2021年4月29日木曜日

漢字「菜」の成り立ちから何が見える:「菜」の原字は「采」、両者の間には決定的な生活様式の変化が!


漢字「菜」の成り立ちと由来の意味するもの:「菜」(野菜の摘み取り)の原字は「采」(果物の摘み取り)両者の間には決定的な生活様式の変化があった!(採取生活から農耕生活へ)
漢字「菜」の成り立ちから何が見える:草カンムリが付いただけではない!古代の人々の生活様式の変化を見た!文字の変化の中に採取生活から農耕生活への変化が刻み込まれている。

漢字「菜」の楷書で、常用漢字です。
この「菜」という漢字が生まれた時代はどのような時代だったのでしょうか。

 商周の時代、次第に生産力は発展し、農作物の品種も増加して、産量も高まった。五谷即ち粟、豆、黍、麦、稲の植え付けも出現した。また豆類、葱類、麻類も植え付けられた。

 奴隷制社会の国家的発展は農業を発展させ、「井田制」の共同農業で、労働生産性も高まり、灌漑・排水のシステムも整備されてきた。

このような社旗的、時代的背景の上に人々の生活が充実し、文化が芽生えていくのだろうと感じる。
菜・楷書


《説文》には草カンムリは草の食うべきものとあり、菜食を示す
つまり甲骨文字と小篆の間には、果実の採取と野菜の摘み取りという決定的な違いがある。  
采・甲骨文字
「爪」(手)+果実によって、果実を摘み取ることを示す。
「菜」・小篆
草カンムリが加えられ、採取の意味を表す字と分離した。
菜・楷書


    


「菜」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   サイ   
  • 訓読み   な

意味

  •  あおもの(青色の野菜)、野菜
     食用とする葉や茎または、根など草の総称
  • おかず  例:一汁三菜、前菜


熟語   菜種、青菜、若菜、高菜、菜園、野菜、山菜、根菜




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「菜」は「采」の声で、説文には「食べることが出来る草、古くは采で「菜」を表した。甲骨文の采の字は「爪」と果(甲骨文の果の初字の合成した会意文字である。爪は手で、手が樹果の上にあって、摘み取ることをあらわす。小篆の時期には采の上に草カンムリが追加され動詞の采と分離した。

 字の出どころは古代の蔬菜がその多くが野生の葉を摘んでいたことにある。菜は本は副食品を作ることができる植物の茎、葉、根即ち蔬菜を指す。

 

漢字「菜」の字統の解釈
 旧字は采に作り、采声。野菜をいう。


まとめ
 文字の成り立ち、変化を調べることは、単に文字学を極めることに留まらす経済発展、生活様式が面白いようにあぶりだされてくる。



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2021年4月28日水曜日

漢字「暴」の成り立ち:漢字「暴」の古代文字は、古代人が日焼けを怖れていたことを思わせる!!


漢字「暴」の成り立ち:漢字「暴」は日に曝されるという意。古代人にとっても日に曝されることは重要な関心事であったのか

 な、なんと、古代人が日焼けを怖れていた!! 本当?

このページは、2011年12月15日に掲載した記事を観点を少し変えて書き直したものです。
 「漢字:「暴」の起源と由来:光に麦の穂が晒されているのを表現したもの」


 漢字「暴」の楷書で、常用漢字です。

 暴言、暴行、暴力、暴政世の中が騒がしくなったせいか、やたらこのような言葉が飛び交うご時勢である。

 「暴」の字の本義は金文や小篆からも明らかなように、「暴力」というより、日に曝すことが原義である。日焼けするということが、いかに凄いことであることかが、字に込められている。

これからの季節太陽の光はますます強くなり、温暖化現象、オゾンホールの出現などで、太陽光・紫外線にバック蘆されることが多くなる季節に突入する。
 女性はもちろんのこと男性も、くれぐれもご注意あれ!
即・楷書




  
暴・金文
日の光が下に向かって照射している様を表している。
暴・小篆
形の変わった両手が太陽の光のもとに米を晒している様を示している
曝・楷書
後に日にさらすという意味を明らかにするため「曝」という漢字が生まれた


    


「暴」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ボウ、 バク
  • 訓読み   あば(く)、あば(れる)

意味
  • あばれる 
    強く激しく行動する(荒々しい)、優しく扱わない。 (例:子供が暴れる、乱暴)
    危険や困難を恐れず、積極的に事を行う (例:国会で大いに暴れる)
  • あばく
    土を掘って取り出す (例:墓を暴く)
    人が隠している事、気づかないでいる事を探り出して公にする(多くの人に知り渡らせる)。明らかにする
  • 程度が普通の状態を遥かに超えている(例:暴風、暴利)
  • 日にさらす。外に出しておく。(曝す)
  • 激しく虐げる(例:暴政、暴圧、暴虐)
  • 「知れる、他の人に知らせる。 例:暴露

使い方  嚗、瀑、曝、爆、襮、㬧
     爆 爆弾の爆ですが、原子爆弾を意味することも多い。
     「被爆」とは、放射能に曝されるという特別な意味を持っている。

熟語
  • 強く激しい    凶暴、乱暴、兇暴、暴漢、暴虐、暴動
  • 度を越している    暴飲、暴雨、暴挙、暴言、暴食、暴走、暴投、暴騰、暴落、暴利
  • 暴く  暴露




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「暴」この字は一種の会意文字である。金文の「暴」の上辺は日の光が下に向かって照射している様を表している。下辺は突出した麦の穂が成熟した形である。あたかも日の光が降り注ぎ、麦が熟しているときの描写である。小篆の暴の字は形の変わった両手が太陽の光のもとに米を晒している様を示し、楷書・殻隷書に変化する過程の中で、再び形が変わり暴の字となり、形は似ているが雰囲気が失われた会意文字の形になった。

 「暴」の字の本義は「晒」である。即ち太陽の光に照らされている意味である。《周礼》にあるように春に絹を晒す。ここではおよそ色を染めるには絹を晒す春の日が必要であるという意味だ。日に晒すということから引き出されてくるのは「顕露、顕示」の意味で、暴露と同じである。赤い日が空に当たり、強烈な日差しが火に似ていることから「慌ただしい、猛烈」ということが引き出され、「暴雨、暴怒、暴躁」等の言葉が出来た。また「残忍、残酷」の意味も表わされ、暴虐、暴行、暴徒等の言葉にもなった。 
 

 

漢字「暴」の字統の解釈
 会意文字である。日と獣屍の形に従う。 即ち曝死の象である。

 字形は「獣屍の上に日を加えたもので、暴露の意。 骨を曝す」というのが、字の初義である。その暴露して色が抜け、皐白となったものを皐といい、雨ざらし、日ざらしの獣皮の象形である。暴は日照りにさらされているものであるから暴疾の意となる。


まとめ
 「暴」の古代文字を見ると、この文字が実は、日に曝されることを示していたことが分かります。なぜ日に曝されるということを漢字にまで取り込まなければならなかったのかその秘密は今はまだ分かりません。ただ漢字のつくりがその事実を示していることだけは確かです。
古代は今よりずっと太陽光線はきつかったのかも知れません。事実、中国の北部(今の中原)には亜熱帯の猛獣が闊歩していたということもあったようですから、この漢字の意味することは重要な事実を物語っているのかも知れません。



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