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2020年8月28日金曜日

漢字「印」:人を力で押さえつけ仰臥させる行為を「印」という


印:人を力で押さえつけ仰臥させる行為
 われわれ日本人にとって、印と聞いて、まず頭に浮かぶのは、対馬で発見された金印であろう。
 漢委奴国王印は、日本で出土した純金製の王印(金印)である。国宝に指定されている。

 金95%、銀4.5%、重量108.73gの金印は、金が1グラム7320円から換算すると、79万2千円となるが、歴史的な価値は値段がつかない。




引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「印」という言葉は、会意文字です。甲骨文の左上には大きな手があり、右には左に向いた小さな人が跪いている人、つまり手が小さな人圧服している形です。

 金文は更に明らかになって、上面の大きな手が下の人を押し下げ腰と背中を90度曲げざるを得ないようにしている。したがって、「印」という単語は「抑」という単語の元の文字です(「印」と「抑」の古代の音も通じています)。

 小篆の上部が手(爪)となり、人(下部)は人の形「卩」(セツと読む)に変じます。

 楷書は将に手(爪)を左に、人は右に受けて「印」と書きます。



印の本義は、また如何に使われたか
 「印」という言葉は「按」です。 「押す」の按から派生して人々は押さえつけられるものを「印」と呼びました。

 秦王朝以前は「印」は皆「璽」と呼ばれていましたが、秦始皇帝は「皇帝」の「印」のみを「璽」(xI)と呼ぶことができ、官民が使用する図章を「印」と呼びました。

 それ以来、漢代には「印章」という名前が登場し、「印章」が印刷に拡張されました。また痕跡を表示して「脚印、熔印」などもといいます。図章と印主を照合すること、また長く符合することを「心心 相印」などの言葉で言います



字統の解釈
 印という字について 手を以て人を抑え 仰臥させる意味である説文には 爪と卩とに従って、卩を押捺する意と解している。しかし卩は仰臥する人の形である。

 抑える人よりいえば抑、臥する人より言えば その臥するものに手を加えるのは印、印と抑とは頭音が同じく双声の語である。




結び
 刻印、印刷、印象のいずれの「印」も押さえつけるという意味を含んでいる。



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2012年5月30日水曜日

日本の国名「倭」と「委」:漢字の起源と由来


以前に紹介した司馬遼太郎さんと陳舜臣さんの対談本「中国を考える」の中で、二人が「日本」と言う国名について語っている。そこに面白い話があったので触れてみたい。

聖徳太子が遣隋使に託した国書の波紋

 聖徳太子が中国の隋の国王に送った国書で「日出る国の天子が日没する国の天子に送る」という文言を聞いて隋の帝が烈火のごとく怒ったということが通説になっている。
 しかし隋の帝が生意気だと怒ったのは「日出る・・」ということではなく、「倭」として言ったから、失礼だと怒ったのではないかという説があり、司馬氏もそのように思うと言っている。中国の帝国の国名は秦、漢、隋などのように全て一字である。それなのに蕃国の日本が倭という一字で言ったので「失礼なやっちゃ」となったらしい。

国名「日本」の始まり

 それ以降日本は中国に配慮して「日本」と改めたということである。昔は中国の周辺の蕃国は2文字の国名で呼ばれるのが普通だったらしい。



漢の光武帝の金印

1784年福岡市で発見される。後漢の光武帝が下賜した
ものと考えられている。上段の中央が小篆の「委」の字
 さてそれ以前は魏志倭人伝の中で金印を魏の国王から賜っている。ここには「漢の委の奴の国王」と記されており、「倭」ではなく「委」という漢字が使われており、倭のほうが通りやすかったのだろうが・・。また「倭」であるか「委」であるかはそれほど重要なことではなかったらしいが、いずれにせよ「倭」が通称として、使われている。 


「委」と「倭」の起源と由来

  「委」は会意文字である。甲骨文字は「女」と「禾」の二つの象形文字の組み合わせである。左辺は「女」で、右辺は「禾」である。小篆の形は甲骨文字と同様であるが、字形の構造上「禾」の位置が上に来て、「女」が下に来ている。これは現在の楷書の構造と同じである。

穀物が成熟した時穀物の穂は枝葉の上に垂れさがるように湾曲する。この為「委」には曲がるという意味がある。男子と比較すると相対的に女子の体と気力は弱く、古人は禾偏を女に加えて、女性が相手の意思に従うことを表したものだ。委従、委順の言葉の中の委の字は委細、従順の意味である。
「委」は「矮」の中で使われ、小さいという意味を表す。「倭人」も小さい人という意味で、ある意味で蔑称だったかもしれない。

「委」の漢字あれこれ

  • 委の字は隷属、委託を表すのにも用いられる。
  • 捨て失くすの意味から、回避するの意味が出てくる。委過、委罪の様に過ちや罪を回避する。
  • 委の字は多くの読みと意味がある。Weiと読むときの他、委蛇は山の中の道や川が曲がりくねることを表している。

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