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2021年9月22日水曜日

漢字「寛」の成り立ち:廟の中で巫女が緩歌漫舞する様を表す。緩やか、寛容の意味が生まれた。今こそ求められる寛容の精神


漢字「寛」の成り立ち:廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。このことから、物理的な広さではなく人の気象・態度についていう語
 近年特に感じるのは、人々の寛容さがなくなって来ているのではないかということである。
 それは特にネットの上で顕著に現れている気がする。ネットに現れた片言隻語に対し、すぐに攻撃する、相手を叩き潰すということが日常茶飯事である。それほど重要なことでもない、いわば物事の枝葉末節に部分においてすらその非を全く認めない議論が横行している。そこまで言わなくてもと思うのだが、どうにも規制が効かないようだ。なぜ人はこうも完全なものを求めるのだろうか。攻撃する本人は人にそれほど完全なものを求めるほどに完全なのであろうか。社会はまだそれほど成熟していないということなのか。今から2500年ほど前の中国で諸子百家が活躍していた時代と人間は何ら成長していない気がしてならない。

 寛の使い方は、寛容、寛大などに見られるように、物理的な空間の広さではなく、人間の心象、態度についていう言葉ばかりである。物理的な空間の広さを表す「広」とは、使い方に於いてはっきりと区別ができる。


漢字「寛」の楷書で、常用漢字です。
説文では、「寛」は家が寛大なり」すなわち、部屋の広い壁、面積が大きいことといっています。このことから一般的な意味の上で広々として広大とを示し、狭いとの対比を示しています。拡張して、心が広い、ゆったりとしているという意味を持つようになりました。
 この解釈は説文によるところであるが、白川氏は全く逆に人の気象・態度についていう意味がこの語の基本であると主張している。
寛・楷書


  
寛・金文
廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。
寛・小篆
金文を引き継いでいる


    


「寛」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カン
  • 訓読み   ひろ(い)

意味
     
  • ひろい  家などが広い
          心がゆったりしてゆとりがある
          他人の意見をよく受け入れる気持ちを持っている」 例:寛大
          ゆるやか(例:寛刑)
          のびやか(心が穏やかで生き生きしている)
       
  •  
  • 動詞  ゆるめる
  •  
  • 動詞  ゆったりする、くつろぐ

同じ部首を持つ漢字     寛、莧
漢字「寛」を持つ熟語    寛大、寛容



引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「寛」は会意文字です 。 古文の漢字は 居室の中の内という意味です 突出した二つの目と眉毛の人間が書かれ、これでもって人の孤独に返って部屋が広く大きいことを示し、強調しています。
  小篆の寛の字は金文を受け継ぎ、ただ一つ眼と眉毛が一個の首の字に代わっていますが、下辺の人の形は儿の字になって、一人の文字の形成文字を形成しています 。

 



漢字「寛」の漢字源の解釈
 中が丸くゆとりがあって、自由に動ける大きい家


漢字「寛」の字統の解釈(P127)
 会意文字。旧字は寛に作り、宀と莧とに従う。宀は廟、莧は眉に呪飾を加えた巫女。寛は説文に「屋、寛大なり」とするが、廟中の巫女が緩歌漫舞して祈る様をいう。
 その気象は寛緩、ゆえに寛大、寛容などの義が生まれる。家の大きさをいう字ではなく、すべて人の気象・態度についていう語である。

まとめ
 人々は古代は寛容で、寛大であった。いつから狭窄で攻撃的になったのか。古代は為政者は他を攻撃し自らの勢力を維持していたようだが、庶民は宗教が違っても、同じ社会に生きている限り、実に寛容に相互に認め合って生きていたことが文献の中でも伺える。人間は失った寛容を取り戻すことなしに、決して明るい未来は築き得ない。



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2021年4月24日土曜日

漢字「広」の成り立ちと由来が意味するもの:「広」は昔、「廣」と書いた。「廣」の成長を跡付ける


漢字の成り立ちと由来から何が分かる
漢字「廣」の成り立ちと由来が意味するもの:「広」は昔、「廣」と書いた。「広」の成長を跡付ける。古代の建築技術の発展が読み込まれている?
・・・漢字「廣」は甲骨文字から金文への過程で、大屋の壁がないものに表現されている。つまり、壁がなくても柱だけで大きな屋根を支える事が出来るようになったと考えられる。それは、長屋のような建物の中にオリンピック・スタジアムを作るような驚愕の出来事ではなかったろうか。

