2016年12月20日火曜日

漢字「命」の成立ちを「甲骨文字」に探る:命と令は同源同字。命の本義は口を用いて命令を発すること


漢字「命」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P650、唐汉著,学林出版社)


 令と命は同源同字である。甲骨文字の上部は男の露出した生殖器だ。下部は膝づいた人だ。この命の字は令の字と相同と見ることが出来る。金文の左下には一個の「口」を加えて、膝づいて臣服していることを表しているばかりか、さらに口を用いて命令を発布していることを表している。小篆の形は金文の直接変化を受けて、楷書では命と書く。


 命の本義は口を用いて命令を発することで、即ち上級から下級への指示の発布である。
 上古の統治者は下属のものに命令を命と同じに見ることを要求した。だから命の字は拡張して、生命または性名となった。『论语•雍也』の中の記載に顔淵は「不幸短命死矣」(不幸にして短命で死んでしまった)とある。
 古人は社会的治安の乱れ、興衰と個人の禍福・失敗や成功は天意の按配と考えた。このことからまた天命、命運という言葉がある。『论语•颜渊』の中の「死生有命,富贵在天」(生死は運命、尊さは天にあり)と。

 「命」「令」の言葉は皆「させる」という意味を持っている。但し少しの差異はある。「命」は専ら上級から下級に下達する命令に用いるのに対し、「令」一般的な意味の上での「使役」(させる)という意味である。動詞を作り「令」は目的語を伴わない時がある。『论语•子路』の如く、「其身正,不令而行;其身不正,虽令不从」(その身正しければ、令せずして行わせ、その身正しくなければ、よしんば令をしても従わせられない)


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