2012年4月15日日曜日

「省」という漢字の起源と由来


 日本で「省」といわれて最初に思いつくのが、「文科省」「財務省」「外務省」などの国の仕組みのことである。
 最近では、官僚の専横独断が鼻に付き、こういった官僚の仕組みに対する不信感も増幅されており、嘆かわしいことである。
 中国語では、省という字は二つの読み方があり、それに伴い二つの異なる意味を持っている。いわば同音異義語である。

「省」:よく見る、察、省く、古代王宮の禁止区域
一つはShengと読み、省く、省略する、「○○省」の省(日本の県に当たる)であり、もう一つはXingとよみ、内省する、反省する、悟るの意味である。
そこで、甲骨文字に戻ってこの文字の由来を探ってみよう。

この文字は会意文字である。甲骨文字では、眼の上に三画を付け加えて、目に差し込む光を左右から観察している形である。金文は甲骨文字を引き継ぎ、形は相似である。小篆では金文の第2項目の下辺の眼の形が転じて「目」に変化している。すぐ上の点は長く引き伸ばされ湾曲している。楷書では「省」と書かれるようになった。

 「省」の本義は細かく見て、じろじろ観察するということである(審査するように見る)。また前に過ぎ去ったことを省みるという意味でもある。
 《論語》では「一日三回わが身を省みろ」と語られている。もともとは審視するという意味から派生して、探望や挨拶をさすようになった。覚悟、知る、悟るなども派生的な意味である。

また減少の意味あり。このことから節省(節約)、倹約等の言葉が派生した。

省は古代にあっては王宮の禁止区域のことである。「篇海類編」の解釈では省とは禁署なりとある。男が入ることが禁じられた省のこと即ち、言いかえればこの中には査察ができない妾の場所のことで、これによって、これが中書省や尚書省などの官署の名称となった。
 ところで白川博士の説はこの唐漢氏の説と異なり、目の上に付いた枝の様なものは「呪力をますために眉に付けた飾り」のことを言い、呪力をますために飾りをつけて、地方を巡察して取り締まり、見回ることが「省」だというのだ。そして見回った後取り去るべきものは取り去るので省くという意味も出てきたとのこと。ここでも白川博士が卜辞や呪術を重視していることがよくわかる。

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2012年4月12日木曜日

中国人に最も好まれる木「桃」の起源と由来

桃は中国では、日本の桜の様に人々に好まれ文人にも愛され、多くの作品や故事来歴に登場している。

桃の木の「兆」は卜辞の際、亀の甲に
レや卜が現れ、兆の字に似ていること
から造られたという説


桃は「木」と「兆」から出来ている。今から3400年前殷代の人々は亀の甲を利用して吉凶を占っていた。灼熱で焼いた亀の甲羅に裂け目が卜やレのいろいろの形をなし、かつ左右に裂け開く文様の形は「兆」の字の様である。従って、桃は「桃」と書くようになったゆえんである。また桃の実が熟し左右に裂ける時、裂けた桃の表面は卜卦の様な文様を呈することからも「桃」と言われるようになったこともありうる。これは桃の実は手で分けることが出来るのも一つ理由かもしれない。

しかしここで「兆」の字の起源と由来がはっきりしていないので、少し説得力に欠けるきらいがある。

桃は果物の名前である。また木の名前でもある。桃の木は落葉樹で高木である。高さは約1丈(3メートル強)余りで春に開花し、花は多く、紅色の花は愛らしくあでやかで艶めかしく、白い花は清楚で優雅である。
桃はもともと中国の文人が好むものであるので、桃を主題とした詩文歌には枚挙のいとまがない。
「桃源郷」や「桃園の契り」など故事にも事欠かない。

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