2012年8月26日日曜日

漢字「呉」の起源と由来:覇者となった孫権の舞台、大言をするの意

 日本では、呉越同舟などで聞かれる以外、あまり聞かれなくなった。呉越の戦いに係る成語としては、この他に「臥薪嘗胆」などがある。


 現在の紹興にその遺跡はあるが、その地に立てば、「兵どもが夢のあと」の様に時空を超越したものではなく、未だに地の底から這い上がってくる怨念の様なものを感じてしまった。越王と言う人はそれだけ執念深かったのかも知れない。


 写真は紹興酒の故里の紹興にある越王殿である。又上の写真はこの越王殿に行く道の城壁に彫られたもので、いたるところにこの成語があふれているという感じであった。この標語は近年に彫られたものであろうが、この山からは何かオーラを感じてしまう。
この時代が紀元前7世紀の春秋時代と言うから、やはり中国の歴史の凄みを感じざるを得ない。













呉go
引用 「汉字密码」(P374, 唐汉,学林出版社)
  「呉」は会意文字である。甲骨文字の「呉」の字は、頭を傾けた形であり、まさに大口を開けて話している形状で、金文は口が旁で頭を傾けている意味が更に明確である。小篆は金文を受け継ぎ、楷書では呉と書く、簡体字では「口に天」と書く。他人に対して頭を傾け、一顧するに値しない気持ちがあって、大口を開けて話する、反駁を表示する。だから「説文」では「呉」は大言なりとしている。また地名・国名を仮借している。
 呉国は本来周代の諸侯国を指すのだが、以降もっぱら三国志の呉国(現在の長江中流と東南海一帯を指す。また中国人の姓氏の一つである。
「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2012年8月18日土曜日

「宣」 漢字の起源と由来


 「家・居室」を現す漢字が、社会の仕組みが発展するにつれ、単なる居室ということではなく社会的機能を表すようになってくる。この「宣」という漢字などは、完全に「王の宣旨をする部屋」というある意味、殆ど単一の機能に用いられている。
引用 「汉字密码」(P719, 唐汉,学林出版社)


"xuan " は会意文字だ。甲骨文の "宣 " 字は、上部は家屋の外形"∩ "を表し、内里は回転を示す記号である。二つの形の会意で、これが人が屋内走り回れる一種の大きい部屋と認められる。

  金文の "宣 "は、外枠と甲文は似ていて、ただ中は回転の記号が美観上対称になっているにすぎない。大いに巻いている様子と、その下はまた一つの点が加わり、家室前の足場も示しているようだ。またここから入っていく意味を表している可能性もある。

 小篆の "宣"の文字はこれから来て、楷書それ故に"宣 "と書く 。


 "宣 " 、《説文》では "天子が宣旨をする部屋と解釈している。ウ冠と「亘」の読みから出来ている。"宣“の本義は大きな部屋である。そこから引き出されて、王の居住する宮室を指す。《淮南子・本経訓》に記載されている "武王は武装した兵士三千を率いて、纣王を野に破り、宣室でこれを殺した。"ここの "宣室"、は纣王が居住する宫室の意味である。

 宣の "大きい家"の意味から、また引き出されて "大げさである"の義も出てくる。例えば《詩・小雅・鸿雁》では:"维あの愚か者は、大げさなことを言う。"ここの "宣骄 "は、"驕慢で驕った"という意味である。

 高くて大きな家の室内は当然明るいし風通しもいい。だからそこから引き出されて、"順調だ" の意味も出てくる。晃错の《賢良対策を上げる》のように:"政で明らかにしなければ、民は安寧ではおれない。" またさらに引き出されて「拡大して、発表して、伝わり広まらせる」の意味にも用いる。 "宣揚、宣旨、宣誓"など。この意味はさらに拡張され公開、明らかにするの意味にもなる。例えば "心に照らして宣せず、洩らして広める" など。
「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。