今では死語となってしまったが、「宿場、宿六」などという言葉はなんとなく、鄙びた語感を持っている。今も宿屋と言えば基本的には、日本風の宿泊施設のことを言い、ここでは「女将」という主人がいるのが一般的である。あまり宿の亭主に男が出てくることはない。これは接待される方にとって、男の「主人」ではなんとなく、気づまりなところがある。
引用 「汉字密码」(P723, 唐汉,学林出版社)
「宿」は会意文字である。甲骨文字の「宿」の字は外は家屋のデッサンである。家屋の中の右には蓆があり、蓆の上で仰向きに横になっている。金文の構造は甲骨文字と同じであるが、蓆の形が三角形に変わっていて、人と蓆の位置が入れ替わっている。小篆の「宿」は変化していく中で、蓆は「百」の字に変わって、楷書では「宿」となった。
「宿」の本義は、住む宿のこと。《苟子・儒效》の様に、宿と百泉に暮らす。現代漢語では「宿営、風餐露宿」等の言葉もある。 名詞に変わって住む場所を表すようになった。《周礼・地官・遗人》の如く「十里行くと飲食できるところがあり、30里行くと食事のできる宿がある。又転じて夜を指すようにもなった。 贾思艇の《齐民要术・水稻》の様に「種を洗い、三宿漬けておく。」ここでは「稲は洗った後三夜漬けておく」と言っている。又さらに拡張され、隔夜、隔年のようにも使われる。さらに古いの意味で「宿麦、宿願、宿志」の様にも使う。
また年長を讃えて、経験者の様にも使う。「宿将、宿者」の如く、宿将は経験豊かな老将の意味である。「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。