2018年5月15日火曜日

漢字「愛」の成立ちと由来:現代中国語のアイには心がない!心のない「愛」なんて!


漢字「愛」の起源と由来
 唐漢氏の解釈は少し突飛過ぎるようには思うが。それも一つの見方として捉えておきたい。われわれの見方というのは、あくまでの現代人の概念に基づくものであるから・・。
 いずれにせよ、「愛」という字の形には、人々の心をこめた情感が覗える。

引用:「汉字密码」(P886、唐汉著,学林出版社)
「愛」の字の成り立ち」
愛は会意文字である。
 金文の愛に対しては2種類の解釈がある。ひとつの解釈は、一人の人が両手で心をささげ持つ形である。そっぽを向いているが、口では心の中を懸命に訴えている様。
 別の解釈は、犬の画の中に丸い形の心が認められる。これは犬が主人に対して喜びの情をしめしているという。

 小篆の愛の字は下部に一本の線が突出しているが、歩いてくることの意味を付け加えている。これは愛が一種の「主動」であることを表わしていいる。  小篆の字形の形態は美しいが、却って象形の趣を失っている。楷書は隷書を経て「愛」に変化した。

 漢字の簡単化の中で、心は省略されて現在に至っている。  現代中国語の「爱」はもともとの漢字の持つ意味や情感が失われてしまっている。少し皮肉っぽくいえば、現代中国の簡体字の「爱」では、「心」が失われてしまっているように思うのだが・・。愛には心が必要だ!!

「愛」の字の持つ意味
 「愛」はもともと主動で「愛慕」の気持ちを表白することから来ている。人や事物に備わる一種の情感を表わす。

  愛はまた男女の情愛または愛慕でもあり、「性愛、愛欲、歓愛」などなど。現代口語では、「愛」は「容易・平常」の意味にもなる。「鉄は容易にさびを生じ、他の家の子供は容易に病気になる」など。

「愛」を古代人たちはどう捉えていたか
 「愛」古代漢語では、よく「けち臭い、惜しがる」の意味に用いる。論語の中で、「尔爱其羊 , 我爱其礼」「羊を惜しむのはその礼を惜しむようなもの。そのなかの「愛」は惜しむことの意。哲学者の講義の中に「爱是一种自私」愛は「自分の一種」他人を愛することは自分を愛することだ。『戦国策』のなかで、父母子供を愛し、すなわち深く謀る。このことは父母は子供を愛するなら、子供ためによく計画を立て、長くためになるようにすべきだ。子供の成長の中から恩恵を預かることが出来れば、而して災難にはならない。


「字統」の解釈
 白川博士は「字統」の中で、「愛」について、「後ろを顧みて立つ人の形を表わす字形と「心」の会意文字である。
 後に心を残しながら立ち去ろうとする人の姿を写したものであろうとしている。確かにこちらの方が私たちの感覚にはよく合う。
 説文では、「恵」の古代文字を出して「恵」なりとしているということだが、これは、「愛」と同字異文であるとしている。


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2018年5月13日日曜日

甲骨文字の「犬」の成立ち。象形文字


漢字「犬」の起源と由来

「犬」は、干支の「戌」とは全く関係がない
  来年の干支は、戌年だ。ここで取り上げた「犬」は、干支の「戌」とは全く関係のない、正真正銘の動物の「犬」だ。
 今では干支の「犬」もこの動物の犬を当てるが、本来干支の字と動物の犬ではそもそも起源が全く異なる。干支の「戌」の起源は別に譲るとして、ここではしばし、動物の戌の起源と由来について、話を進める。


引用:「汉字密码」(P026、唐汉著,学林出版社)
象形文字の「犬」は、輪郭の特徴をとらえた造字法
 象形文字の「犬」は、輪郭の特徴をとらえた造字法である。

 「犬」の字は象形文字である。2500年以上も前、孔子は「犬」字を見た後、少し感心した感じで、「犬の字は『狗』の絵の様だ。」といったという。


 明らかに犬の字は牛や羊のように、若干抽象的でかつ印象的な造字方法とは異なり、比較的忠実に特徴をとらえた線で輪郭を取る象形文字の造字法である。
 この方法ではしっかりと犬の外形的特徴をつかんでいる。体は細く、長い尾は巻いている。先民が犬を縦長に立てた状態で描いている。

