2023年7月29日土曜日

漢字「冦」の意味するものは?春秋時代から繰り返されてきた蛮行(蛮冦) 私たちは歴史から何を学んだか


漢字「冦」に見る「歴史は繰り返される!」司寇、元寇、倭寇・・春秋時代から繰り返されてきた蛮行(蛮冦)

 今ウクライナで蛮行は、露冦と形容できるかもしれない。

ここで取り上げた漢字「冦」は実は春秋戦国時代には出来上がっていたようだ。

   それから実に2500年もの間、繰り返し使われ、そして、今この時点でも、立派に再現されている。ロシアのウクライナ侵攻が、まさにこの「冦」にあたる。
 2500年もの間名付けられた蛮行は、「司寇、元寇、倭寇」という名で登場し、これ以外に無数の蛮行が繰り返されてきた。そして今新たに「露冦」という名前が、歴史に刻まれたと言っていい。

 歴史に学べと言われるが、人間はこれまでの歴史から一体何を学んだのだろうか??


導入

前書き

 屋内に入り込んで人の頭を棍棒でぶん殴るという流行りの連続強盗のまんまを表している。

 この記事は2012年のもの「漢字「寇」は何を意味するか。」をバージョンアップしたものであるが、前載「倭寇と日本人のDNA:司馬遼太郎氏の深い洞察に学ぶ」をさらに、人間の業というべきものに迫りたい。

目次




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漢字「冦」の今

漢字「冦」の解体新書


「寇」の漢字の構成

 「冦」は人の住む家を示す「完」+小枝を手にもって殴る様を示す漢字「攴」の会意文字である。攴は古くからある字で、人々が人や動物に対して早くから殴りつけてつけていたことを示す。一方家の方は、屋根が明確に示されていることから、住環境がある程度整ってから出来た漢字と思われる。
冦・楷書
家の中の人を、こん棒で攻撃することを示す
完・金文
家の中に人が居る有様
攴(ボク)・甲骨
こん棒で攻撃することを示す


 

「冦」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   あだする・せめいる・かたき

意味
  • 暴行を加える
  •  
  • 略奪する
  •  
  • 主に身内以外の者に対する暴行をいう

同じ部首を持つ漢字     攴、攻、放、牧、敵
漢字「冦」を持つ熟語    冦、元寇、倭寇


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漢字「冦」成立ちと由来

「寇」の漢字の由来については、古代の中国の歴史的背景に関連しているとされています。
 以下の説があります。

  1. 説1: 侵略者や略奪者を指す説
    「寇」は、古代中国において侵略者や略奪者を指す言葉として使用されたという説があります。古代中国では、他国や他地域から侵略されることが多く、そのような侵略者や略奪者を「寇」と呼んでいたとされています。
  2. 説2: 略奪や侵略を意味する説
    「寇」は、略奪や侵略を意味する漢字であるという説もあります。古代中国では、戦乱や略奪が多く、略奪や侵略を表現する漢字として「寇」が使われたとされています。
  3. 説3: 神秘的な敵を意味する説
     また、「寇」は神秘的な敵を指す語としても使用されたという説もあります。古代中国では、異民族や外敵を神秘的な存在として捉えることがあったため、そのような敵を指して「寇」という漢字が用いられたとされています。

  4. 以上のように、諸説あるため確定的な由来を特定することは難しいですが、これらの説を参考にすることで、「寇」の漢字が持つイメージや意味を理解することができます。


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
「寇」は建屋の中で行われる暴行を表す

唐漢氏の解釈

 「寇」は会意文字である。甲骨文字の寇の字は上部は建屋を表す。屋内の右には一つの棍棒を持った手、まるで左の人をまさに殴っているようである。しかし、ここでのウ冠は、屋内というより、「内部」という意味合いが強いのかも知れない。つまり内側に入り込んでくるという感覚なのか。


漢字「冦」の字統P305の解釈

 冦: あだする・せめいる・かたき
 会意 完と支とに従う。 冦は廟中に人のある形。元は結髪している人で、元服の式を冠という。
 寇は虜囚として廟中に連行されたもの。これを祖霊の前で殴つのは、外賊に対する呪的な意味をもつ行為であろう。〔説文〕 に「暴なり」と訓するも、ただの暴力行為ではない。[慧琳音義」などに引く〔説文〕に、「その完聚するに當りてこれを寇つ」 とするが、この字形中の完は、首を全うして虜囚となったものをいう。
 武力 による寇略のみでなく、財物を掠取することをも寇といい、農作物を掠取したことをいう。
 〔左伝] 文七 年 「凡そ兵、内に作るを亂と爲し、外におけるを寇 と爲す」というように、外寇を意味する字である。




