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2022年2月5日土曜日

漢字「仁」:儒教の根本思想。それは今や中国文化の土壌となった。これからも中国の行く末にいかなる力を及ぼすのか


漢字「仁」:儒教の根本思想。それは今や中国文化の土壌となった。中国共産党は、共産主義から逸脱しつつある。果たして科学的社会主義たる共産主義の流れに回帰できるのか
 儒教の根本思想。中国共産党もその桎梏から逃れられずに共産主義の本流とは違う流れに流されつつある。 以前にこのブログで「仁」を取り上げたとき、これが、『儒教の根底をなす思想に「仁」という言葉がある。儒教は基本的に君子論である、』と言ったが、この考え方に今も変わりはない。そして、2000年を経て、今日『思想的に変節をして、今では生き残れるはずはない』と述べたが、この考えは、誤りであったと認識している。
 そればかりか、中国のみならず、韓国、日本で、人々の思想的土壌となって息づいて、今日でも東アジアの人々の考えの根底に脈々と流れていることを認めざるを得ない。

例えば、「仁」をいう語を使った成語に、『志士仁人』というのがある。この心は、「仁を害することを以て生を求めることなく、仁をなすことを以て身を殺すことあり」というものであるが、このような滅私奉公的な考えは、中国人、朝鮮人、日本人の中に色濃く残っている。近年においても中国の体制の中でも、しばしば、革命運動を推進する人々の革命的な精神を称賛するものとして繰り返されてきている。

 人間の在り方を規定する言葉
 西欧における『個』、中国における『仁』が、中国の革命運動と、西欧の革命運動の違いを特徴づける点だと考える。またこのことは革命運動のみならず、中国の文化の原点みたいなところでもあり、とにもかくにも中国文化は自己埋没的な文化ではないだろうか。そして、このことは中国だけではなく、朝鮮、日本の文化の特徴であるとも言えるのではなかろうか。
 このことから導き出せるもう一つの結論として、中国の共産主義というのは、共産主義を標榜しているにもかかわらず、いわゆる『共産主義』とはずいぶん違う性格を持っているような気がする。

 ここで最も重要な結論になるが、中国革命の大きな使命とは、「中国革命の中での人民の開放とは、西欧的意味での『個人の開放』、『自由の実現』というものではなく、人民の開放とは個人ではなく、あくまでも共同体に重点を置いたものであり、個人は共同体に帰属することを通してしか自由を実現できない、そこにしか真の解放はないと考えられているのだ。

中国共産党は自らの使命を全うできるのか
 しかし、本当にそれでいいのか? 中国人民を中国共同体に押し込めることで、本当の意味での人間性の開放に導けるのか。中国は今後もますます発展するだろう。やがて資本や私的所有からも解放される時代が来るであろう。その時においても、共同体に固執できるのであろうか。

異なる人間性の解放の概念が交わること或いは融合することは可能なのか
人間性の在り方に以上みてきたように違いが存在することは、結局二つの価値観が融合することはなく、相手を互いに認め合うことが難しいように感じる。しかし、ヘレニズム文化の中で、価値観の異なるものが存在することを発見し、それを認めうることによること以外に人間が存続することはできないことが分かってくるだろうと思うし、きっとわかるに違いないと信じる。


漢字「仁」の楷書そで、常用漢字です。
 上部は「千」で、人の足の下に横線がある。下部は心の象形文字である。両形の会意で、仁の字は千個の心眼であり、或いは千種の思索の聡明な人である。
即・楷書


  
仁・古文
仁には心という字が明示されている
仁・金文
古文と金文の間に何があったのか
仁・小篆
文字化の過程で簡素化されている


    


「仁」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ニン・ジン・レン
  • 訓読み   に、ひと

意味
     
  • 「いつくしみ(かわいがって大事にする事)」、「いつくしむ」(例:仁愛) 
  •  
  • なさけ  
     思いやり  
     かわいそうに思う心 
  •  
  • ひと  人格が備わり、わきまえており、教養もある人、
    人の心

漢字「仁」を持つ熟語    仁愛、仁義、仁術




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 仁は孔子の儒学的核心の概念で、許慎は『説文』の中にあるように、「仁」は古文と小篆の2つの款があり、最初の仁の字は会意文字で、上部は「千」で、人の足の下に横線がある。下部は心の象形文字である。両形の会意で、仁の字は千個の心眼であり、或いは千種の思索の聡明な人である。

 別の1款の「仁」の字は甲骨文字の仁とよく似ており、右の上部は人の象形のデッサンである。その左下の部分は即ち古文の「上」の字である。両形の会意で仁と人を表す。即ち上層階級の人の意味である。