 もちろん文字の変化だけで結論付けるにことはできないが、将来遺跡の発掘などでこの裏付けが為されるのでは、期待している。


漢字「広」の楷書で、常用漢字です。第2款は「広」の旧字体です。
新字体になってからは、漢字が生まれてからずっと継承されてきた漢字「廣」の持つ意味合いが薄まれてしまってはいますが、時代の流れであり仕方がないことです。広く漢字が使われていくためには、喜ばしいことかもしれません。

 同じような意味を持つ漢字に「弘」があります。弓を引くときに両手を大きく広げることから、「広い」という意味を持つようになったのかも知れません。
広・楷書、簡体字廣・楷書、繁体字 




  
「廣」甲骨文字
殿の大屋の中で火矢の形が表示されている。
「廣」・金文
殿の大屋が广(まだれ)に変って、大きく解放された様子に変化している
建築の技術が発展し、壁のない大屋が出現し、文字でも大きさ・広さを強調しようとしたのだろうか
「廣」・小篆
文字としての体裁を整え、且つ概念も抽象化により明確にしようとしたのだろうか


    


「広」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   ひろ、ひろ(い)、ひろ(まる)、ひろ(がる)

意味
  • 「ひろい」 形容詞的用法
     大きい空間、場所    例:広大な平原
     間隔に余裕がある、   例:広い道路
     大きい範囲に行き渡っている 例:広い知識
     他人の意見をよく取り入れ、思いやりがある 例:度量が広い
  •  ひろげる  動詞的用法
      空間・幅・範囲を大きくする。ひろめる。ひろくする。    (例:道を広げる)
      範囲を大きくする。ひろめる。ひろくする。
       例:商売を広げる、広告
      包んだり畳んだりしてある物や閉じてある物などを開く。 (例:荷物を広げる)
      たくさんのものを辺りいっぱいに並べ置く (例:店を広げる‥比喩)
      
  •  大きな屋根があり、四方の壁のない建物
  •  直径・さしわたし  円または球面上の端から端までの距離」
  •  中国の広東省の略称(ナンバープレートに表示されている)

使い方  黃、磺、橫、廣
熟語   広域、広義、、広告、広範、広報、広場、、末広 、幅広




引用:「汉字密码」(P741、唐汉著,学林出版社)
漢字「広」の字統の解釈
 旧字は「廣」で、黄声。「説文」に殿の大屋なり」とあり、四方の壁のない建物をいう。引伸して広大の意とする。
 

 




 
「黄」・甲骨文字
漢字の成り立ちは、「广(まだれ)」+「黄」
广(まだれ):広、府、庁など。建物に関する漢字に使われる

漢字「黄」の字統の解釈
因みに字統では「黄」について、下記の説明をしている。
 「甲骨の形は火矢の形に見え、金文の字形は佩玉の衡のようである。甲骨文の字は矢の鏃の部分が大きく描かれ、易書に言う黄矢の徴で、黄とはその火光をいう字であるとある。


唐漢氏の解釈
 「広」は「廣」の簡体字です。甲骨文の「廣」の字は会意文字です。上部は屋室の形であり、下の「黄」は母親が産み落とした皮膚の黄色の多くの子供を指している。したがって、「多い」という意味を持っている。

 私はこの解釈に全く同意できない。交通の発達した現代ならいざ知らず、太古の昔に自分たちが、「黄色人種」と認識できたであろうか。黒人や白人など色々まじりあって初めて、自分の肌は黒いの白いの黄色いのと自覚できるのであって、人種もまじりあっていたようには思えない時代に、人は肌の色が黄色なんてことは認識できていなかったはずだ。つまり、人間の認識が客観的になるには、もう少し時間が必要だったように思うのだが・・。


まとめ
 漢字「広」は旧字は「廣」といった。「廣」が古代の社会で自らの姿を変えた背景には、その時代の建設技術の発展があったのではないか?



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