2022年5月11日水曜日

漢字「啓」の成立ち、由来:神の言葉の祝禱の入った扉を開き、広く明らかにする


漢字・啓の由来、成立ち:神の言葉である祝禱の入った扉を開き、広く明らかにする
 启は説文は「開なり」これは開門の意味がである。大まかに出るということを示している。封筒の上に常にXX啓と書くすなわち人に開けさせるという意味である

漢字「啓」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「戸+手」で語義は、手で開くことを表わしている。
啓・楷書


  
啓・甲骨文字
開き戸の「戸」+手
啓・金文
字統では祝禱を収めたサイを手で開くことを表している漢字
啓・小篆
字形を整えた


    


「啓」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ケイ
  • 訓読み   ひら(く)

意味
     
  • ひらく、開放する、開ける、教え導く (例:啓発)   
  • 教え広げる   例:啓発
  •   
  • 貴人に申し上げること、またはその文書
  •  
  • 広がる、広げる
  •  
  • 申す、申し上げる   例:拝啓

漢字「启」を持つ熟語    啓示、啓蒙、拝啓、啓発、啓蟄

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 甲骨文の啓の字は会意文字である。右半分は戸口の戸でひとつの開き戸のことを示す。左半分は手である。人が手で開き戸を開けている様を示している。開門の意味で、金文の启 の字は左右の構造の調整をして、戸の下に一個の口を加えたのである。開門して口が開いてぽっかり開いた穴のような様子を示している。またこのことから人の口と言うこともできる。だから金文の启の字は開門の意味を除いて説話、陳述の意味を表す。金文は又は文に文に変わって支は打つの意味である。このために言葉の意味は未だ変わらず。小篆と楷書の繁体字はこの縁があって啓と書く。現代漢語で启は啓の簡体字である。


漢字「引」の漢字源の解釈
 会意文字である。「戸 +手+口」。閉じた戸を手で開くこと。また戸を開くように閉じた口を開いて陳述する意を表す


漢字「啓」の字統の解釈
 旧字は啓に作り、启と又(ゆう)に従う。启は扉の中に祝禱の器であるサイを納めている形。それを手で開けることを啓くという。
 祝禱は扉の中に秘匿して祈ることによって神の感応を求めうるものであり、神の感応もそこに啓示として示される。


まとめ
 教えることにより、無知蒙昧から、人々を明るく導くという意味



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2022年4月23日土曜日

漢字 境の意味するところは? 境界それは連続の尽きるところ、即ち連続した世界の終焉を意味する 現代は人類の境界、地球の境界


漢字・境は何を意味していた? 「全ての事の終結、終了すること」をいう
 ほんの数年前までは、『国境』という概念は厳然と峻立していた。それが今では、この概念はひところと比べれば、見る影もなく薄くなっている。その今までのある種の規制のぶち壊しの立役者は、資本の国際化だ。今風に言えば、『グローバリゼーション』である。通貨もビットコインと称して一国の通貨からネットの通貨が幅を利かし、通貨では国境という規制が際限もなく押し下げられている。

 この「消えゆく国境」の現象は、単に通貨にとどまらず、人の流れ=民族の流動化を引き起こし、経済活動の拡大は、ツンドラの凍土地帯の解凍、、アマゾンの切り開きによる密林の伐採等による気象の変動など等様々な事象がカオスの様相をきたしている。


アメリカの経営学者のピーター・ドラッカーは「断絶のの時代」という著書の中で警告をしていた。
  継続の時代の終焉——20世紀半ば、社会と文明における根源的な変化が起こりつつあった。情報化の進展、グローバル経済の出現、知識社会の到来、多元化、そして政府の無力化。本書で予期された変化は、確かに訪れた。そして今なお、余震は続いている。変化の本質を知らなければ、未来を見誤ってしまうだろう。

 ここにきて、ロシアのウクライナ侵略が起こり、世界は未曽有の混乱を引き起こしている。いま世界に起こっていることはドラッカーの予言通りであったのだろうか。少なくとも見かけ上はそう見える。一方で資本主義の終焉が叫ばれている。資本主義は肥大化し続け、グローバリズムの名の下に資本主義はあらゆる障壁を取り払いつつ拡大し、さらには資本主義の内部の境界までも取り払いつつある。人間の犯さざるべき基本的人権すらも資本の自由の名のもとに取り払われ、資本の赴く先、見境がなくなっている。

ここで取り上げた「境」はまさしく今の時代を言い表す言葉だ。
世界の境界、時代の境界、価値観の境界、そして地球の境界。
人類はどこに向かうのか

漢字「境」の楷書で、常用漢字です。
左は土で、右側の旁は「竟」です。
 「境」の原字は『竟』です。「竟」の語義は、全ての事の終結、終了することを竟といいます。
境・楷書境・楷書


  
竟・甲骨文字
下辺は人で上辺は辛で、移送される囚人の刑具である。中間の国は首に「辛」がついているという意味で、囚人になるという意味です
竟・金文
金文の竟の字は甲骨文字を承継し、上辺の「辛」が人の首の上にあることを示しています
竟・小篆
金文を受け継ぎ楷書は隷書化の過程で、変化している


    


「境」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キョウ・ケイ
  • 訓読み   さかい

意味
  • 境界、境目   例:国境、境界
  •  
  • 場合、地位   例:境遇、逆境
  •  
  • 神社などで、神の鎮座する特別な領域と意味付けて、特別な呼称で呼ぶ。境内:ケイダイと読む。

同じ部首を持つ漢字     竟、鏡、
漢字「境」を持つ熟語    境内、境界、境遇、異境


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 [竟]の本義は捕虜になった時に発せられる感嘆及び捕虜という命運で、捕虜という自由を喪失した。為に「竟」は完了、終わりの意味だ。『未竟的事业』の中の竟は完了の意味です。捕らわれたことの命運、意外なことの慨嘆。 竟は実はの意味で、他のことを言っていることではない。また拡張されて到底の意味が出る。このために竟には离境の意味がある。

漢字「竟」の漢字源の解釈
  会意文字である音+人で音楽の終わり。楽章の最後を示す。 境(端末の切れ目)などと同系


漢字「竟」の字統の解釈
 竟:音と人に従う。 説文に楽曲を盡するを竟となしとあって、終竟の意とする。竟とは祝禱の終わることその成就することを言う。それで全ての事の終結、終了することを竟といい、又これを地に施して境と言う。


まとめ
 「境」は『さかいめ、区切り』を意味するものだと思っていた。しかし、別の見方からは「物事の終わり、終焉」を意味するという。終末思想ではないが、最近の世界を見ていると、世界の終焉。終わりを示すように思えて仕方がない、



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