 「犬」は中国語の発音は、Quan(チュアン)と発音するが、これは犬の子の鳴き声の「きゃんきゃん」というところから来ている。これは犬の発音は子犬の擬声語から来ている。 この説明は跡付けのような気がする。少し出来すぎではないだろうか。

 観察上字形を考えると、我々は犬の字を横から見た風に書くのが、実際の状態により忠実に対応できるのが分かる。しかしこれは漢字を横に狭く縦に長く書くという縦書きの特徴に適応したためで、3300年以前のはるか昔から先民は字を縦長に立てた状態で描いたものだ。

 甲骨文字の犬の字は適宜変化し、今日の犬の字の楷書になっている。厳格に言えば、今日の「犬」の字は一種の文字符号であるが、それは依然として象形文字である。

「字統」(白川静、平凡社)によると

象形文字、金文では、「員鼎」に「犬を執らしむ」とあり、近出の中山王墓には金銀の首輪をはめられた2犬が埋められていた。しかし、犬は犠牲とされることが多く、器物を犠牲の地で清めて用いられたとこから、「器、就」となる。

 と説明されている。

 また日本の話ではあるが、2018年5月13日付けの毎日新聞に「縄文の犬は人間と一心同体」と題し、愛媛県の「上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡」~出土した日本最古の犬の埋葬の鑑定から、当時縄文時代(放射性炭素による年代測定で7400~7200年前(縄文時代早期末~前期初頭)と判明し、改めて最古と確認された)は犬は人間と共に狩をし、共に食事をし、大切にされ、最後は手厚く葬られたであろうと考えられている。




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2018年5月10日木曜日

漢字「首」の起源と成り立ち:首は「人の首」のという説が優勢


漢字「首」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P432、唐汉著,学林出版社)
 「首」の字の成り立ち」
 「首」は象形文字である。甲骨文字は長い髪の毛のある人の頭を表わしている。しかし醜い且つ又それほどうまく人間の頭を表わしてもいない。しかしそれは確実に生まれたての胎児の人間の頭の側面の絵である。金文は正面の形状に改まっている。ひとつの眼と高く盛り上がった頭の髪の毛を用いて人の首を表わしている。後期の金文は又眼を改めて「目」としており、これは小篆の形状の由来でもある
楷書の「首」は小篆の簡略形である。

首の本義は人の頭である。
 『诗•均风•静女』にあるごとく、「愛は而して見えず、頭を掻いて、躊躇する」の首である。 現代漢語中、まさに頭をもたげることを、首をもたげるという。頭を低くすることを、首をたれるという。後ろを向いて頭を回すことを、首を回すという。自分で出てきて、罪行を告白することを「自首」するという。首は人体の最上端にあって、胎児が出生時には真っ先に産道から出てくる。いわゆる首は重要で、開始の意味もある。


どう見ても人間の首であるようには見えない
 このように「首」の字は、人間の首であるという解釈が唐漢氏も日本でも優位であるようだが、しかし、この字の変遷を見る限りどう考えても人間の首であるようには見えない。むしろ動物の首であるという解釈がこの絵からはすっきりする。
 この人の首という解釈が、日本では行き渡っており、このことから、「漢字」は残酷なものがあるという風にいう人がいる。しかしこれは後世の人間が、付け加えた勝手な解釈であるようにしか思えないのだが・・・。

参考記事:「漢字「道」の起源と由来:甲骨文字では、十字路と脚ということから歩く道
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2018年4月26日木曜日

漢字「春」の起源と由来:太陽が当たり、草木が生え出すことを示す


漢字「春」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P285、唐汉著,学林出版社)
「春」の字の成り立ち」
 春の原本は会意文字である。甲骨文字の左辺は上下に分かれ、「木」の二つの部分である。木の中間に「日」があり、太陽が昇ることを表している。字の右辺は「屯」であり、潜り込んだ根が発芽することを表している。明らかに春の字の本来の意味は太陽の光が強くなり草木が生え出す時期を表している。
 金文と小篆の春は甲骨と比べ字形は均整化されている。上部は草冠、中間は「屯」の字で下部は「日」である。以後隷書の変化を経て今日の字体となり、「草」、「屯」の字は最早現らわれていない。

 しかし「春」は一年の開始を示し、この本義はずっと変わらずにいる。春のような景色は「春色」「春光」といい、春の農繁期は「春忙」といい、30歳になると赤い紙に吉祥の文字を対連で「春联」などなど。古代文学者は大変多くの草木の生長する様を描写して、「春に至りて江南の花自ら開す」「春の到来を人は草木に先んじて知る」「春に至れば人間万物鮮やかなり」など、これらの詩句春に万物が萌出る現象を表現している。
 

