2012年9月19日水曜日

親という漢字の起源と由来



 親と子の関係はずいぶん薄くなった。昔は親は子供を育てるだけで、いわばその関係はゆるぎないものだあったが、今では「親は無くとも子は育つ」とか言われ、親の力はなくなって来た。それだけ世の中が複雑になっていたのであろう。

 しかしここで展開される説は少し逆説的すぎるようにも思うが・・。  
引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

 金文の「親」の字は会意形声文字である。左側は「辛」という字で捕虜の刑具である。右側は眼を表している。図形全体では会意の方式で首の上に架せられた刑具を表し、眼で極めて近い距離にあることを示している。小篆では、変化していく過程で、「辛」の下に木の字を加えることで「木」出来た刑具であることを強調している。楷書ではこの関係から「親」となり、簡単字化で半分が無くなっている。

 親の本義は近くに張り付いていて、中途半端な距離ではなく、極めて近い距離にあることを示している。孟子の「男女授受不亲 , 礼也。」(男女の間では直接、物をやり取りしないのが礼儀だ)男女の間では媒酌を経ずして婚姻を結ぶことで、相互に近く接触することはすべきでない。現代漢語の中では本人が手を動かして、中間に他人を入れることがないのは「親、親自、親手、親信」などという。

 近から親は、また関係を指す。感情の近いこと親密なることをいう。名詞が出来て、血縁があること、或いは感情の親密な人は「双親、舅、表親、親戚」等。特に婚礼の時、元来疎遠な人と一緒に契りを結ぶことを「結親、親事」等という。「親家」の中の親は発音はqinといい、良家の娘息子が夫婦関係の後親戚となることを言う。

 「辛」は刑具である。首の上にかけ、捕虜であることを示し、奴隷の命運の始まりを意味する。また異国の地にあっては「举目无亲」(全く身寄りがいない)ことは凄惨な生活の始まりである。古人は眼と刑具で距離感を表し、哲学的な響きでもって、あなたの自由になるものか、あなたの近いものかを限定した。
 
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2012年9月7日金曜日

柵という漢字の起源と由来



柵という漢字はある意味では原始的な漢字である。それは見ただけでは、進化というものを殆どしていないように思う。字というものはその時代につれ、文化の進展につれて、進歩していくものである。なぜ進化したか、なぜ進化しないか、それはそれで、研究に値するものだろうと思う。


引用 「汉字密码」(唐汉,学林出版社)

 柵は象形文字である。甲骨文字、金文字の柵の字は等しく上古時代の柵の欄で、垣根のデッサン絵である。図がよく似ているので、周時代は古文字の中で「柵」は木簡柵(文字を書く柵)に借用された。即ち、串で一緒にされた字を書くための竹の木簡である。

 区分を明確にするため小篆では木偏が付け加えられ、専ら柵の欄の意味に用いられている。そして会意形声字となった。楷書ではこの関係から「柵」と書かれる。説文ではかたい木を編んだもの。木と冊から冊の音とする。

 木や竹を用いて編んで垣根とする。古代では物を押しとどめるために多用された。商周の時代の青銅器多くの柵の図形がある絵が書かれていた。図1の如く豚を飼う為で、二つの目が看守の人がいることを示している。二つ目(図2) 柵の中には牛と樹木がある。3つ目の図3は柵の下に4把の木鋤があり、柵で囲んだ土地の上の工作物を表している。

 《後漢書・段颖传》の中には千人の人を遣わして柵を作った。広さ20歩、長さ40里。これは古人が柵を用いて辺境を明示した文献の記載である。
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