2019年10月9日水曜日

漢字の成り立ちから見えて来るもの:熱とはあぶり焼けるように感じるのは熱という


漢字・熱 の成り立ちは現代に何と伝えるのか:トーチを持つとき感じるのは「熱」、気温の高いのを感じるのは「暑」
 古代中国でオリンピックはなかっただろうが、何かの儀式でトーチの受け渡しや神への捧げものとして、聖なる火が受け継がれただろうし、奉納もされただろう。それは古代文字・甲骨文字の中に埋め込まれていた。古代の人々はトーチに掲げる聖火から受ける熱を「熱い」と感じ、漢字「熱」の中に記録していた。

 甲骨文字では、熱の意味は一目瞭然
熱 の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 トーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。

 一方これに対し「暑」について、字統では、説文を引用し、『形声文字:声符は者(シャ)。説文に「熱きなり」とあって暑熱をいう。』としている。
熱・甲骨文字


 


引用:「汉字密码」(P451、唐汉著,学林出版社)

   「热」は「熱」の簡略化された言葉です。 甲骨文字の「熱」という言葉は、まるで人が燃盛るトーチを手に持っているよう見えます。小篆の「熱」の言葉は、火と執るの音からなり、会文字と形声文字になっています。楷書はこの関係から、「熱」と書かれており、簡略化されて「热」になっています。

 「熱」の本来の意味は、「火を持つ、トーチ」です。

 《诗•大雅•桑柔》:"谁能执热,逝不以理?"にあるように、ここでの执热の意味はトーチを手にするという意味です。手持ち型の松明は火であぶり焼けるように感じることをいいます。したがって、「熱い」はあぶり焼けるの意味です。焙煎と発熱の意味があります。

 説文はこれを解釈し熱は温なりとしています。殷商人の甲骨文字に"杞侯热,弗其祸风有病の記載の、「杞侯热」は即ち発熱を言います。即ち体温が高いことを意味し、「祸风有病」とは、即ち傷風は疾病を重くすることをいいます。この記録は、人間の風邪の最も古い記録かもしれません。


漢字源の解釈
  形声文字。園芸の古字(人が座って植物を上育てる意味)から音を借りてきて作ったのが「熱」の字で、「火が燃えて熱いこと」をいう。唐漢氏とほぼ同様の解釈を取る。



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2019年9月26日木曜日

漢字「備」の原義は、現代風に言えば「軍備」


漢字「備」の起源と由来
 最近、防災ということがよく言われます。防災の本来の意味は、「災害を防ぐこと」の意味です。しかし、最近では、意味が変化して、「災害を防ぐ」ではなく、「災害に備える」という意味に用いられることが多いようです。

 「備えあれば憂いなし」と昔から言われています。昔から備えることの大切さを説く戒めの言葉でもあります。昨今では、大事故になって原因を追究された時の逃げの言葉として、「想定外のことです」というのが流行っていますが、備えをしても、備えの想定を超えた事態の発生を言っていますが、実際には、事故のない範囲を想定したに過ぎない場合がありますから、十分な吟味が必要でしょう。

引用:「汉字密码」(P573、唐汉著,学林出版社)
 「」は「備」の簡体字です。 「備」は象形文字です。甲骨文字と金文の構造から、形状と用途から備が一種の矢立てと想像は難しくありません。「備」は矢を挿入するためのエビラです。中央に下向きに差し込んだの頭のある矢があります。「備」は、昔は日常生活で普通に使用されていたツールです。

 「小篆」の「準備」は変形されており、1つは「人」が偏に加えられており、もう1つは金文の「備」が変化して○となったことです。
 楷書の繁体字に借用された「備」はこれに基づいており、簡体字は「備」と备と変化しています。 「備」の本義は、箙に入れること



漢字「備」の起源の「漢字源」の解釈
 会意兼形声。旁は矢を射る用意として入れた矢をそろえて入れた箙をあらわすとして、唐漢氏と同様の解釈。人偏が入っているのは、主役の事故を見越して用意のために揃えておく人の意。


漢字「旅」の起源の「字統」の解釈
 象形文字。箙の形としている。外を皮で覆って背負えるようにし、中は矢立の象形文字としている。これを負うことを備えるとした。


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