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2018年3月29日木曜日

漢字「責」の由来と成り立ち:「責」の原義は貯蓄である


漢字「責」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P790、唐汉著,学林出版社)

「責」の字の成り立ち」
 責は会意文字である。甲骨文字と金文の「責」はの構造はよく似ている。下部は両者とも「貝」であるし、上部は「刺す」の字である。原本は原本はいばらの上のとげの描写である。ここでは針で突き通すことを表している。二つの形は串を用いて貝を朋となす。そして蓄積をあらわし、儲けるの意味もある。小篆の責は金文を受け継ぎ、楷書は隷書化の過程で上部の束が変形して責になった。

「責」の原義は貯蓄である
 責の本義は蓄積である。この言葉は後に作られた積の字に受け継がれている。責すなわちその意味が拡張され、すなわち蓄積、求めてとるという意味になった。


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2018年3月22日木曜日

漢字「右」の由来と成り立ち:手と口からなる。


漢字「右」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P336、唐汉著,学林出版社)

「右」の字の成り立ち」
 完全に右手の正面の形状である。金文中の右の字は変化して、会意文字となり、右下にひとつの「口」が加わっている。これは食事をするときの手を表している。楷書の右の字は書きやすいようにと、形を整えて、鏡像反転をして、今日の右の字となっている。

「右」の持つ意味
 「右」の字の本義は右手である。説文では「右」は手と口を相互に助ける字なりとしている。右手の主な効能は食事をするとき食物をつかんで口に物を運ぶことなので、いわゆる右の字は助けるという意味も持っている。

「右」は高く、優れている
 大多数の人間に言えることだが、右手はすべからく、左手より器用に動く。これをもって古代人は「右」を巧み、高いと考えている。成語中でも、「无出其右」(その右に出るものはない)とそれより優れたものはいないという意味に用いる。
「左に出るものは居ないとは言わない。 


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2018年3月18日日曜日

漢字「笛」の由来と成り立ち


漢字「笛」の起源と由来
 「笛」は竹で作られた単管楽器である。中国の起源は非常に古く、漢代以前には笛は2種類あった。雅笛は5つ穴、羌笛は3つ穴である。
 「笛」を英語に訳すると「Whistle」となるが、これに逆に日本語にすると「呼び子」という名称がぴったりであり、時代劇に出てくる追っ手が鳴らす「ピー、ピー」という短い笛を表している。この言葉は、やはり追っ手が、加勢を呼び寄せるという感じを受ける。ところで、この呼子を中国語に直すと、「哨子」というが、この「哨」という漢字は、歩哨の哨で、むしろ警笛という感じが強くなる。但しこれは筆者の独断で、根拠はない。 

引用:「汉字密码」(P814、唐汉著,学林出版社)


 「笛」は竹と由の音声からできている。由はもともと事物の発生の原因と経過を示し、また事物の拡散と生成過程を指し示す。文字の構成は素焼きの甕の硬い外と中の中空から来ている。

古代中国の「笛」
 直接吹いて今日の萧に非常によく似ている。今日の7つ穴の笛は古代の横吹きの笛から来ている。この種の横吹きは一個の吹き穴があり、6個の指穴を持っている。また吹き穴と指穴の間にもうひとつ穴を増やして、笛幕をかぶせた竹笛にしている。説文いわく「笛、7つの穴の竹の筒である。羌笛は3孔である。

笛という器具が如何に使われたか
 笛の吹奏は穴を吹くことから初めて、音調は指穴の一つ一つつないで発出する。紛れもなく表現したあれこれの過程である。だから笛で以って自己の声符と表現である。
『羌笛何须怨杨柳 , 春风不度玉门关』(羌笛は何も楊柳を恨むことはあるまい、春風は玉門関を通り過ぎないのだから)。これは広く知られた辺境のとりでの詩で、羌笛の伸びやかで低く沈んだ描写がさびしさをよく表している。
 唐代の大詩人李白の《春夜洛城闻笛》の詩では、「谁家玉笛暗飞声 , 散入春风满洛城」の名句、笛の声の抑揚、清らかに響き渡る絵のような描写が鋭い。

 今日では笛は鋭い音を発し表現し伝えるものとして「汽笛や警笛」などのように用いられる。



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