2021年9月14日火曜日

漢字・虐の成り立ち:虍+爪からなる。地球上で最も残虐なのは、虎ではなく私たち人間ではないか


漢字・虐の成り立ち:虍+爪からなる。虎は昔から残虐の象徴のような存在であった。虎と人とのすみわけができていれば、虎がこのような汚名を着せられることはなかったはず
 来年は寅年。虎が寅の代用をされるが、普段は悪者扱いされる虎も来年ばかりは、十二年ごとではあるが皆から愛される存在となり、ほっとしているのでは?

 私たちはいろいろな現象の原因を自分たち自身に求めないで他者の精にしてきたのかも知れません。よく考えてみるとこの地球上でもttも残虐な生き物は私たち人間ではないでしょうか。
 虎は決してホロコーストを作ったりしません。獅子はむやみに人間を襲うことはありません。虎も獅子も明日の自分自身の生活のため他のものを支配下に置いて、隷属させたりしません。
 人間だけが他者の生活を脅かし残虐ににふるまうことをしてきた生き物なのです。


漢字「虐」の楷書で、常用漢字です。
 「虐」の本義は残酷さと攻撃的な性質を示す、或いはその性質をもつもの
虐・楷書


  
虐・甲骨文字
「虐」は会意文字で、右辺は虎の形で、左辺は人の形でからなる。
虐・金文
金文中の「虐」の字は人の形が変わって虎の体と尾がすでに簡略刺され、突出して虎の頭と虎の口になっている。象形に違いが出て、かえって明確になっている。
虐・小篆
小篆の「虐」の字は十分明らかに虎の爪とつかみに行った小さな人の形である


    


「虐」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ギャク
  • 訓読み   しいたげる

意味
  • むごい(吐き気を催すほどすさまじい、悲惨・痛ましい行為である)
  •  
  • しいたげる  (痛みつける)
     「見ていられないくらいの行為をして徹底的に苦しめる」   (例:虐待、残虐)
     「人の気持ちや身体の調子を悪くするほどの荒々しさで取り扱う」
  •  
  • 残酷さと攻撃的な性質

同じ部首「虍」を持つ漢字   虍、虎、虐、彪、處、
              虚(虎とは同じ部首を持つが、成り立ちは全く異なる)
漢字「虐」を持つ熟語    残虐、虐殺、自虐、暴虐




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「虐」説文で、「虐、残なり」。甲骨文の「虐」は会意文字で、右辺は虎の形で、左辺は人の形である。虎の爪の人が嚙みつくことを意味している。
 金文中の「虐」の字は人の形が変わって虎の体と尾がすでに簡略刺され、突出して虎の頭と虎の口になっている。象形ニ違いが出て、かえって明確になっている。小篆の「虐」の字は十分明らかに虎の爪とつかみに行った小さな人の形である。

 小篆から楷書への変化は虎と反り返った爪の会意となっている。虐の字はの元は老虎が大口を開け鋭い牙の残虐な生き物で、このため「虐」の本義は残酷さと攻撃的な性質を示す。「虐杀、 虐待、虐政」と「暴虐」など。

 


漢字「虐」の字統の解釈(P169)
 虐 象形文字 トラが爪を表している形。虍+爪からなる。篆書の字型には 人をくわえているが、別の字形には下部に爪の形をくわえるものあり。


まとめ
 虎は残虐の代名詞のように言われるのは、生活圏が被さる部分があるから。虎と獅子(ライオン)では、お互いに植物連鎖の頂点に立つが、生活圏が異なるため相争うことはない。争えば間違いなく虎が勝つ?



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2021年9月8日水曜日

漢字・熊の成り立ち:能+灬(火を表します):熊の肉はよく燃えることから、熊は火の精と奉られていました


漢字「熊」の成り立ち:能+灬(火を表します):能と熊は別物ではない。熊は能であり能は熊
 昔から「能ある鷹は爪隠す」といわれていますが、熊に関して言えば、「能ある熊は能隠す」とでもいえるかもしれません。我々は、能と」熊は全く別の漢字のように感じていました。

 しかし、熊の中には「能」が隠されています。不思議なことにそれを認識することはあまりないのです。漢字というのは不思議なものできちんと認識すれば、ものは見えてくるものです。熊の中に能と火が隠され、それぞれに意味があったということを!


漢字「熊」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「能」、下部は火で四つの点で表します。
熊・楷書


  
熊・甲骨文字
象形文字そのものです。古代人が生き生きと事物を表現していたのには驚かされます
熊・金文
文字として、抽象化と形象が洗練されがかつ、使いやすい、書きやすい形になっています
熊・小篆
文字として一層抽象化が進んだのでしょうが、甲骨文字や金文に見られた、熊の形体を見出すことはできなくなっています、


    


「熊」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ユウ
  • 訓読み   くま

意味
     
  •  

漢字「熊」を持つ熟語    熊笹、熊手




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「能」は「熊」の初字である。造字の始め「能」が参照されているのは、図の示すような雰囲気の、甲骨文字の「能」の字で、まさに熊の図である。左は頭で、上は耳で下は口、大きくて太い体と足の爪、腰には小さな尻尾。
 金文の中では巨大な首と大きな口、正に典型的な熊の特徴である。小篆の形体は既に熊の様子ではなくなっている。

 楷書では小篆から変化して、熊の大きな二つの爪は能の字の右の部分は変化し、人が熊の様子を探すことはできなくなっている。能の本義は「熊」である。

 



漢字「能」の漢字源の解釈
 会意文字 「能」は ねばり強くて長く燃える獣のあぶら肉のこと。 熊は「能+火」で、肥えて脂肪の乗った熊の肉がよく燃えることを示す。熊は昔火の精であったあると考えられた。


漢字「熊」の字統の解釈
 字統839ページ
会意文字である:能と火に従う。説文に 「獣なり。豕に似て山に居し、冬は蟄す。 能に従い 炎の省声」とし、炎声の字とする。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。古代人の表現力には驚かされます。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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