 楷書は隷書への変化の中で「仁」となった。仁の本義は心眼が多くある、深く思索し頭を働かす人の上に立つ人の上等な人で、小人、下民に相対的な上人、大人を指します。

 この文字が儒教の核心的な文字となったということから見ても、儒教がよく言われるように体制的、保守的な宗教であるのにはそれなりの理由となりそうです。

 


漢字「仁」の字統の解釈
 人と二とに従う。《説文》に「親なり」と親愛の義とする。儒家が人の最高の徳とするもので、『孟子、尽心』に「仁は人なり、仁と人は声義相同じとする。


まとめ
 儒教の根幹をなす思想。封建社会の中の「上人」(古代帝王)たちが備えている徳行のことをいう。
「仁」及び「上人」は彼らは自分を国を治め、民を治め、文化を治める士大夫と自ら任じ、まさに自分を人類の精華とみなしている。儒教のこの考えが長きにわたって、東アジアの人々の価値観として染みつき、上に立つ人は、教養も備え立ち居振る舞いも優雅であるはずだとされてきたが、現実と思い込みの乖離から、上に立つものは、そのことだけで、賓こううぉ旺盛でありえないことが認識されるようになった。

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2012年6月22日金曜日

中国人と儒教の根幹「仁」の起源と由来


中国人の儒教意識 

司馬遼太郎氏とドナルド・キーン氏の対談本「日本人と日本文化」の中で、「日本人のモラル」について語り合った個所で、司馬氏は中国人の儒教意識について、「中国人の場合は、・・・非常に感心するのは、彼らは日本のいかなる儒者よりも儒教的である。そう思うのは、つまり信というものをひじょうに尊びますね。裏切らないです。」と述べている。

現実の受け止め

 しかし、私の感想は少し異なる。私の短い中国滞在と旅行の期間、実に残念だが、正直言って裏切られ通しであった。司馬氏は「彼ら(中国人)は、頼むのは同胞だとか・・・友人だとか横の関係である。」と言っている。司馬氏がこの経験をしてから、既に20年も経っていることもあり、司馬氏は著名な作家ということもあり、司馬氏の様に重く受け止められていないのかも知れないが、私には残念な結果である。
それに儒教は基本的に君子論である、君子の庶民支配の方法論を述べたものであり、解放後の中国で生き続けられるはずがないと思う。しかも中国人はこの20年の間に高度成長を経験し、改革開放路線の下で市場経済論理がまかり通っている中では、司馬氏の言うように儒教的な思考が今なお生き続いているのか少し疑問である。

儒教の根幹「仁」

 さてその儒教の根底をなす思想に「仁」という言葉がある。儒教が生まれたのは、BC6世紀ごろで、甲骨文字が生まれたのはBC15世紀ごろなので、両者の間には千年の開きがあるので、甲骨文字で、儒教の思想を語ることは論理的に無理がある。しかし、当時の社会の中で、人と人の関係をどうとらえていたかの一面を知る上では一つの材料となる。

「仁」の由来

 両形は会意文字である。仁は他でもなく、千個の心眼を持っている或いは千種の考えの聡明な人を表している。「仁」の本義はそれだけ心眼の多く、考えること密で、因みに心を砕くもの人を治む優れた人を示している。それだけ小人、下等な人に対して、上人、大人を示している。古人はこれを称して君子という。孔子は仁者と呼ぶ。
 「上流社会の出身の人で権力があり、権勢のあるものは下人を指揮することが出来るものの、すべてが「仁者」というわけではない。」彼らはまだ須らく一種の品徳を備えている。即ち「仁者人を愛す」の品行は「成仁」となりうる。冷酷で薄情で恩が少ない人、巧みな話しぶりと人当たりの良さでへつらう輩は心を砕いても「仁者」ではない。 

仁者とは

 儒家の論述に照らして、「仁者」は「敬服させる位置にいて、愛を喜捨し、進退程よく、応対程よく、物腰もよく、事を処理するのにきちんとしており、徳行が様になっており、声や雰囲気が気持ちよく、動作が穏やかで、言葉に条理がある」これらが一連の品行である。これが孔子の心の中にある封建社会の中の「上人(古代帝王)」達が備えていたいわば徳行である。明らかに車引き、酒売りの輩、田を耕し、野ら仕事の連中、及び荒っぽい虐待狂者のごときものはこれら徳行を少しも備えることが出来ないものである。
これでは私は仁者にはとてもなれそうにもない。 


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