漢字「冦」の漢字源の解釈

 会意。「完(周囲を完全にとり巻いた家)+(こわ す)」で、防ぎを破って家をこわすことを示す。



漢字「冦」の変遷の史観

文字学上の解釈

「寇」の漢字の発展

 この種の屋内での凶行は却って略奪の行為を「寇」とするのに適している。小篆の「寇」の字は将に屋内の左に立つ人が変化して「元」の字なっている。「元」は古文字では、頭を突出した人の形で、棍棒を用いて頭部を攻撃して、残虐に殺す意思を含んでいる。楷書は小篆からきて、一脈引き継いでおり、形も似ている。


「寇」の使われ方

 「寇」の本義は屋内の暴行、即ち盗賊や匪族の意味である。盗賊ないし侵入者はこの為「寇」または侵犯の意思を含んでいる。杜甫の詩「復愁」の如く、その中に「万国なお防寇あり」、この寇は侵入者を指す。明代に将に侵入してきた日本の浪人たちは倭寇とよぶ。抗日戦争当時、中国人民は将に日本の侵略者を「日寇」と称した。全て侵略者の意味である。
冠と寇し、その中の寸は手であり、その手で持って、帽子をかぶるのを冠という。冠と寇は意味と音は全く異なるのだ。つまり一方は冠で、もう一方は侵略者だ。


引用:司馬遼太郎「日本人と日本文化」

  対談本「日本人と日本文化」の中で、司馬さんは室町中期から秀吉の辺りまで倭寇が活躍?していたことについて触れ面白いことを言っている。少し長いが引用する。

倭寇と日本人のDNA

   彼らは世界の中の日本の位置づけを知らないので、ただ荒らしまわるだけで自らビジネスに出来ない。大体が情報を握っている中国人の手下で働き、いわば暴力労働者の様な形になっていたという。
 五島列島の倭寇は中国の杭州湾口にある船山列島を明軍と戦い占領したことがあった。
 占領したら自分のものにしたらいいのだけれど、彼らは3カ月程すると故里が恋しくなって日本に帰っていくことを繰り返していたらしい。土地の人々も、倭寇が来てもほったらかしにしておればいいといわば泰然と構えている。「いずれ彼らは帰って行くんだ」と。
  倭寇には土地を占領してそこを治める政治力が育たない。

  これとある意味全く同じようなことが、太平洋戦争でもあったと司馬さんは言っている。
 当時海軍にいた司馬さんの遠い親戚の人から聞いた話として、「当時の海軍には真珠湾を攻撃することはできるが、しかし攻撃した後どうするかという戦略がなかった。それは海軍に留まらず日本国全体が持っていなかった。」
   彼はアメリカは非常に強い。どうせ負けるのであれば、「倭寇で行きましょう」と進言したということである。つまりどういうことかというと「真珠湾を攻撃し、そしてアメリカ沿岸を空襲して帰ってくればいい。ただそれだけのことです。」

 明治の戦争以外は日本人には倭寇の時と同じで、欲望表現としての戦争があっただけで、戦後の処理をどうするかという戦略も持たずに突入していった。当たり前のことではあるが、倭寇のDNAと日本の主導者のDNAは同じであり、まったく同じ過ちを繰り返していると司馬さんは分析している。
   これを読んで、目からうろこが落ちるという印象を否めなかった。これは、ある意味今でも脈々と受け継がれている。
原子力発電でもそうだし、沖縄復帰の問題でもそうではないだろうか。どんと花火を打ち上げ、世間の注目を集め、選挙に勝つなりしたらもうそれで全てよしとしているきらいが窺えないだろうか。


まとめ

  漢字「冦」に限らず、人間は様々な蛮行を繰り返し、地球を破壊してきた。最近私たちの身上に起こっている出来事は、地球はもう取り返しのつかないところまで破壊されているのではないかと思わせる。地球が出来て45億年、基本的に何もなしに生きてきた、人類が誕生するまでは。しかも地球が死の淵に追いやられたのは、この地球の長い歴史の中で、ごくごく最近のわずか50年のことではないか。もう遅いのかも知れない。しかし、それでも最後のあがきを人類に求めたい!
  


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