。
 「霾」の本義は大風が土埃を巻き上げることを示している。雨で落下する天候の現象である。「终风且霾」の意味は、「大きな音を立ててやってきた大風は土埃が混じっているものだ。」という意味である。
 「霾」は中国の一種の特有の気象現象である。遠く数億年前から、シベリアから吹き込んでくる黄土は、中国北方の黄土高原を形成した。甲骨卜辞に記載のあった3千数百年前、安陽の地区の砂嵐が記載されている。ここ数年新聞メディアでは砂嵐の出現の頻度は毎号頻々としている。これは地球環境の悪化のためか、あるいは周期の歴史の回帰性なのか、まだ人を悩ませている。
 実はこの唐漢さんの説明には、非常に違和感を感じるのである。唐漢さんの本は2000年の初めに書かれているので、彼が書かれた頃には勿論「PM2・5」という問題は発生していなかったであろうが、しかし黄砂の問題、酸性雨の問題は既に大きな問題になっていたはずであろう。しかし彼は黄砂を単なる「黄土の砂問題」として、矮小化してしまっている所に違和感を感じるのである。彼は「ここ数年新聞メディアでは」と今日的な問題を取り上げている限り、この「霾」が単なる黄砂の問題ではなくなっていることの問題提起をして欲しかったと感じるのは私一人だろうか。


雨カンムリの甲骨文字
要素「雨」を持つ漢字を集めて見ました。左から「雨」、「雪」、「雹」です。雨カンムリが共通して表示察れていますが、漢字の中でそれぞれどのように表現されているか見ることができます。これらの漢字のなかで共通して表現されているのは、雨足、雪の切片などが小さな点として書かれています。したがって、「霾」の甲骨文字の中の小さな点は、唐漢氏が言うようにお供えにできた土の汚れではなく、天から降ってくるものを表現したように思います。
漢字「雨」甲骨文字:雨に関わる基本文字漢字「雪」_甲骨文字漢字「雹」甲骨文字




 

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2013年1月30日水曜日

漢字「法」の成り立ちと由来



 ""の繁体字は"水+廌(鹿と馬に似た珍獣)+去”を合わせて書く。漢字源よると「池の中の島に廌を押し込め外に出られないようにした様」を表しているということで、伝説上の動物の名前で、悪者に触れてその非を糺すという性質があると信じられている。
 今日はこの「法」について、もう少し深く解説したい。 

引用 「汉字密码」(P894 唐汉,学林出版社)

「説文」の解釈
  「説文解字」はこの字を解釈して、廌を解き放すことだとした。牛に似て、角が一本で、古代の人は訴訟を決定し、正直でないものに触れて、その非を正す性質があるとされた。
   許慎が見るところによれば(多くの古人も含め)「廌+去」の字の造りの意味は、歴史的伝説から出ている。

「法」の字にまつわる伝説

 春秋の時期、斉の庄公はある壬里の臣下が、中里の臣子を相手取って訴訟を起こした。罪状が判断付きにくかったために、斉の庄公は直ちに「を、即ち神獣獬豸を呼んで彼ら二人の訴状を読ませた。 結果里国の訴状を読み終わっても獬豸はなんら動きを表示せず、一方、中里の訴状の半分も読み終わらぬうち、獬豸は角で彼を翻した。こうして斉の庄公は壬里国の勝訴の判決を下した。
 かくして、この種の角で罪があるかないかを断じる方法が、漢字「サンズイ+廌+去」の字の構造の中に割り込ませることになった。漢の法官の冠にはこの神獣の角を形どった物が使われていたということである。

金文の「法」の字の生れた由来

 実際上、金文中の法の字は古代の現実の生活の中から来ている。右辺は一頭の水牛の象形で、左辺の上部は「大」(人を表す)+口(地の穴)の構成の「去」の字である。下部は即ち水の象形の描写である。三つの形の会意は、人が水牛の水中遊泳の方法を見習うことが出来ることを示している。あるものは水牛ではなくいわゆる神獣であると説く。いずれにせよ、小篆の法の字は金文を承継しているが、ただ書の法の字は廌の形を省いて、「法」と書く。

「法」の字の本義

 法の本義は「真似る・模倣」することである。「商君の書・更法」の如く、「治世不一道,便国不必法古。」 この事は国家を治めるには一つの道だけではない。ただ国家に有利にするには、必ずしも古きを模倣することではないという意味である。法は模倣の意味。また拡張され、「手段・方法」を表す。また更に拡張され、「見本。標準」の意味にも用いられる。 
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